表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/246

機動要塞ロンザイ

前回までのあらすじ

 東武連邦のシェンチアンを撃破したのだ。しかし次の相手は機動要塞ロンザイだ!

 一方、東武連邦の前線部隊。

 巨大な機動要塞『ロンザイ』。

 龍か百足を思わせる鋼の巨体は、分厚い装甲に覆われ、腹部に無数の機銃を備えている。

 さらに頭部には荷電粒子砲、側面には大型リニアキャノンを備えた重武装である。


 その内部では、重々しい空気が漂っていた。

 艦橋に響くのは、緊迫した報告の声だ。


「先行部隊、全滅を確認。敵性コマンドスーツによるものと思われます」


 指揮官は小太りの男で、脂汗が額に浮かんでいる。

 彼の前に映し出されたのは、隊長機が撃破される直前に送られてきた映像。

 炎じみて赤い機体がシェンチアンを一瞬で屠る姿に、クルーたちが息を呑んだ。


「馬鹿な、3対1だぞ!?」

「何と言う性能だ……!」


 指揮官の太い指が震えながら卓を叩く。

 驚愕が広がる中、彼は瞬時に判断を下す。


「このままでは前線が崩れる。ロンザイを前進させろ。確実に叩き潰す!」


 グォゴゴゴゴ……

 要塞の駆動音が低く唸り、巨体が動き出す。

 村へと向かう鋼の影が、灰色の空の下で不気味に輝いていた。


~~~


 村の小さな広場に、粗末なテーブルが並べられる。

 烈火と兎歌は村人たちに囲まれ、湯気の立つスープや焼きたてのパンを勧められていた。

 兎歌はスープを一口飲んで目を輝かせる。

 烈火はパンをかじりながら、ぶっきらぼうに頷く。


「わあ、おいしい! こんな優しい味、久しぶりですー!」

「まあ、悪くねえな」


 村人の中年女性が笑顔で近づく。

 その周りには、褐色肌の少年や、腰の曲がった老婆が並び、食事を運んで来ていた。


「いやあ、お前さんたちがいなかったら村は潰されてたよ。どこの誰だい? 名前くらい教えておくれ」


 烈火が口を尖らせて答える。


「あー……烈火だ。こいつは兎歌。エリシオンってとこに所属してる。それ以上は面倒だから聞くな」

「えっと、悪い人たちじゃないんですよー? ただ、一応軍人なのであんまり話せなくて……」


 兎歌が慌ててフォローする。

 その言葉に、別の村人が首をかしげた。


「エリシオン? 聞いたことないねぇ。大国じゃないのかい?」


 烈火がスープを飲み干して肩をすくめる。


「大国じゃねえよ。俺らは俺らでやってるだけだ」

「わたしたち、まだまだ知名度が低いですねー……」


 村人たちは不思議そうに顔を見合わせるが、二人の素朴な態度に笑顔が広がっていった。


 和やかな空気が流れる中───兎歌の腕につけた携帯端末から、ノイズ混じりの通信音声が漏れ聞こえてきた。

 出撃時から、母艦である戦闘空母『プロメテウス』と回線を繋ぎっぱなしにしていたのだ。


『……合流を待たずにおっぱじめた上、地元民と接触したか。烈火のヤツ、また勝手な真似を』


 レゴン艦長の渋い声だ。

 続いて、どこか楽しげな声が聞こえてくる。


『問題ないよ、艦長。想定通りだ。彼らには各地で人々の好感度を稼ぐ、表の役を担ってもらう必要があるからね。烈火の派手な戦いっぷりと兎歌の愛嬌があれば、周辺一帯が味方になるはずだ』

『そう、うまくいくか? 空白地帯とはいえ、特定国家を支持したら大国は黙っておらんだろう』

『だからこそだよ。烈火たちが目立てば目立つほど、敵の注意がそっちに───』


 ブォオーン! ブォオーン!

