封印の地へ 4
光の上級精霊ソールさんではなく、光の精霊王さまと契約すると言い出した兄様に、ソールさんは大激怒。
ダイアナさんたちは面白そうに笑って眺めているだけ。
ど、どうしたらいいの?
「レン、放っておけ」
「アリスター」
「ヒューの奴も本当に精霊王さまと契約なんて考えちゃいないよ。あっちの精霊と気が合わないだけだ」
それって大問題なのでは?
これから僕たちはダイアナさんたちの案内で砂漠の下に潜ります。
なんだか、遺跡発掘みたいでワクワクするけど、とっても危険なんだって。
砂が崩れ落ちてこないように桜花が土魔法で維持してくれるんだけど、桜花も神獣クラウンラビットがもし封印を解いて暴れ出したら戦わないといけないから、土の精霊王さまも手助けしてくれるの。
そうして、神獣クラウンラビットが眠る場所まで来れたら、兄様たち精霊の契約者とキャロルちゃんは演奏の準備。
兄様たちが奏でる楽器の音色とキャロルちゃんの歌声で、精霊力をアップさせた精霊たちは浄化の力で瘴気を消滅させる。
そして、光の精霊王さまと闇の精霊王さまで、改めて神獣クラウンラビットを封印するんだ。
深い深~い眠りについた神獣クラウンラビットは、仲間である白銀たちに連れられて神界へと。
創造神シエル様のいらっしゃるところで、静かに眠る……はず。
こんなスペシャル難しいミッションなのに、すでに兄様とソールさんが仲違いしているというマイナス要素。
……失敗したら、大変なことになるのにな。
だって、この作戦中に百パーセントの確率で邪魔してくるのは、道化師の男の人。
アリスターとキャロルちゃんのご両親を殺し、キャロルちゃんを攫ってアリスターに悪事の手伝いをさせた人。
派手なおばさんを操って、ぼくたちが住むブリリアント王国の王家の人たちを惑わし、ウィル様を悲しい境遇に堕とした人。
ドロシーちゃんが住んでいたアイビー国の土地を魔法陣で痩せさせて、お野菜とかが育たなくなったり、プリシラお姉さんのお父さんをヒドイ目に遭わしたり、とにかく悪い人なのだ。
父様たち騎士団は、その道化師の男の人たちが邪魔しないように戦うためにここにいる。
ぼくはムムムッと眉間にシワを寄せたあと、グッと両手を握って、とことこと歩きだした。
どうも気に食わない。
あの、光の上級精霊ソールという奴は。
僕だって、神獣クラウンラビットの封印がどれだけ重要なことか、認識はしている。
精霊と契約した者たちの保護も、精霊楽器の捜索も、僕自身が中心になってやり遂げてきたことだ。
……でも、僕が契約すべき精霊が、本当に気に食わないっ!
レンの手前、冷静でいなきゃと思うけど、ソールの一挙手一投足がイライラする。
どうやら、僕の本質は「闇」であるらしい。
だからこそ、対となる「光」との相性がいい。
「光」の本質を持つウィルフレッド殿下は、闇の上級精霊ダイアナと契約を結ぶ。
ダイアナが一番実力を発揮できる契約だからだ。
闇の精霊王さまは、光の精霊王さまと神獣クラウンラビットの封印を行う。
「闇」の力と「光」の力が混ざりあい強固な力が顕現するからだ。
僕は「光」と協力しないといけない。
それが一番、僕の力を強くする……強くするんだけど……あいつと契約するのはイヤだなぁ。
自然とソールと睨み合う状態になっていた僕は、そのソールにとことこと近づくレンに気づくのが遅れた。
「レン?」
いったい何を? と首を傾げたら、レンはソールの服の裾を握ってグイグイと引っ張った。
「あのね、あのね。にいたまと、なかよくちて」
……え?
「にいたまと、なかよく。ふーいん、できないでしょ? アリスターたち、がんばるし。とうたまも、がんばるの。にいたまも、がんばりたいの!」
「え……なにこの子。ちょっと何を言っているのか、わかんないんだけど」
ソールがレンのかわいさを理解できずに、顔を歪めている。
……嘘だろ? レンのかわいさがわからないなんて……。
いや、それよりも、レンを否定すると、恐ろしい保護者たちが出張ってくるのに。
「ああん? いま、お前。レンのことバカにしたか?」
「聞き捨てならないわね? たかが光の精霊のくせにっ。消滅させるわよ」
白銀と紫紺がガルルッと牙をむき出しに威嚇すれば、ずっと神気を貯めていた真紅が白銀の頭の毛に埋もれながら火の玉を飛ばす。
「うわっ、何するんだよ」
「あちちっ」
ソールはどうでもいいが、レンまで火の粉を避けるためにバタバタと右往左往するハメになる。
「あらあら、真紅ちゃん、危ないわよ」
ぬっと上から顔を出した桜花がチロリと先が分かれた赤い舌で火の玉を舐めとる。
「ありがと、おーか」
「ふふふ。気をつけてね、レン」
何気に桜花がソールを体で押し潰そうとしているような?
「ぐるちい~」
精霊のくせに何を言ってんだ? と思ったが相手は聖獣だ。
もしかして、精霊に物理的に攻撃ができるのでは?
「……そこまでにしてくれ。厄介な仕事の前に、使い物にならなくなったら困る」
ツイと右手を上げて、闇の精霊王はソールの体を桜花から取り戻す。
ふよふよと頼りなさげに宙に浮いているソールの顔は、げっそりとやつれていた。
「ソール。いい加減にしろ。これ以上は光のが制裁する前に俺が貴様を無に還すぞ」
ギロリと闇の精霊王に睨まれて、ソールは小さく頷いた。
はぁーっ、やれやれ。
これで、ようやく神獣クラウンラビットの封印の地まで進めそうだね。





