3話
朝の光で目が覚める。しばらくぼんやりと天井を見つめていた。見知らぬはずの部屋。そんな部屋が昨日よりも落ち着ける場所になっていると感じる。
鼻腔をくすぐる、香ばしいにおい。
「いいにおい。」
自然とおなかが鳴ってしまう。
「セルヴァ、セルヴァだって」
フォルがつけてくれた名前。読んでいるうちにとてもしっくり来た。まるで、最初からこうだったように。
朝食の手伝いもしないと。
軽く身支度をして、部屋を出ようとしたとき、
「セルヴァ、起きた?」
扉の向こうからフォルの声がした。
「はい、起きました。おはようございます。」
「うん、おはよう。朝食の準備ができたよ。」
「今行きます。」
階段を降りると、すでに食卓にはおいしそうな朝食が並んでいた。
「おはようございます。準備を手つだえず、ごめんなさい。」
「いいえ、全然いいのよ。疲れていただろうし。さあ、食べよう!」
「はい。いただきます。」
今日の朝食は、パンにベーコンとスクランブルエッグが付いているものだ。
ベーコンがカリッと焼けていて、スクランブルエッグはとてもふわふわだ。
「おいしい」
口に入れた瞬間声が出てしまう。こういう味を私は知っている。記憶は全くないのに。
「そういえば、セルヴァ」
フォルがご飯を食べながら声をかけてくる。
「きみはは記憶をどこまで失っているの?」
フォルが不思議そうに聞いてきた。
「えっと、過去の出来事だったり、自分のことについては全く覚えていないです。」
そう答えながら顔をあげると気づく。また。まただ。またフォルはどこかほっとしたような、それでいてどこか寂しそうな表情をしていた。
「そうなんだ……。」
「でも知識はあります。これがベーコンだな、とかはわかります。」
「そっか。」
フォルはそこから少し間を開けて、言葉を紡ぐ。
「セルヴァ」
「はい?」
「あなたは自身の記憶を取り戻したいと願っている?」
「それはもちろんです。」
即答だった。
「いつまでもここにお世話になるわけにはいかないですから。」
「そう……。」
「ここの近くで倒れていたと言っていましたよね?ここら辺を見れば、記憶を取り戻せるかもしれません。」
「……。」
「フォルさんを巻き込むのも悪いし、一人でここら辺見て回ろうと
「ダメ。」
フォルが私の言葉に被せるように言う。
「一人ではだめ。迷子になるかもしれないし、記憶を取り戻すときにまた倒れたらどうするの?」
いつもよりも少し強い声だった。
「わたしもついていくよ。」
「でも、お仕事があるんじゃ、」
「あるよ、でも休日なら一緒にいける。」
こうなったフォルは絶対ひかないだろう、となぜだかどこかで確信があった。
「わかりました。よろしくお願いします。」




