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天体の勇者~魔族《モドキ》は勇者足り得るか~  作者: 雨模様
第3章「子の心、親知らず」
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19話「強き者、弱き者③」

累計ページビュー2000PV超え、ありがとうございます。

「燃えよ、壊れよ、慈しめよ。熱よ、熱よ、どうかほら破滅を。音や光や熱さや、我が身を壊し、我が身で壊し、我が身を持って破滅の意思を示せ。ほおら、今も耳元で破滅の音が聞こえるぞ」


その歌のような詠唱が終わった瞬間、先程までエルがいた場所付近までの一帯が爆発で消し飛んだ。


「……は?な、んだ、あれは……。ま、魔族が使える魔法の範囲を越えておるだろう?!」


「皆、怪我はないですか?!」


「リン様、ありがとうございます。助けていただかなければ、今頃オレ達は……」


「あぶない…よく…かみさまを…助けた」


咄嗟に逃げ出した六人は、爆撃でも受けたかのような惨状に目を剥いた。


家々は完全に砕け散り、リンが横たえていた親子の死体もどこかへと消えてしまっている。


そのあまりにも非道な攻撃に、剣を握るリンの手には血管が浮いていた。


「なあ、リン」


「……なんだ、チカ」


「アタシ、多分アイツの爆発する場所が分かるかもしれねェ」


チカの言葉に、リンは思わずチカの方へと視線を向ける。


「アイツが爆発する瞬間、アイツの血からリンが真っ黒になった時と同じもが見えて、それで見えた瞬間に爆発したんだ」


「……ごめん。俺が真っ黒になった時に見えるものって何?」


「エ?!な、なンかフワフワ~キラキラ~って、やつ?」


「魔力じゃろうな。それよりも今気にするべきはそれではない」


爆炎をかき分けて現れるトゥーラは、たしかに今まで流していた血が全て消えていた。


チカの言っていたことを信じるのであれば、流していた血を消費して爆発へと変えたのだろう。


「オレが抑えます!その間にあいつを倒す術を探して下さい!」


「シータっ!っ、俺も行く。アラーニェさん、もし良い作戦が思いついたら教えてください!」


そう叫び、リンとシータは駆け出した。


「あれま。まさか鴨が(ねぎ)を背負って来てくれるとは思わんかったわぁ。っと!」


「クソッ!」


「リン様!」


リンとシータが左右から同時に攻撃を仕掛けてみるが、トゥーラのしなやかな四肢が受け止める。


二人の獲物の刃がトゥーラの肉を切り、血が流れた瞬間にまた爆発が起こる。


今までよりも猶予がなく、本当に血が流れた瞬間にだ。


「なんか、爆発するタイミング早くなったな……」


「そうですね。爆発をくらう前に二撃目を与えて下がろうと思っていましたが、それも難しくなってしまいました」


「え、なになに?作戦会議?いやぁ爆発するん速なったなぁ、とかって思っとるんやろ。そりゃそうや。詠唱しとるんやから」


トゥーラの攻撃を受け、シータと情報を整理していたリンの元にトゥーラが蹴りを繰り出した。


エルの方へと向かわせないようにトゥーラの一挙手一投足を見ていたため反応できたが、それでもトゥーラの一撃は深く、そして重い。


あまり体力を消耗しすぎても、リン自身の詠唱がいつまで続くか分からない以上問題があるため、リンは決定打となる行動が取れずに中々積極的な攻撃を出来ないままでいた。


どうすれば。


そう思った時だった。


「「みよ…見よ…。日を見よ。月を…見よ。星を見よ。我らの糸は…暦を紡ぐ。香しき花を紡ぐ。ホタルの灯火を…紡ぐ。子守唄を紡ぐ。死を…紡ぐ。糸よ、人の生き様を紡げ。我らの愛を…紡げ」」


