開戦、VS東武連邦特殊部隊
『……分かった! 烈火・シュナイダー、出るぞ!』
『兎歌・ハーニッシュ。行くよぉ!』
烈火のイノセントは、プラズマリアクターの唸りとともに飛び出した。
その後ろを、兎歌とマティアスの機体が続く。
その後を追うのは、2機のボルン。
ゴォオオオ───ッ
ジャングルの闇が眼前に広がり、湿った空気が機体を包む。
総勢5機の軍勢は、未知の敵の眼前へと降下していく。
と、その瞬間───
───ズガァン!!
対空砲火が夜空を切り裂き、クロウのボルンを掠めた。
赤い火花が散り、装甲に焦げ跡が走る。
『くそっ、ギリギリだ! やるじゃねえか!』
『遅れてたら、アネモイごとやられてたわね』
ベテランの腕で機体を滑らせ、ボルンは空中で身を捻り回避。
レーダーに映るのは、闇の奥に浮かぶ6つの黒い機影。
マティアスが即座に分析する。
『シェンチアンだな。東武連邦の新型機、それも特殊部隊仕様』
烈火は闇の奥を走る敵を睨みつけた。
無骨な深緑の装甲が、月光を浴びて不気味に光る。
『敵、6機! 近いぞ、気を抜くな!』
『『了解!』』
マティアスの冷静な声が響く。
だが、対空ミサイルがジャングルの闇を切り裂き襲い来る!
ゴォォン!
リパルサーリフトの唸りが夜空に響き、烈火のイノセントが機敏に宙を滑った。
鋭い機動でミサイルをかわして着地。
地面が震え、泥と葉が舞う。
直後、兎歌とマティアスの機体も続いて着地した。
「来やがれ……!」
烈火はスロットルを踏み込み、プラズマリアクターの出力を上げた。
グォオオオン!
イノセントの蒼い装甲が赤いオーラを帯び、ジャングルの闇に浮かび上がる。
それはまるで、悪鬼のようで。
と、兎歌の声が震えながら通信に流れた。
『わ、わたし……頑張るよ!』
『その意気だ、兎歌君。フォーメーションB、援護に徹しろ』
『りょ、了解!』
3機のイノセントはシールドを構え、E粒子ライフルを握る。
その横で、ボルンたちはマシンガンを構え、周囲を警戒。
ジャングルの木々がザワザワと揺れ、戦いの火蓋が切られた。
『───来るぞ!!』
ヒュオ───ッ
即座に5機のシェンチアンが囲むように動き、木々の隙間を駆け抜ける。
アサルトライフルの弾幕がバリバリと降り注ぐ。
特殊部隊仕様のシェンチアン、その動きは滑らかで鋭い!
『くそっ、こいつら速え!』
烈火は叫び、E粒子ライフルを構えて応戦。
青い光条がジャングルを切り裂くが、シェンチアンは滑るように回避。
クロウとアレサのボルンも、マシンガンを乱射し、密集陣形でイノセントを守る。
だが、敵の熟練度が圧倒的だ。
マティアスの声が通信に響いた。
『フォーメーションを維持しろ! 敵の連携を崩すんだ!』
烈火は兎歌のイノセントをかばうようにシールドを掲げた
そこへリニアキャノンの砲撃が飛来、シールドが重金属弾を弾いた!
ガァン!
衝撃で機体が揺れ、火花が散る。
『う、うわぁあ! 撃たれてる!?』
『落ち着け、兎歌! シールドを上げるんだ!』
吼える烈火。
兎歌のイノセントはシールドを構え、E粒子ライフルで牽制射撃を行う。
だが、敵の動きは止まらない。
シェンチアンたちは木々の間を縫い、まるで獣の群れのように烈火たちを追い詰める。
「う───ッ!?」
その時、アレサのボルンにシェンチアンが肉薄!
アサルトライフルが火を噴き、ボルンの装甲に赤い火花が散った。
『やばい、近すぎる!』
『アレサ、退け!』
咄嗟に割り込んだのは、クロウのボルン!
即座に間合いを詰め、コンバットナイフを振り下ろす。
ガギャアア!!
シェンチアンの左腕が火花を散らして爆散!
だが、敵は即座に反撃。
至近距離のアサルトライフルがボルンを捉え───
───ズガァン!
爆音とともにクロウの機体はオレンジの炎に包まれた。
『クロウ!』
アレサが叫ぶと同時に、マシンガンを乱射。
ダダダダ!
直撃だ! シェンチアンは黒煙を上げ、木々に倒れ込む。
だが、クロウのボルンはすでに動かず、焦げた装甲がジャングルの闇に沈んでいた。
『くそっ、クロウ……!』
烈火の声が震え、操縦桿を握る手に力がこもる。
プラズマリアクターが重低音を上げて唸り、イノセントの蒼い装甲が赤いオーラを纏う。
と、マティアスは冷静に通信を入れてきた。
『烈火、感情に流されるな。敵はまだ5機残っている。陣形を立て直せ!』
思わず涙声になる兎歌。
『クロウさん……わたし、ちゃんと援護できなくて……!』
『兎歌君、悔やむのは後だ。今は生き残ることを考えろ!』
『くっそ、手練れだぞコイツら!』
烈火は歯を食いしばり、E粒子ライフルを構え直す。
だが、戦場は残酷だ。
「え───」
ジャングルの闇に閃光がひらめき、アレサのボルンが爆散!
