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登場、ストラウス&ウェイバー

 一方そのころ、東武連邦の前線基地。

 薄暗い管制室で、レーダー員が突然立ち上がり、声を張り上げる。


「上空より敵接近! 未確認のコマンドスーツです!」


 指揮官が振り返る間もなく、轟音が基地を揺らし、格納庫の一つが跡形もなく吹き飛んだ。

 上空から凄まじい荷電粒子の光の柱が撃ち込まれ、地面が抉れる。

 空を見上げると、紫色の爆撃機のようなシルエットが急降下してきていた!

 そのコックピット内で、金髪の女――ギゼラ・シュトルムは、牙を剥いて笑う。


「直撃だよ! さぁ、始めようか!」


 乱雑な口調と凶暴な顔つき、そして姉御肌が彼女のトレードマークだ。

 ギゼラがスロットルを押し込むと、愛機『ウェイバー・ザ・スカイホエール』が唸りを上げる。


 爆撃機じみた紫の巨体が特徴のこの機体は、大型プラズマリアクターを搭載し、破壊力抜群の粒子キャノンを持つ。

 E粒子コートによる重装甲も合わせ、攻撃力、防御力ともに最高峰。

 飛行形態への変形能力を活かし、空から正確無比に拠点を叩くのが彼女の得意技だ。


 ウェイバーが再び上昇し、次の標的を定める。

 基地の兵士たちが慌てて対空砲を構えるが、ギゼラの笑い声が空に響き渡る。


「無駄だよ、アンタら! まとめて灰にしてやるからさ!」


 混乱の中、一機のシェンチアンから隊長の声が鋭く響いた。


「第二、第三小隊は対空砲を打ち続けろ! 第四小隊、ミサイルを起動する。私についてこい!」


 その言葉に、兵士たちが慌てて動き出す。

 シェンチアンが対空砲を構え、ミサイルランチャーが起動音を上げる。

 だが、次の瞬間――隊長機のリアクターが突如撃ち抜かれ、爆発が轟いた!

 鋼の巨体が火花を散らして崩れ落ち、兵士たちが困惑に目を剥く。


『隊長が!?』

『どこだ!? どこから撃たれてるんだ!?』


 見えない敵が、遠くから正確に命中させている。

 そのはるか離れた場所に、マティアス・クロイツァーがいた。

 銀髪に髭を生やした物静かな紳士が、愛機、『ストラウス・ザ・ホークアイ』のコックピットで淡々と引き金を引く。

 光学迷彩マントに覆われた機体は風景に溶け込み、大型スナイパーライフルが次の標的を捉える。

 プラズマリアクターのエネルギーが収束し、一閃───!


 ドゴォオン!

 対空用のミサイルランチャーが爆散した。

 破片が飛び散り、基地の防衛線が一瞬で崩れる。

 コックピット内では、マティアスの冷静な声が通信に流れる。


『次。対空砲、三番塔』


 ストラウスから放たれた自立型の小型コマンドロボが静かに動き出し、敵の位置を補足。

 ドーベルマンのようなコマンドロボは、収集した位置情報と映像を本体に送信する。


 ふたたびの光。

 マティアスの狙撃はかすかな狂いもなく、基地を次々と無力化していく。

 上空ではギゼラのウェイバーが轟音を立てて旋回し、粒子キャノンを再びチャージ。

 マティアスの援護射撃と連携しながら、基地は壊滅へと突き進む。

 ギゼラが笑い声を上げた。


『ハーハハ! さすがマティアスだよ! お前が片付けてくれりゃ、こっちは派手にぶっ壊すだけだ!』


 静と動、二人の攻撃が基地を飲み込んでいく。

 だが、敵も一方的にやられるわけではない。

 基地の上空に、迎撃用の軽量型シェンチアンが飛行ユニットを装備して上昇してくる。

 アサルトライフルの火線が空を切り裂き、ウェイバーを狙う。

 だが、ギゼラは動じず、ウェイバーの背面ミサイルコンテナを一気に開放。


「まとめて消えな!」


 ドドドドドド───ッ!!

 無数のミサイルが尾を引きながら放たれ、迎撃部隊のシェンチアンを次々と捕捉。

 爆発が連鎖し、火球が空を埋め尽くす!

