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12/22

GWの北海道で野球観戦!

 -4月末-


 「晞咲さん、ゆいちゃん」


 「どうしましたか課長」


 「はいはい、何でしょうか!」


 急に課長に呼び出された晞咲さんとゆいちゃん。


 課長の手には二枚の細長い紙券が握られていた。


 「取引先から野球の試合のチケットを貰ってね。 今度のGW中なんだけど課内に行ける人がいないから良かったらどうかなぁと思って」


 どうやら野球の試合のチケットが余っているようだった。


 「野球はよくわからなくて……」


 晞咲さんはそこまで野球に詳しくなかった。


 「ちなみにどこのチームと球場ですかね?」


 ゆいちゃんが気になって尋ねてみる。


 「ポンポンハムハムターバンズの試合だよ。 球場は昨年できたばかりのデスコンフィールド」


 「えっ!? 北海道ですか!? それは流石に……」


 「是非ともと言いたいところですがこうも急にだと即決が難しいですね。 まして野球がわからない晞咲さんだと……」


 晞咲さんもゆいちゃんも反応がイマイチだった。


 「まぁいきなり北海道の野球の試合とか言われてもやっぱそうなるよね。 しかも相手は千葉テッロだし」


 「テッロ、テッロですか! デスコンフィールドも凄く評判良いみたいなので一度行ってみたかったですし是非頂戴します!!」


 そう、ゆいちゃんは千葉テッロリマーンズのファンで試合がテレビで放送される時は必ず視聴し、年に数回本拠地球場がある千葉県の熊張に出向く位のファンである。


 「あらあなたテッロというだけで北海道まで出向く即決が出来るのね。 連休中だから飛行機の券とか高いわよ」


 「大丈夫、一応航空券と宿泊券セットだからそこら辺は心配無用だよ」


 「えっ、宿泊券まであるんですか!? それなら私もちょっと北海道旅行に行ってみたいかも……」


 「じゃあ晞咲さんとゆいちゃんにあげるね」


 「ありがとうございます課長」


 「わーい! ありがとうございます!」


 なかなかおいしい条件だったので掌を返し、かくして連休に晞咲さんとゆいちゃんで北海道野球観戦旅行に出向くことになった。


 -連休初日・羽田空港-


 『JANA、3104便、新千歳空港行、搭乗手続きを開始します』


 「それでは行きましょうか晞咲さん! いやぁ久々の北海道なので楽しみです!」


 「あらあなた北海道行ったことがあったの?」


 「はい、数年前に行ったことがありまして、初の関東より北側への上陸でした」


 「そうだったの。 じゃあ今回は色々案内してもらおうかしら」


 「お任せください! 試合後にとっておきのお店に案内しますよ!」


 -一時間半後-


 「着きました! 久々の北海道です!」


 「あっという間ね…… 飛行機は修学旅行以来だったけどちょっと寛ぐ程度で終わっちゃったわ」


 羽田から北海道の各空港まではだいたい一時間半程度で到着することが殆どだ。


 意外と早く到着するので久々の飛行機を満喫したかった晞咲さんが呆気に取られていた。


 「それで、ここからどうするの?」


 「電車に乗って早速デスコンフィールドに向かいましょう! 野球の試合が無くても観光地として楽しめるようですし早めに乗り込んでしまいます!」


 「空港から最寄り駅の北広鳥駅まで20分位なのね、まぁまぁ便利じゃないの」


 -更に一時間後-


 「ちょっと! まだ歩くの!?」


 「そうみたいですね…… 駅から想像以上に離れていますね……」


 「シャトルバス乗れば良かったぁ~~~」


 「だって次のバス一時間後だったじゃないですか……」


 最寄り駅に着いた2人はそこから球場までのシャトルバスに乗ろうとしたようだが、次のバスまでだいぶ時間があったので結局歩くことにしたのだった。


 「熊張のSOSOマリン位の徒歩かと思っていましたが全然違いますね……」


 しかし球場まで思いの他距離があったようで三十分程歩いてようやく球場が見えてきたようだった。


