09:四捨五入パーセント
「なぁ、相澤」
「なんだよ、倉上」
「オープンハート」
「……わりぃ。今回は本気でわけわかんね」
「相澤、お前は俺に心を開いているのか?」
倉上がまた懲りずにそんなことを言った。
「……それ、自分で言ってて恥ずかしくないのか、倉上」
「論点をすり替えるな。まず質問に答えろ、相澤」
「え、なにこの羞恥プレイ?」
「明確で的確な質問だろう。日頃から相澤は俺にたいして意識的に距離をとっている気がしてな」
正しい認識をしてくれているようで、俺は大変嬉しいよ、倉上。
口にはしないけれど、心の内でそう思う。
でも、言っておくが原因はすべてお前のせいだからな?
「ほら、答えろ」
「多分、(まけにまけて)六割」
「六割だと?」
「いや、えっと六.五割? いや七割?」
片眉を釣り上げた倉上に慌てて訂正する。
しまった。
こんなくだらない日常のひとこまで、友情を無に帰すなんて馬鹿げてる。
正直に答えるなんて何やってんだ、俺。
「いや、もしかしたら八割……」
「悪いが、相澤」
「?」
「俺は、お前の気持ちに答えることはできない。俺もお前をいい友人だと思ってはいるが……如何せん多大な抵抗が」
「なんで、そうなる!?」
「俺に六割も心を開いたと言った人間は、かつて只人一人いないからな」
可愛そうな奴、認定再び。
だからって俺の優しさを読み間違えるな。
思わず鳥肌のたった腕をさする。
「ちなみに倉上は俺にどんぐらいなわけ?」
「あぁ、俺か?」
倉上は表情ひとつ動かさずに言う。
「まぁ、まけて四.五割という所だろうな」
とりあえず聞かなかったことにしてみる。
いや、別に泣いたりとかしてないから。
ゴミに目が入っただけだし?
別に全然、ショックとかうけてねぇし?
でも、せめて四捨五入くらいしろよ!
てか、してください!