巨乳系幼なじみとの混浴
エリシオンの戦闘空母『プロメテウス』。
リパルサーリフトによる飛行能力、コマンドスーツ運用設備、そして粒子コートと荷電粒子砲による戦闘力。
それら全てを兼ね備えた、人類最後の希望とも呼べる高性能艦である。
「997……998……」
艦内は、戦いの緊張感と静寂が交錯していた。
金属製の通路が靴音を響かせ、遠くでリアクターの低いうなり声が聞こえる。
その一角にあるトレーニングジムでは、一人の男が獣のような気配を放っていた。
烈火・シュナイダー。
炎じみた赤色の機体『ブレイズ・ザ・ビースト』のメインパイロットであり、エリシオン最強の「野生」を宿す男だ。
「999……1000ッ!」
烈火が最後の腕立てを終え、荒々しく息を吐く。
身体に括り付けていた重りを乱暴に外すと、床にゴトンと重い音が響いた。
全身から湯気が立ち上るほどの熱気。
張り詰めた筋肉が脈打っている。
彼は汗を拭うこともせず、ギラついた瞳で自分の腕を見つめた。
((まだだ……もっと速く、もっと強くならねぇと、あの化け物どもは殺せねぇ))
激闘の日々を生きる彼にとって、筋トレは日課ではない。
生存のための「儀式」だ。
ザバァ……ッ!
汗に濡れた体をそのまま浴場へと運び、烈火は豪快に湯船へと沈んだ。
プロメテウスの浴場は、過酷な戦いを続けるパイロットのために広く作られている。
だが、資源節約のため、稼働している浴槽は一つだけだ。
「ふぅ……」
熱い湯が、酷使した筋肉を芯からほぐしていく。
烈火は浴槽のふちに両腕を広げ、天井を仰いだ。
貧民街で泥水を啜っていた頃を思えば、温かい湯に浸かれること自体が奇跡に近い。
その時──。
ウィィン……。
浴場のドアがスライドして開く音がした。
「ふふっ、今日は一番風呂かなー」
鼻歌交じりに、一糸まとわぬ姿の少女が入ってくる。
桜色の髪、そして豊満ながらも均整の取れた肢体。
兎歌・ハーニッシュ。
援護機『リリエル』のパイロットであり、烈火の幼なじみだ。
彼女は湯気が充満する浴室内を見渡し、そして──先客と目が合った。
「あ……」
「ん? なんだ、兎歌か」
烈火は眉一つ動かさず、平然と言い放った。
対照的に、兎歌の顔がカァッと音を立てんばかりに赤く染まる。
「ひゃ、ひゃあああああっ!?」
金切り声とともに、彼女は慌てて両手で胸と股間を隠し、その場にしゃがみ込んだ。
「れ、れれ、烈火!? なんでここにいるのよ!?」
「なんでって……汗かいたから洗いに来たんだよ。他に理由があんのか?」
烈火は不思議そうに首を傾げ、あくびを噛み殺す。
彼にとって「裸」とはただの状態であり、恥じるようなものではない。貧民街ではプライバシーなど存在しなかったし、戦場では着替えている暇すらないこともあったからだ。
「そうじゃなくて! い、今はわたしが入ろうと……!」
「あー、悪ぃ悪ぃ。邪魔だったか」
烈火は面倒くさそうに頭をかくと、ザバァと音を立てて浴槽から立ち上がった。
隠すそぶりなど微塵もない。
鍛え抜かれた鋼のような肉体が、堂々と兎歌の前に晒される。無数に刻まれた古傷が、彼の生きてきた過酷さを物語っていた。
「お前が入るなら、俺は上がるわ。どうせ体は温まったしな」
「…………ッ!」
目のやり場に困り、指の隙間から烈火を見上げていた兎歌だったが、彼が浴場を出て行こうとするのを見て、ハッとした。
このままでは、またすれ違いになってしまう。
戦場以外の場所で、彼とゆっくり話せる機会なんて滅多にないのに。
「ま、待って!」
兎歌は羞恥心を振り切るように叫び、立ち上がりかけた烈火に向けて手を伸ばした。
「い、いいよ! 上がらなくていい!」
「あ? なんでだよ。狭いだろ」
「狭くない! ここのお風呂、大きいもん!」
兎歌は真っ赤な顔のまま、それでも瞳だけは真剣に烈火を見つめ、早口でまくしたてる。
「む、昔はさ……一緒にお風呂入ってたじゃない。家も隣だったし、お湯も貴重だったから」
「いつの話だ。ガキの頃だろ」
烈火は呆れたように溜息をつくが、兎歌は引かない。
むしろ、ズカズカと浴槽に歩み寄り、お湯の中へと滑り込んだ。
豊満な胸がお湯に沈み、彼女は口元までお湯に浸かって上目遣いに烈火を見る。
「い、いいから入ってよ。……背中、流してあげよっか?」
「はぁ……。お前、変わってるな」
烈火はポリポリと頬をかくと、再びドボンと湯の中に腰を下ろした。
彼にとっては、兎歌が隣にいようがいまいが、風呂は風呂だ。
警戒心など皆無の様子で目を閉じる烈火。
その隣で、兎歌は茹で上がった蛸のように顔を赤くしながらも、嬉しそうに小さく笑った。
「……背中、昔より大きくなったね」
「戦うにゃあ、これでも足りねぇよ」
湯気越しに交わされる言葉。
それは、明日をも知れぬ彼らにとって、数少ない平穏な時間だった。
「いいじゃん、別に。戦場じゃいつも背中預けてるんだからさ」
兎歌はそう言って、恥ずかしそうにしながらも湯に浸かる。