 「晞咲さん、球場が見えてきましたよ! あともう少しです!」


 「何かもう野球は良いから休ませて欲しいわ……」


 そんなこんなでようやくのことデスコンフィールドに着いたのであった。


 「これがデスコンフィールド! いやぁ他の球場と違い全体が四角いですね! 何よりガラス張りで異色感が凄いです!」


 「疲れた……」


 「ここまで歩かされるとは思ってもいませんでした。 試合までまだ二時間はありますからお昼にしましょうか」


 「そうね、せっかくの北海道だし何か美味しい物が食べたいわね」


 早速デスコンフィールド内に足を踏み入れるのであったのだが……


 -デスコンフィールド内-


 「ちょっと! 人混みが凄いのとどこの店も大行列よ!?」


 「うわぁ……」


 食事をしようにも人で溢れかえっており更に時間を要しそうな状況。


 「まぁ今日土曜日、しかも連休初日ですからね…… そりゃあ人がいっぱい来ますよね……」


 「ちょっと野球観戦ってこんなに難易度高いの!?」


 「まだ球場が出来て2年目ですから目新しくて他の球場よりいっぱい人がいるのかと思いますよ……」


 飲食店街はどこも人がすし詰め状態で並ぶのにも一苦労という様相であった。


 「手分けして食べ物を買って席で食べましょう。 晞咲さん大丈夫ですか?」


 「えぇ…… とりあえずもう並べそうなところに並んで何かしら買ってくるわ」


 -更に三十分後-


 それぞれ食べ物を購入した二人はそれぞれの観客席で落ち合った。


 「とてつもない労力を使った気がするわ。 試合始まる前からもうクタクタよ……」


 「私もここまで凄いのは初めてですね。 普段行く球場は空いているとまでは行かなくてもここまで溢れかえっていることも無いので。 それで晞咲さんは何を買ってきたのですか?」


 「とりあえず北海道ということでお寿司を買って来たわ。 お値段もかなり良い価格ね」


 「嘘、これで6千円ですか!? 銀座ですかここ!?」


 「まぁでも北海道だし美味しいっちゃ美味しいんじゃないの。 あなたは何買ってきてくれたの?」


 「台湾料理屋で魯肉飯(ルーローハン)とチーズ小籠包(しょうろんぽう)を買ってきました。 これだけあればもう十分どころか食べ過ぎですね」


 「あなたダイエット中でしょ? 良いの?」


 「せっかくの北海道旅行ですからノーカウントです! ノーカン!」


 「またそれ……」


 「とりあえず食べましょう! いただきます!」


 「いただきまーす」


 パクパク


 「うぉ! 美味しいです!」


 「あら、本当に美味しいわね。 流石北海道なだけあるわね」


 球場でのお食事はそこそこお値段が張るようであったが、その分味も見合っていたようだ。


 ……


 「ふぅ、ご馳走さまでした! いやぁ美味しかったですねぇ! 食べ応え抜群でした!!」


 「本当ね、とても良かったわ! お値段以外は文句なしね」


 「まぁ…… 野球場の飲食物のお値段についてはこんなもの…… ではないですね、他はもうちょっとだけ安いですよ晞咲さん」


 「それにしても周りの席もだいぶ人で埋まって来たわね。 試合開始って何時からだったかしら?」


 「もうあと15分程ですよ。 あっ、両チームの監督が出てきてスタメン表交換しますね」


 「スタメン表?」


 「要は試合の最初から出てくる選手のリストですよ。 開始直前にああやって審判を挟んで交換します」


 「それ何か意味あるの? あそこの巨大モニターにでかでか表示してるのに」


 「まぁその…… きっと間違いが無いか最終確認を兼ねているのでしょう! ほら、昔晞咲さんも経理の頃書類不備が当たり前だったじゃないですか!」


 「やかましいわよ!」


 「見てください、有名なジョーシン監督ですよ! よくテレビで見かける」


 「名前だけは何となく知ってるけどやっぱ凄い人なの?」


 「昔猛虎ティガースで活躍した後アメリカのメジャーリーグに行き、その後ポンポンハムハムに入団して活躍していた人です。 あまり人気が無かったバリーグを盛り上げてくれた第一人者ですよ」