 残った敵機が散開する中、ウェイバーの粒子キャノンが再び輝きを増す。

 今度は拡散粒子砲だ。

 無数の光の矢が放射状に放たれ、基地のあらゆる箇所――格納庫、対空砲、補給施設――を無差別に破壊していく。


 地上では、マティアスがストラウスのスコープを覗き、冷静に最後の標的を定める。


『管制塔、確認』


 粒子ビームが一閃し、管制塔の基部を正確に撃ち抜く。

 爆発が塔を飲み込み、砂埃の中、崩れ落ちる音が戦場に響いた。


 数分後、基地は完全に沈黙し、煙と炎だけが残った。

 ウェイバーが低空で旋回し、ギゼラが通信で笑い声を上げる。


『終わったよ、マティアス! 派手にやったねぇ!』

『ウム、予定通りだ。プロメテウスへ帰還するとしよう』


 ストラウスの光学迷彩が解かれ、マティアスの静かな声が返る。

 ギゼラは頷き、ストラウスの肩をウェイバーに接続し、上昇する。

 二機は基地の残骸を見下ろし、空へと飛び立っていった。


~~~


 灰色の空が広がる荒野から、場面は一転───

 エリシオンの戦闘空母『プロメテウス』の艦橋へと移る。


 柔らかな照明に照らされた室内では、計器の電子音とクルーの静かな会話が響き合い、戦場の喧騒とは対照的な落ち着きが漂っている。

 プロメテウスの艦橋で、オペレーターのヨウコがモニターを見つめながら報告。

 豊満な胸が制服を押し上げ、彼女の声が弾むように響く。


「艦長! ウェイバーとストラウスの反応を確認しました。ストラウスはウェイバーに懸架され、帰還中です!」

「やっと戻ってきたか。あやつらがいると騒がしくてかなわんよ……」


 レゴンが疲れた顔で頷いた。


~~~


 さて、場面は会議室に移る。

 ウィー……ン。

 扉が開き、ギゼラとマティアスが姿を現した。

 ギゼラは乱雑に金髪をかき上げ、豪快に笑う。

 マティアスは銀髪を静かに揺らし、落ち着いた足取りで入室する。


「ハッハー! ギゼラ・シュトルム。たった今帰投したよ」

「マティアス・クロイツァー。帰投した。ただいま、みんな」

 

 二人の姿に、兎歌が目を輝かせて駆け寄る。

 隣では烈火がギゼラに近づき、ニヤリと笑って手を上げていた。


「ギゼラさん! マティアスさん! おかえりなさーい!」

「おかえり。ギゼラお前、派手にやったな!」


 パァーン!

 ギゼラが豪快にハイタッチを返す。


「当たり前だろ! アンタだって要塞ぶっ壊したって聞いてんだからさ!」

「任務完了だ。皆、無事で何よりだよ」


 マティアスは静かに一礼し、言葉少なに呟いた。


 パイロットたちが揃ったところで、レゴン艦長が咳払いをしてモニターを起動する。

 疲れた目で一同を見回し、低い声で言う。


「さて……メンバーが揃ったところで始めるぞ。エリシオンの声明だ、見ておけ」


 モニターに映像が映し出される。


 前線基地がウェイバーの粒子キャノンで消し飛ぶ映像、

 ロンザイがブレイズの刀に貫かれて爆発する映像、

 リリエルのキックがシェンチアンを貫く映像、

 彼方からの光が管制塔を貫く映像───。

 どれも、機体がはっきりと映るわけではないが、その戦力は伝わってくる。

 電子変換された無機質な音声が会議室に響く。


「我々はエリシオン共同連合。巨大国家の侵攻に異を唱えるものである。

「我々は蹂躙される村の側につく。

「我々は侵略される小国家の側につく。

「その力は見ての通りだ。侵略行為を中断せよ。

「侵攻を止めるまで、我々は戦い続ける」


 映像が繰り返され、音声が淡々と流れ続ける中、烈火が腕を組んで呟く。


「派手な宣伝だな。次はどこの基地をぶっ潰すんだ?」


 ギゼラが笑い、兎歌が少し不安げに目を瞬かせる。

 マティアスは静かに頷き、レゴンは深いため息をつくしかなかった。


「そんなノリノリでやる計画ではないのだがな……」


 レゴンがモニターを切ると、会議室に重い静寂が落ちる。

 彼は疲れた顔を上げ、痩せた肩を震わせながら低い声で話し始める。


「さて……諸君。これからが本番だ。世界各地で巨大国家の侵攻部隊との戦いが始まる。東武連邦も、シグマ帝国も、ノヴァ・ドミニオンも黙っちゃおらん。過酷な戦いになるぞ。虐げられる誰かを守りたいなら、我々に休息はないと思え」


 烈火がニヤリと笑い、腕を組んで返す。

 ギゼラが豪快に笑い声を上げて続く。


「上等だよ、艦長。まとめて俺がぶっ潰してやるだけだ!」

「そーだよ! 敵が多けりゃ多いほど、派手にぶちかませるってねぇ!」


 兎歌が少し緊張した顔で、それでも笑顔を浮かべて同調する。

 マティアスは静かに目を閉じ、落ち着いた声で頷く。


「私も頑張ります。みんなでなら、怖くないですー!」

「私はただ、やるべきことをやるだけだ。どんな壮大な計画も、その積み重ねだからね」


 会議室の後方で控えていたクルーたちも、声を上げて応じる。


「俺たちだって負けねえよ!」

「そうだ、オレの故郷はエリシオンのおかげで侵略から逃れられた!」

「ウチの国は侵略で消えたんや。あの日のこと、忘れへんで」


 若い声が響き合い、部屋に熱気が満ちる。

 レゴンはその様子を眺め、疲れた目元に微かな決意を宿す。

 そして咳払いすると、拳を軽く握って宣言する。


「貴様らのその意気が頼もしいわい。ならば我々は覚悟を決めるしかなかろう。エリシオン共同連合として、戦ってやろう。未来のために!」


「「未来のために!!!」」


 全員が一斉に叫び、会議室に新たな戦いの火が灯った。

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