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12話

相手が使徒の力を使ってくる、んなものヴィルグは最初から予想済みだ。つまりは使徒相手に対抗出来るすべを持っているということだ。


今までのことから少し考えればわかることなのに男は神子から加護を受け使徒としての力を振るっているから考えが短絡的になっていた。そして使徒に対抗する手段というものはーー、


「なん……だと……」


自分達も使徒を使って戦えばいい。理屈としては簡単な話だが現実問題としてはとても難しいもの。使徒というものは加護を与えられた特別な存在。神子ほどではないが全体的人数は少なく数千人に一人という割合である。


何より数万人に一人という割合の神子と契約しなければ加護を受けれないという根本的問題がある。男が呆気に取られてその場に立ち尽くすのも無理がない話である。


「貴様は武人には向いていない」


ただそれは戦場では一番してはいけない行動、よってエルドアンに右腕を切り落とされるという洗礼を受けてしまう。


戦場に響き渡る男の叫び声、恐怖と入り交じったそれはとてもみっともなく情けないもの、少なくとも武人が出すようなものではない。


それもそのはず、彼は本来の職業は傀儡師。人形などを操って後ろから攻撃する後衛職。それなのに使徒という力に気を大きくし必要最低限にしか学んでいない剣を振り回そうとしているのだ。現在起きていることは当然の結果である。


「バランスが悪いな。じゃあ僕は左腕をもらおうか」


男は痛みせいで忘れているが先ほどヴィルグはこう言っていたーー倍返しだと。つまりそれは使徒は一人ではなく二人いるということ。


そのもう一人の方はいつも通りの子供染みた声で、子供じみた理由で男の左腕を切り落としてしまう。


瞬く間に両腕を切り落とされてしまった男はもう冷静な態度などできない。周りで人が見ていることなど知ったことではなく汗と涙でぐしゃぐしゃになった表情で地面をゴロゴロと転げ回っていた。


あまりにも間抜けな行動、しかし誰も彼を嗤う(わらう)ことはなく、それどころか恐怖にじみた表情でその光景を見ていた。


轟音と共に現れたそれらは瞬く間に屈強な男達を制圧し、ここでは絶対的存在だったギルドマスターをまるで子供が遊ぶ人形のように弄んでいる。よくこんな奴らが今まで無名だったのだと疑問に思い同時に自分達が何に喧嘩を売ってしまったのかを知り後悔する。


だが後悔してももう遅い、拳は振り下ろされてしまった後、もう後戻りはすることは出来ない。そして次は自分の番だと理解しているギルドメンバー達は我先にと大きく開いている入り口へと逃げ込んで行くーーそれがさらなる罠であることも知らずに。


「な、何だんだこれは」


逃げた先には玄関の穴などかわいく思うほど大きな穴が空いておりその下にはなんとも表現しがたい不気味悪い色をした沼が広がっていた。


先ほどからの行動からしてあれはヤバい、そう感じている男達ではあるが逃げるという行動を取ってしまった彼らに待ち受ける未来はもうすでに決まっている。


先ほどまでの戦闘でかなり数は減ってしまったがそれでもこの王都で中堅規模があるギルド、メンバーの数は10や20では済まない。


それに加えて彼らが雇っていた娼婦のもの達も加えたら100人はゆうに超す。その全員が我先に入り口に逃げていたらどうなるのか?


決まっている、前方の光景など知らない後続のもの達がどんどんと前へと押し寄せていき次々と下に広がっている沼へと落ちて行く。そして残ったもの達もいつのまにか魔法禁止を解除していたアルクが使った魔法で仲良く下へと落ちて行く。


「安心しなよ、少なくとも逃げるものをいたぶる趣味は持っていないから。それは単なるトリモチだから死にはしないよ。まあ憲兵が来るまで大人しくしていてもらうけど」


上から届いてくるのは無機質で高揚感のない声。それに加えて先ほどまでの行動を見て誰も素直に信じるものはおらず沼の中は阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わり果てていた。


アルクは何故そんなにも恐怖する必要はあるんだろうと軽く首を傾げて不思議がってからもう決着がつくであろう彼らのことを見る。

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