 「へぇそうなの。 猛虎ティガースって確か私がこの間あなたのお友達に勧められて入った保険の対象のチームよね?」


 「あぁそういえばそんな保険入りましたね、そうですよ」


 -六回裏終了時-


 「いやぁあっという間に七回まで来ましたね! スコアは24-16でテッロが有利です! わざわざ北海道まで観に来た甲斐がありました!」


 「野球ってこんなに点が入るスポーツなのね、バスケやテニス程ではないけどサッカーよりかはかなり点数があるのね」


 「いや今日のこれはかなり特殊なゲームです。 どのチームも普段は5点も取れたらもうかなり好調という感じですよ」


 試合内容はとてつもない乱打戦で両チームとも初回からヒットやホームランの嵐で見ていて飽きないようなゲームだった。


 「もう四時間位経っているけどまだ続くの?」


 「九回で終わりですかそれぞれまだ3回イニングが残っていますね」


 「流石に観ているだけとは言えこれも疲れてくるわよ……」


 「まぁ今日の試合は半世紀に1回あったら奇跡というレベルの内容ですからね! ある意味ラッキーですよ……」


 「うへぇ……」


 『千葉テッロリマーンズ、ラッキーセブンの攻撃です』


  ~♪♬♪♫♪♬♪♫♪♬♪♫~


 「何か流れ出したわよ」


 「テッロの球団歌です! ラッキーセブンの球団歌演奏中はタオルをヒラヒラさせますよ~」


 タオルには【Oh Yeah! 太谷 圭 59】とデカデカ載っていた。


 「よく見たらあなたいつの間にか黒い服装になっているわね……」


 「今更ですか、試合開始前から着ていましたよこのレプリカユニフォーム」


 「59、HUTOYA? タオルと同じ太谷って人のユニフォームね。 今日は出ていない気がするけどこの後出そうなの?」


 「いえ、この人は4年前に戦力外になって今は独立リーグというセミプロみたいなチームでコーチをしています」


 「なによそれ!」


 「オォーイエーイ♪ ふとやけぇぇぇぇい♫」


 「球団歌流れてるのに違う歌重ねないで貰えるかしら……」


 ♪ウィーライクライクライク―ライクリマーンズ♫


 -試合終了-


 「あれから更に一時間半…… ちょっと、昼に始まったのにもう外真っ暗じゃないの……」


 「いやぁスコア38-23なんて初めて見ましたよ…… 多分史上初の記録ですよこれ」


 結局試合は過去類を見ないレベルの時間が掛かり、辺り一同の観客は皆ゲンナリしている様子であった。


 「もう8時ね、このままホテルに向かいましょうか」


 「そうですね。 流石に私も疲れました。 ホテルは確か座ッ幌でしたよね、電車で40分位で着くはずです……」


 「40分!? えっ、ちょっとそんなに掛かるの!? ここ座ッ幌の隣の地区でしょ!?」


 「北海道は広いですからね」


 「もう、早く電車乗らないと…… 晩御飯もお預けね」


 ただ座って試合を観戦していただけでもかなり疲労困憊になってしまった。


 よれよれしながら球場を出るとそこには驚愕の光景が待ち受けていた。


 『駅までのシャトルバス、最後尾はこちらです! 現在二時間待ちでーす』


 「どひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 「ねぇ…… どうすんのこれ」


 球場を出た2人を待ち構えていたのは駅までのシャトルバスを待つ大行列。


 絶望が2人を飲み込む。


 「歩くしかありませんね」


 「残念だけどそのようね」


 試合中はずっと座っていたので身体が動かないわけではないのだが、精神的にはかなり参っており長時間待つのも歩くのも億劫な様子である。


 「あっ、そういえば来るときにとっておきのお店がありました。 そこで晩御飯にありつけるはずです! まずはそこを目指しましょう」


 「えっ!? そんなお店あったの? じゃぁそこに行きましょう!」


 ゆいちゃんがふと来るときに見つけたとっておきのお店を思い出したようで、最後の希望と言わんばかりに力が溢れていた。


 -15分後-


 「晞咲さん着きました! ここですっ!」


 「セコイーマート…… ってご当地のコンビニじゃないの!?」


 「ふっ、これだから初心者は困りますねっ」


 「腹立つ……」


 「セコイーマートは北海道全土を拠点にする高クオリティ商品が売りのコンビニです。 特にこのホットコックと呼ばれる店内調理がある店の食べ物はコンビニとは思えない程の美味しさを誇ります!」