声が聞こえた。


それもアラーニェと娘の声だ。


トゥーラの事を見つめたまま、リンは何が起こっているのか理解できていなかった。


それなのに、背後にいるアラーニェ達のことが見えているトゥーラは楽しそうに口角を上げている。


「ふ、詠唱を使えるのが——」


「——おまえら…だけだと…おもうな…よ」


アラーニェと娘がそう言い放った瞬間、リンの視界が変わった。


トゥーラが足で受け止めていたリンの剣、そこに垂れる血がたしかに”キラキラ、フワフワ”とし始めたのだ。


「これは……」


「なんや、よそ見しとる暇あると?」


「っく!」


視界に映る血の”キラキラ、フワフワ”が更に煌めくと、また爆発が起こった。


間近での爆発。


今度こそ避けれるような時間も、距離もリンには無かった。


また最初の爆発と同じように酷い熱傷を負ってしまう、そうリンが思った時だった。


「……リン様、ご無事ですか?」


「シー……タ……?」


シータがリンを地面に引き倒し、覆い被って爆発から守っていた。


硬化していたのだろうが、それでも爆発側にあったシータの身体は酷い傷を負っていた。


焼け焦げた肌からは煙が立ち上り、肉が溶けている部分もある。


骨を見えるまではいっていないが、今にでも倒れてもおかしくない程、酷い怪我であった。


「シータ!エルさんの方にっ!」


「いいえ、その必要はありません!」


その声が響くのとほぼ同時、天上から雪のような光が落ちてきた。


そして光がシータの身体に触れると、少しずつ傷が癒えていく。


しかし、《星の奇跡》を使用して傷を癒しているエルも滝のような汗をかいており、シータの傷が如何に深いものかがよく分かる。


「ああ、ほら。ほんま聖女って酷い存在よなぁ。こうやって酷い傷負っとる奴を無理やり治して、それでまた戦場に向かわせる。ほんま酷いわぁ。信じられんわぁ」


「傷を負わせたのはっ……お前だろうがぁっ!」


リンは勢いよくトゥーラに斬りかかる。


分かってはいる。


不用意に斬りかかり、血を流させてしまえばまた爆発が起こると。


それでも、怒りが抑えられなかった。


しかし、爆発は起こらない。


リンは好機と思いそのまま何度も斬りつけ、トゥーラの攻撃を避けながらも横目でシータの方を見た。


しかし、シータと治療をしているエルがいるはずの場所には何もなかった。


いや、何か靄がかかったような、蜃気楼のようなものが見える。


これは、チカの魔法?


