いざ、伊豆半島旅行へ! 前編
-5/3 武蔵新城駅-
「さぁて伊豆半島に行きますよぉ~」
「楽しみね!」
会社から新人教育の御礼に伊豆半島の旅行チケットを貰ったゆいちゃんに加えてお目付け役で晞咲さんが同行することになった。
「南部線で河崎駅まで行ってそこから特急の囮子号で修繕地まで出ましてそこからバスツアーになるようですよ。 早速行きましょう!」
-30分後-
『まもなく、1番線に、特急囮子15号、椅子急志茂田行き、修繕地行きがまいります』
「特急でだいたい1時間半程度のようですね。 ゆっくり出来るので駅弁とコーヒーを持ち込みましょう」
「あら、ドリップ器具とコーヒー豆持参じゃないのね?」
「荷物になるので今回はそこのオールドデイズのマシンコーヒーです。 期間限定のコスタリカ結構おすすめですよ」
「そうなの、じゃあ買ってこようかしら」
「もう電車来るので早くした方が良いですよ」
普段乗る電車と違い、白とターコイズブルーが交差するツートンカラーの立派な車体が勢いよくやって来た。
プシュー
「晞咲さん停車時間そんなに長くないのですぐドア閉まっちゃいますよ」
「わかってるわよ、大丈夫大丈夫。」
♪♬♬♬♪♬♪♪♪♬♬♪♪♬♬♪♬
『1番線、ドアが閉まります』
「キャーっ、待った待った!」
タタタタタ
プシュー
「ほら言わんこっちゃない。 全く、何やっているのですか」
「ふぅ危なかったわ。 さて席に、きゃっ!?」
「今度は何ですか?」
「痛ぁ、えっ、何? あっ、髪がドアに挟まれたわ」
「もう、ちょっと席に荷物置いてきますので待っていてください」
晞咲さんの手荷物も取り上げて颯爽と席へ駆けていくゆいちゃん。
やってしまったと後悔の念に襲われる中、何とか髪の毛を抜くために手をまさぐろうとする晞咲さんだが……
「くっ、振り向けない…… どこら辺で引っ掛かっているのかもわからないわ……」
そうこうしているうちにゆいちゃんが救援で戻って来た。
「さぁさぁドジっ子の救済タイムですよぉ~ 待っていてくださいね!」
「何で嬉しそうなのよ……」
「何か言いましたか!!? 次の駅でドアが開くまで待っても良いのですよ~? でも次の縦浜とその次の小船は反対側のドアが開くらしいのでこっちのドアは50分後のオタ原まで待つ必要があるようですけどねぇ!?」
「くっ、こんな序盤で何たる失態……」
「それではドアの隙間から抜いて行きますよぉ! 動かないでくださいね!!」
ギュッー
「痛たたた、もうこの上なく想像通りだけどもっと優しくやりなさい!」
スルスルスル
「はい、取れましたよ。 さて、さっさと席に行きますよ!」
「はぁ、全くもう……」
出だしにいきなり下手をこいてしまった晞咲さん、ゆいちゃんに好きにやられるのはやはり悔しいようで苦虫を嚙み潰したような様子を見せていた。
「というわけで先程荷物を置いた時に私の物を窓際に置いたので私が窓際です!」
「それ位もう良いわよ…… でもお仕事は窓際にならないように頑張りなさいよ」
「やかましいですよ!」
グオォォォォォォォォォン
-60分後-
電車は颯爽と湘南エリアを駆け抜けてあっという間に神奈川県と静岡県の境目付近になる山岳地帯に入っていた。
『まもなく、湯瓦です』
「見てくださいよ晞咲さん! 辺り一面海が広がっていて絶景ですよ!」
「うわぁ、凄いわね! 川崎と同じ神奈川なのにこんな絶景ポイントがあったのね」
「普段こちらの方にはまず以て用事がないですからね」
車窓から一面に広がる大海原を前に興奮する二人。
線路が高所に敷かれていることもあり見下ろす形で海面を見ることができとても雄大な景色が広がっていた。
「もうすぐ綿海ですね。 綿海からは1時間ちょっとで終点のはずですよ」
