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スコール

 「晞咲さん、暑くて死にます、何ですかこれ!?」


 「し、知らなわいよ…… でも何か昨年よりまずい気がするのは確かね」


 今日も今日とて外回りをしているゆいちゃんと晞咲さん。


 しかしこの酷暑の中外を歩くことに身の危険を感じていた。


 「近くに休めそうなお店もありませんしヤバいですって……」


 「サ店は…… サ店は無いのかしら……」


 「アイス食べたいですね…… そういえば会社に置いてあったチロチロチョコ熱で溶けていて驚きましたよ……」


 辺りを見回すも飲食店は多くあるが中華料理店や居酒屋ばかりで一休みするようなお店は無かった。


 直射日光に晒されながらも頑張って歩いて行く。


 「!? あれは」


 「どうしましたか晞咲さん」


 「あの家電量販店の入り口に日傘の販売ブースがあるわ。 ちょっと見ましょう」


 「へぇ日傘ですか。 確かにさしている人増えましたものね」


 【ビッグカメラ日傘セール】


 「色々ありますけどそこそこいいお値段しますね、安くても三千円位からでしょうか」


 「まぁ今の時期普段使いする物だからあんまり安物過ぎるのも困るしこんなもんじゃないの?」


 「確かに。 上に何か説明書きがありますね。 

えぇと、白系の生地は光を反射して黒系の生地は光を吸収するってありますね」


 「へぇそんな違いがあるのね」


 「内側は黒系の生地が良いそうですよ。 地面からの照り返しを吸収してくれるようです」


 「照り返し…… 全く考えたことがなかったわ」


 「日傘も色々と考えられているのですね」


 日傘には他にも熱や紫外線から身体を守ってくれる役割を果たしてくれます。


今のご時世、猛暑の日はあった方が絶対に良いアイテムになります。


 「せっかくでも無いけど買っていくわ。 流石にまずいわよこの気候は」


 「そうですね、私も買いたいです」


 救世主と言わんばかりの特設コーナーの登場により二人とも日傘を買うようであった。


 「ずいぶんカラフルな傘ね。 それだけ目立つなら盗られることも無いんじゃないの」


 「ちょっとやめてください、買った早々に縁起でもない! そういう晞咲さんはずいぶんと地味な傘ですね」


 「地味って何よ、自然な緑色で清涼感あるでしょ」


 「清涼感というかモスグリーン過ぎて迷彩効果狙えるような感じですよ」


 「何よそれ!?」


 ゆいちゃんが淡い水色とピンクをベースとしたカラフルな傘、晞咲さんは控えめな緑色のやや大きめの傘を買ったようだった。


 「それにしても晞咲さんの傘ずいぶんごついですね。 持ち運ぶのちょっと大変じゃないですか?」


 「そういうあなたのはやたら軽そうというかかなり小ぶりな傘ね」


 見た目も傘の大きさもそれぞれ正反対な傘を購入していた。


 パカ


 「まぁ熱風が凄いので快適というわけではありませんが、あるのとないのでは絶対にあった方が良いですねこれ」


 「そうね、100のヤバさが65くらいまでに軽減された感じがするわ」


 劇的な効果は感じないまでも、無いよりは良いという感想である。


 「いやぁこんなこと言ってしまってはあれですが、日傘はおばあちゃんとかが使うイメージでまだ20代なのに使うことになるとは思いもしませんでしたよ」


 「そうね、そもそもほんの2、3年前でもここまでではなかった気がするわ。 流石に異常過ぎない? 毎日のように夕方にスコール来るし東南アジアみたいよ」


 ゴゴゴゴ


 そんなことを言った矢先に急に冷えた風と黒い雲が上空にこみあげてきた。


 「うわ、風急に冷たくなりましたね…… でも身体は暑いというか熱が全然放出されていませんね」


 「はぁ、また一雨来るわねこれ」


 ポツポツ


 もうここ最近の天候の流れがすっかり定着しており、予想そのままに雨が降り始めた。


 「まぁスコールには残念ですがこの傘は撥水加工もされているのでこのままでも問題ないのですよ!」


 「あらあなたのも雨行けるのね。そんな小型なのに意外ね」


 「晞咲さんのはでかめでごついのでまぁ見るからに雨も大丈夫という感じですね」


 先程買った傘は撥水加工もされているようで雨天でも問題なく使えていた。


 「いやぁこれは便利ですね、とりあえずさしておけばOKというのも楽ですね」


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


 雨音が激しくなり水滴もかなり大粒に変化してきた。


 「ちょっとぉ!? スコールさんもう諦めたら如何ですか!? そんなことしても無駄ですよ!?」


 「傘大丈夫なの? 流石にこの雨は洒落にならないわ、そこのビルに入りましょ」


 ザザザザザザー


 「何ですかあの雨は!? 毎日毎日性懲りもなく!」


 「雨にキレてどうするの…… それにしてもまたとんでもない降水ね」


 雨の勢いは激しく当分の間は止まないような気配。


 身動きが取れない状態になってしまった。


 「ヤホー天気によると40分でピークは過ぎるけど当分は降り続けるようね」


 「40分!? 流石にそこまで待てませんよ!」


 「そうね、ちょっと収まり気味になったら急いで地下鉄の駅まで向かいましょ」


 -50分後-


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴザザザザザザー


 「40分どころか50分経ちましたよ」


 「ホントッ何なのこのク○雨!? 毎日毎日いい気にザーザーザーザーと!」


 「晞咲さんも雨にキレてるじゃないですかぁ。 はぁ、困りましたね」


 どうやら予報とは裏腹に全く止む気配がないようだ。


 とはいえ1時間近くも小さいビルの入り口に佇んでいるのも疲労が溜まるばかり。


 「まぁもう我慢比べしても仕方が無いので濡れるのは承知で駅まで行きましょう」


 「そうね……」


 びちゃびちゃ


 「もう嫌だぁ、何でこんなんになるの」


 「うわ、一瞬で膝裏がべちょべちょに!」


 -地下鉄駅-


 「……」


 「……」


 「晞咲さん」


 「何よ」


 「この近くにこの間上司さんから聞いた銭湯があるようです」


 「ほう」


 「私たちは銭湯のアピールをする立場でもあったと思いますが最近全然出来ていないと思うのです」


 「そうね」


 「そして全身ずぶ濡れ、このままだと風邪をひく可能性もあります」


 「その通りよ」


 「まだ勤務時間中ですが銭湯に行くのも立派な業務だと思います」


 「何も間違っていないわ」


 「それでは銭湯に突撃します!」


 「そうね、お風呂でゆっくりくつろ、レポートをしに行くわよ!」


 こうして珍しく意気投合して半ばヤケクソに銭湯に行ってこの日の業務を終えさせたゆいちゃんと晞咲さんであった。

X(旧Twitter):https://twitter.com/satono_yu


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