いや、でも、


「いつもと視界が……ちがう?」


「妾の力じゃ!チカの見え方をお前も見えるようにした!早うそこの死に損ないに集中せんか、愚か者!」


「っ!?」


そのアラーニェの声に視線を戻すと、トゥーラの周囲が異常に輝いているのが見えた。


すぐに飛び退き、下がる。


「あれ?なんや、分かるようになってもうたん?おもんないわぁ」


そんなつぶやきが聞こえたのと同時に爆発が起こった。


見える、分かる。


チカが言っていた通り、爆発のタイミングと規模が。


これなら、勝てるかもしれない。


「俺は、お前を許さない」


「ふーん、なんやこの小さい子らを殺されたんが気に入らんかった?優しいんやねぇ」


ニタニタ笑いながらもトゥーラはリンに蹴り掛かる。


勝てるかもしれない、なんて少し思ったがこの猛攻相手に一人では厳しそうだ。


蹴りを受け止めている剣が少し軋む。


《月の魔法》で強化しているとは言え、それでもトゥーラの攻撃は重かった。


チカとシータが居てくれたら、そう思わずにはいられなかった。


その時、


「ドォリャァアアア!」


「な、めるなぁぁああ!」


そんな雄叫びとともにシータとチカがトゥーラに攻撃を仕掛けた。


シータの怪我も、リンと同じ様に大体しか治っておらず肌が引き攣っているのだろう、顔をしかめている。


「娘!」


「うん…!」


アラーニェ達もトゥーラを捉えるために力を使ってくれている。


目に見えぬ糸がまたもトゥーラの四肢を拘束し、動きを止めてくれた。


「っ!流石にっ、面倒なってきたわ!」


「オレには随分と楽しそうに見えるがなっ!」


シータとトゥーラが切り結ぶ。


その隙にリンとチカが少しずつだがトゥーラを切り、本当に少しずつだがトゥーラの命を削っていった。


爆発は避け、爆炎が消えればすぐに切り結ぶ。


四肢の拘束から逃げられてもすぐにアラーニェが捕まえ直してくれる。


ヒットアンドアウェイな戦いをリン達は出来うる限り繰り返し続けた。


「っ、ぁ、くそ、」


不意にふらりと、トゥーラの身体から力が抜けた。


「い・ま・だ・ぁああ!」


「ッコレで!終わりだぁああ!」


チカとリンがそう叫びながら最後の一撃を加えようとしたその時だった。


「あはっ」


剣を振り下ろす瞬間、トゥーラの口角が上がったのが見えた。


チカと同じ様に爆発のタイミングが見えるようになったリン達の視界に映ったのは、今までの中で目に痛い程に一番煌めき、そして視界を埋め尽くす程に真っ白になった世界だった。


「っ、え?」


『あ、死んだ』そうリンが思った瞬間、リンとチカの身体が後方へと吹っ飛んだ。


二人の身体を掴み、後方へと投げ飛ばしたのは——。


「シー……タ?」


シータであった。


そしてシータはトゥーラに近づくと、そのまま爆発を防ぐようにトゥーラの身体を包みこんだ。


瞬間。


目を埋め尽くす白。


音が聞こえなくなる程の轟音。


爆炎による熱が、リン達の身体を掠めた。


トゥーラが盾になったため、リン達には怪我はない。


それでも、あの爆発でトゥーラが生きているとは思えなかった。







◆◇◆








「ねぇねぇお前!おい、お前!ココで死ぬのか?まぁ、カワイソウ。まぁ、クルシソウ」


クスクスと耳に障る笑い声がシータの意識に溶け込んだ。


オレは死んだのではないのか?


チカの視界を借り受け見えた予測からは、確実にあの里ごと爆破してしまいそうな爆発が起こるはずだ。


だからこそ、この里に来てほんの少し進化したオレの魔法で、どうにか抑えるはずだった。


だというのに、目の前にいる子どもはなんだ?


なぜ、トゥーラも、リン様達も全てが静止している?


「むむむー、なんだなんだぁ?困ったさんだー!」


訳の分からん子どもだ。


太陽と、星と、月。


陶器の肌、星空の肌、砂浜の肌を持つ目の前の子ども。


リン様と同じような肌や、あまり見たことのない肌の色がぐるぐると目まぐるしく変化している。


本当にこいつは何なんだ。


どこか、そう、バルドと言ったか。


リン様の知り合いに似ている、気がする。


■■()をアイツと同じだと思うのか?ウレシイけど、アイツはイヤがるだろーなー。アイツは■■()のことキライだからなぁ」


どういうことだ。


こいつはあのバルドと知り合いなのか?


というか、この現状は何だ。


オレはすぐにリン様達を救わねばならんのだ。


子どもの遊びに付き合ってはいられん。


それに、お前も早く逃げろ。死んでしまうぞ。


■■()のことをシンパイするのか?ウレシイなぁ。お前のことスキだー!偉大な勇者の仲間!リンの仲間!シータ!」


ふむ、リン様の事を偉大な勇者と言うか。


それは素晴らしい。


だが、早く逃げ——「でもぉ、お前このままだと死ぬぞー?ていうか、わかってるよな。勝てないって。カワイイなぁ」


……。


そうだな。死ぬ。


でも、それでリン様が、聖女様が、チカが、皆が。


助かるのであればそれでいい。


■■()はよくない!よって、お前に詠唱を授けよう!」


詠唱?


それは、リン様やトゥーラがしていたあれか?


「そうだぞー!よく聞け!忘れるなー!」









「「この身は砕き、守るために。守護に意思を、破壊の本能をこの身に宿せ」」


つぶやいた瞬間、目の前を閃光が埋め尽くした。

少々忙しく、更新が大変遅くなります。

ご迷惑をおかけいたします。

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