「そうなの。 じゃあこの綺麗な景色を眺めながらさっき買った駅弁でも食べましょうか」
ガサゴソガサゴソ
【ザキ陽軒シュウマイ弁当】
「何か、地元の駅弁だと旅行感が薄まるわね……」
「まぁ仕方ないじゃないですかそれは」
-50分後-
『まもなく、伊豆中岡です』
「あともう少しってところかしら?」
「みたいですね。 そろそろ降りる準備もしておきましょうか」
『お客様にご案内します。 この先の区間の線路にて鹿が大量発生しているため当駅で運転を見合わせます』
「何よ鹿の大量発生って……」
「伊豆半島にも鹿っているものなのですね」
「この後バスツアーなんでしょ、時間大丈夫なの? 置いて行かれない?」
「この特急電車とセットのバスツアーなのでそこは大丈夫かと」
-2時間後-
『この先の区間で相変わらず鹿の大群が暴れているため当面の間運転を見合わせ、この電車は当駅で運転を打ち切ります』
「どひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ちょっと! 2時間待たされてこれは流石にまずくない!?」
「確かにこれは…… 一応バスツアーの問い合わせセンターに電話してみましょう。 もしもし?」
……
「どうだったの?」
「何でもこれからツアーバスを今止まっている駅まで向かわせるとのことで2時間程待っていて欲しいとのことです。 メールでも案内をくれるそうです」
「更に2時間足止め!? ツアーの行程殆ど潰れるんじゃないの……」
「とりあえず電車から降りましょう……」
ツアーバスに乗れないということはないものの、乗車できるのにまた2時間待たされるとのことで、時間を潰さないといけなくなってしまった。
-伊豆中岡駅-
「うわっ、駅の壁に人気アニメの『ラブラブ!シャイニング』のラッピングがされています!」
「凄いわね、バス停やタクシー、バスにもラッピングされているしスタンディパネルもあるわよ」
駅の改札から出た二人を待ち受けていたのは人気アニメの装飾やラッピングされた乗り物であった。
駅の巨大な壁を丸々装飾しており、存在をこの上ない位に存在をアピールしていた。
「あぁ、里の湯があった日々を思い出します…… 私も武蔵新城の駅や市営バスにこんな感じで担ぎ上げられていましたね」
「だいぶ記憶が改竄されているわね。 大丈夫?」
ありもしない懐かしい日々を思い出し惚れ惚れとしていたのだが……
グゥゥゥゥゥ
「お腹空きましたね」
「駅弁食べたのもう3時間以上前だしね。 どこか店に入らない? どうせバスもまだ来ないんでしょ?」
「そうですね。 ちょっとそこら辺を探しましょうか」
-15分後-
「ちょっと! ろくに店も無ければあっても休業でやってないじゃない!」
「コンビニ位しか無さそうですね…… イートインで我慢しますか……?」
「嫌よせっかくの旅行でそんなの、ちょっとスマホで探すわ」
シュッシュッシュッ
「ここら辺だと恐らく海鮮系のお食事が名物ですかね?」
「一軒あったわ! ここから歩いて10分弱の所よ!」
「ほう! 何のお店ですか!?」
「中華冨野って店。 まぁ名前の通り中華でしょうね」
「…… 海鮮系の店は無いのですか?」
「ここ以外の店はどこも今日は休業のようね」
「えー……」
「仕方ないからここに行きましょう。 コンビニよりマシでしょ?」
「まぁそうですね……」
というわけで渋々唯一営業していた中華料理の店に向かうのであった。
旅行初日から散々な目に遭う二人、果たしてこの先はどうなってしまうのか。
To Be Continued...
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