 「ずいぶん饒舌ね、なら騙されたと思って入ってみるわね……」


 ピンポーンピンポーン


 「晞咲さん、このチーズおかか、塩サバのおにぎりとからあげ、フライドポテトは特におすすめです!」


 「男子小学生じゃないんだから…… まぁでもお昼食べてからかなり時間空いてるしそれでもいいか」


 「飲み物はこのオレンジソーダで決めるともう弾けますよ!」


 「あーはいはい、もうそれでいいわよ」


 「それじゃあさっさとお会計して駅に向かいましょう。 クロスシートの電車なので席でやっちゃいましょう!」


 -北広鳥駅-


 「ちょっと、駅の改札口まで大行列じゃないの!?」


 「ここまでとは…… 正直想像がつきませんでした。 熊張で観戦する時でもこんなことは早々ないですよ」


 駅についても球場から流れていている人達の大行列になっており一向に電車に乗れる気配が見受けられなかった。


「もう無理よ…… 動けないわ……」


 「幸いにもそこのベンチが空いているので座ってさっき買ったものを食べましょう」


 「そうしましょうか…… 人目が気になるけど」


 「皆屍のような顔して歩いていますから見向きもされませんよ、ヘーキヘーキ」


 流石に想像を絶する内容に2人も半ばやけくそ状態になっていた。


 ペリペリ


 「じゃあいただきまーす」


 「いただきます」


 モフモフ


 「あら、本当に美味しいわねこれ。 コンビニのおにぎりとは思えないわ」


 「そりゃあそうですよ! 北海道なだけあってそこら辺のスーパーのお惣菜ですら美味しくて前に来た時ものすごく感動しましたから!」


 「からあげも良い味付けね。 お肉そのものもとても噛み応えがあって絶品じゃないの」


 「ちょっぴり掛かっているペッパーがミソですね!」


 「ポテトも細長いやつじゃなくて丸っこくて太いタイプでホクホクね」


 「程よい塩梅の塩に柔らかくて口当たりの良いお芋が最高です!」


 「プハーッ、このオレンジソーダでリフレッシュするの堪らないわね!」


 「大手メーカーのオレンジ系炭酸飲料とはまた一味違うのが癖になるのですよ」


 「チーズおかか、何これ!? お米なのにマイルドなチーズと少ししょっぱいおかかが是絶妙にマッチしてかつてない新感覚を味わえるわ」


 「ものの数品で解説が出来るまでに成長するとは流石です晞咲さん」


 「はぁ…… いやぁ美味しいわねセコイーマート…… 北海道恐るべし」


 「ちなみに関東にも埼玉県に若干と茨城県に数十店舗ありますよ」


 「えっ! そうなの、なぜ2県だけあるの?」


 「一応茨城県と北海道には航路がありますからね。 埼玉はそのちょっと延長線上ですし物流的にはちょうど良いのでしょうね。 ちなみにセコイーマートは現存する主要なコンビニの中では最古参になるようですよ」


 「えっ! そうなの、それならもっと知られていても良いのに」


 「そうですよね、ネットとかで調べると歴史については色々出てくるので時間がある時にでも勉強してみてください」


 実はコンビニとしての歴史が長いセコイーマート。


 昔は関西方面などにもあったようだが現存しているのは北海道、茨城県、埼玉県の3道県のみである。


 「美味しかったわね。 意外過ぎて驚く一方だったわ」


 「セコイーーマートはまだ序の口です。 北海道のグルメは最強の布陣ですから明日以降も楽しみですね」


 「野球の試合でゲンナリだったけど元気が出てきたわ。 人もかなり減って来たしそろそろ電車に乗りましょうか」


 「そうですね!」


 とてもとても濃密だった北海道での1日を過ごした2人でした。


 「次の電車は…… って40分後!? ちょっと40分って!?」


 「あぁそういえば北海道でしたね。 野球の試合直後はまぁまぁ本数があるのでしょうけど少し時間が経つと東京とは違って田舎の本数になってしまうのでしょうね」


 「ちょっとぉ~~~」

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