豊満な胸が浮力で浮き上がり、桜色の髪が水面に広がった。
兎歌は顔を綻ばせた。
その優しい笑顔が、烈火を少しだけ落ち着かせる。
「わーったよ……」
烈火は仕方なく湯に戻り、二人で肩を並べる形になった。
「……お前、ほんと真っ直ぐすぎるよな」
「烈火だって、昔から変わらないよ。強がってばっか」
兎歌がくすっと笑うと、烈火は鼻を鳴らして目を逸らす。
「うるせぇ。つーか、筋トレで疲れてんだよ」
「ふふ、烈火なら、見てもいいんだよ?」
「ほぉー。じゃあ遠慮なく」
「あ、ちょ、ちょっと……! あ、あんまり見られると……恥ずかしいよ」
烈火の舐めるような視線に、兎歌は思わず身体を隠した。
湯気の中で、二人の声が静かに響き合う。
戦闘空母の喧騒から離れたこの瞬間は、幼なじみの二人にとって、束の間の安らぎだった。
湯気立ち込める浴場の中、兎歌は湯船に浸かりながら、隣に座る烈火をチラチラと見つめていた。
桜色の髪が水面に揺れ、桜色の瞳には、複雑な感情が宿っている。
((烈火……傷だらけだね))
烈火の体は筋肉質でたくましいが、至るところに傷跡が刻まれていた。
鋭い刃物で切られたようなもの、焼け焦げた痕、鈍器で殴られたような凹み───
その一つ一つが、兎歌にとって見覚えのあるものだった。
兎歌の視線は、烈火の肩に止まる。
そこには特に深い傷が走っていて、かつて兎歌を守るために負ったものだと、すぐに思い出せた。
「ふぅ……」
湯の中で静かに息をつき、兎歌の心は遠い過去へと遡る。
~~~
さかのぼること10年。
エリシオンに入る前。
烈火と兎歌は、貧民街で暮らす戦争孤児だった。
お互いに家族はいない。
全部死んだから。
灰色の空の下、崩れかけた建物が並ぶその場所は、略奪と暴力が日常だった。
ある日、兎歌が食料を探して路地を歩いていると、数人の荒くれ者に囲まれた。
「おい、お前。そのパンよこせよ」
リーダー格の男がナイフを手に笑う。兎歌は怯えながらも、黒パンの袋を胸に抱える。
「だ、だめだよ……これ、わたしたちの分だもん」
「うるせぇ!」
男が手を振り上げた瞬間、背後から烈火が飛び込んできた。
ドゴンッ!
まだ幼かった彼は、細い体に似合わない勢いで男に体当たりし、兎歌を庇う。
「トウタに手ぇ出すな!」
「クソ……生意気言ってんじゃねぇ!」
男たちが烈火に襲いかかり、殴る蹴るの暴行が始まる。
兎歌は泣きながら叫んだ。
「やめて! お願い、やめてってば!」
だが烈火は立ち上がり、血まみれの顔で兎歌を睨む。
「逃げろ! おれが何とかする!」
「でm」「いいから!」
その言葉に押され、兎歌は涙をこらえて走り出した。
後ろで聞こえる殴打の音と烈火のうめき声が、心に深く刻まれた。
しばらくして。
兎歌が物陰に隠れていると、傷だらけの烈火が歩いてくるのが見えた。
「あ……」
「ワリぃ、ちょっと手こずった」
烈火は、多人数に囲まれ、武器を使われても負けなかった。
激闘の末、武器を奪い、めった刺しにして勝った。
あの日、烈火は肩に深いナイフの傷を負いながらも、兎歌を守り抜いたのだ。
二人は物陰に隠れ、パサパサの黒パンをかじった。
とても惨めだけど、暖かい感じがした。
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「……」
湯船の中で、兎歌は目を伏せた。
烈火の傷だらけの体は、あの貧民街の日々を思い出させる。
彼は何度も兎歌を庇い、そのたびに傷を増やしてきた。
エリシオンに入ってからも、ブレイズのパイロットとして最前線で戦い、兎歌や仲間を守るために身体を張り続けている。
「……烈火」
兎歌が小さく呟くと、烈火が怪訝そうに振り返る。
「あ? なんだよ、急にしんみりして」
「ごめんね、昔のこと思い出してただけ」
兎歌が微笑むが、その声には負い目が滲んでいる。
烈火は湯をかき混ぜて鼻を鳴らす。
「ったく、お前はすぐそんな顔するよな。昔のことなんざ気にしてねぇよ。俺が勝手にやってただけだ」
「でも、わたしのために傷だらけになって……」
「うるせぇって。傷くらいなんでもねぇよ。お前が無事ならそれでいい」
烈火がぶっきらぼうに言うと、兎歌は少しだけ笑って目を潤ませる。
「烈火って、本当に変わらないね」
湯気の中で、二人の間に懐かしい空気が流れる。
兎歌は心の中で思う――次は自分が、彼を守らなきゃ、と。
そのための力がある。
最新型のプラズマリアクター。
兎歌のために改良された次世代型アニムスキャナー。
兎歌のために作られたリリエル。
「烈火……」
兎歌は烈火の背中に抱き着いた。
裸の胸(筆者注:特大サイズである)ごしに、ごるつごつとした感触が伝わってくる。
「兎歌……?」
烈火の少し驚いたような声。
「わたしも……戦うから。だから、無茶しないで」
戦場で背中を預け合う今、兎歌はその決意を新たにしていた。