ズガァン!
黒煙と炎が木々を焦がし、アレサ機は地面に崩れ落ちる。
リニアキャノンが、コックピットを貫いたのだ。
『きゃあ───ザザザzz』
通信にアレサの叫びが途切れ、静寂が重くのしかかった。
『アレサ!? くそっ!』
烈火は歯を食いしばり、機体を前傾させた。
怒りに応え、烈火のイノセントが瞬時に動く。
『兎歌、合わせろ!』
『わ、わかった!』
兎歌の震える声が応じる。
その直後、兎歌のイノセントはE粒子ライフルを放った。
青い光の奔流がジャングルを切り裂き、攻撃直後のシェンチアンを狙う!
敵は素早く身を翻して躱す。
だが、その瞬間───
「そこだ───ッ!」
『……ッ!?』
───烈火のイノセントが目の前に迫っていた。
蒼い巨体が、月光を反射して、冷たく光る。
E粒子ブレードが縦に一閃。
一撃だ。
シェンチアンは左右に分かれ───ズドォン!
爆散して木々に倒れ込む。
「すげぇ、一撃じゃねえか……」
烈火はプラズマリアクターの出力に息を呑む。
だが、間髪入れず、アサルトライフルの弾幕が襲い来る!
残るシェンチアンが一斉に撃ってきたのだ。
重金属の弾幕が烈火機を襲う。
「チィ!」
本能が危険を察知し、即座にシールドを構える。
衝撃で腕が震えるが、そこへマティアス機の援護射撃!
ロングバレルのE粒子ライフルが閃光を放ち、シェンチアンの腰を粉砕。
シェンチアンは泥を巻き上げ、その場に倒れた。
『助かった、ありがとな、マティアス!』
『油断するな、烈火君。残る敵は手練れだ』
マティアスは冷静に告げ、闇の奥の敵の動きを読む。
視界にかすかに映るシェンチアンたち。
どの機体も巧妙に木陰に潜み、狙撃の隙を見せない。
腕の良い証拠だ。
「……」
ジャングルに一時的な静寂が訪れる。
敵も烈火たちの強さに気づき、無闇な攻撃を控え、隙を伺っているのだ。
「ふぅ……ッ、ふぅ……ッ」
闇の中で、烈火は荒い呼吸を繰り返す。
レーダーはジャミングでノイズに埋もれ、何も映らない。
『ジャミングがうまいな。先に動いた方が負けるぞ』
『……あぁ』
マティアスの忠告に、烈火は低く応じた。
ドクン、ドクン、ドクン───。
心臓の鼓動が、コックピットにやけに大きく響く。
通信に流れるのは、兎歌の不安げな。
『烈火……怖いよ……』
『大丈夫だ、兎歌。俺がついてる』
『うん……』
烈火は視界の隅に映る兎歌のイノセントを見やり、力強く答えた。
その言葉に、兎歌は少しだけ勇気づけられた。
『すぅー……はぁー……』
兎歌の深呼吸音が通信に響き、緊張が伝わってくる。
額に一筋の汗が流れ、思わず腕に力がこもる烈火。
ジャングルの木々がザワザワと揺れ、闇の奥でシェンチアンの機影が蠢く。
次の瞬間が、勝敗を分ける。そのことを、烈火の本能が告げていた。
ジャングルの闇に静寂が戻る。
その瞬間、烈火の本能が鋭く反応した。
極限環境で研ぎ澄まされた第六感───すなわち、ネクスター能力が殺意の波を捉え、背筋に冷ややかな刃が走る。
『来る!』
烈火の叫びがコックピットに響くや否や、暗闇の奥からリニアキャノンの閃光!
ズガァン!
烈火のイノセントは即座にシールドを掲げ、衝撃を弾いた。
火花が散り、腕が震える。
だが、そこで烈火機は右手のE粒子ブレードを投擲。
「ッ!?」
青い光刃が回転し、シェンチアンの右腕を切り裂いた。
金属片が闇に飛び散り、爆音が木霊する。
一瞬遅れて、青い光条がシェンチアンのリアクターを貫通した。
マティアスのイノセントが、E粒子ライフルで狙撃したのだ。
ズドォン!
爆炎がジャングルを赤く染め、燃え盛る残骸が木々に倒れ込む。
「すっげ……一撃で仕留めやがった!」
烈火は荷電粒子兵器の力に息を呑む。
だが、休息は許されない。
直後、別のシェンチアンが闇から飛び出し、アサルトライフルを乱射!
烈火は本能で危険を察知し、E粒子ライフルを抜いて応戦。
青い光と重金属の矢が交差する。
撃ち勝ったのは、烈火のイノセント!
光の矢が一撃でシェンチアンの胴体を融解させ、風穴が開いた。
オレンジの炎を巻き上げながら爆散、夜の森を炎色に染める。