 突如、通信の向こうでけたたましい緊急アラートが鳴り響いた。


『な、何事かね!?』

『艦長! 兎歌機の周辺に巨大な熱源反応! 敵の機動要塞です! 東武連邦の『ロンザイ』が接近中!』

『なんだと!? たった2機のために機動要塞まで出してきたのか……!?』


 通信越しの怒声とほぼ同時に。


 ズズン……ズズン……


 遠くから響く不穏な地響きが、村の地面を震わせ始めた。

 村の広場でスープをすすっていた烈火と兎歌は、遠くから響く不穏な振動に顔を上げた。

 兎歌はスプーンを落とし、慌てて立ち上がる。


「げッ……これ、機動要塞だ」


 腕の端末を起動すると、あきらかに巨大な反応が近づいてくるのが投影された。

 まちがいなくコマンドスーツよりはるかに大きい。


「烈火! 勝手に戦うから、合流前に要塞まで来ちゃったじゃーん!」


 烈火はスープの碗を置いて、ヘルメットを手に持つと立ち上がる。


「仕方ねーだろ! こうなったら、俺たちだけで倒すしかねえ!」


 兎歌が頬を膨らませて抗議する。


「もー! いつもそればっか! 烈火は血の気が多すぎるのー!」

「文句なら後で聞く! 行くぞ!」


 二人は言い争いながら、それぞれブレイズとリリエルへと駆け出し、機体に飛び乗る。 村人たちが呆然と見守る中、リアクターの咆哮が響き渡った。


「ど、どうしたんだろうねぇ……」

「また、敵が来るのかな」

「私たちにはあんな大きな武器はないからねぇ……」


 空白地帯の小さな集落にあるコマンドスーツと言えば、小型の農業用だけだ。

 無論、機動要塞を相手に使うだけ無駄であるのは間違いない。


 グォオン───

 烈火と兎歌は機体を再起動する。

 通信パネルからは、レゴンと作戦参謀の会話が聞こえていた


『な、何!? 我々の合流は間に合わんぞ!? ど、どうするのかね! このままじゃあの馬鹿どもが全滅してしまうではないか!』

『問題ないよ、艦長。烈火と兎歌の2機だけで勝てると判断したから送り出したんだ。彼らの実力なら、突破できるはずだ』


『ぬ、うぬぬぬ……!』

『じゃあ、後は二人に任せるといいよ』


『た、たしかに強いのは……知っておるが! しかし、敵は機動要塞だぞ!? わ、我々に何か策はないのかね!?』

『策は彼らが自分で作るよ。それより、今は自分にできることをするべきだ』

『ぐぬ……』


 通信パネルの向こうでは、レゴンがオペレーターに叫んでいた。


『全艦通達、空白地帯へ急げ! 間に合わんでも行くしかないぞ!」 』


 烈火は通信を聞き流し、ゆっくりと息を吐く。


「フゥー……」


 レーダーを見る。

 地平線の彼方から、巨大な影が迫ってきていた。

 東武連邦の機動要塞『ロンザイ』だ。

 龍か百足のようなその巨体が、砂塵を巻き上げながら進む。


 と、隣に立つリリエルからの通信。

 兎歌の不安げな声が響いてきた。


『烈火、あれ、すっごく大きいよ……本当に勝てるのー?』


 烈火は牙を剥くように笑い、荒々しく返した。


『勝てねえワケねえだろ! お前は援護に徹しろ。俺がぶっ潰してやる!』


 炎じみて赤い機体が唸りを上げる。


 キィイイイイ───!!

 ブレイズのプラズマリアクターが眩く輝き、赤い排熱が機体を包み込む。


 烈火が出力を引き上げたのだ。

 視界に映る敵影が急速に迫る。

 前方に展開するのは六機のシェンチアン。その背後で、ロンザイが巨大な口を開く。


「……ッ!」

 

 荷電粒子砲がチャージされ、空気が歪むほどのエネルギーが収束していく。


((マズい……村が吹っ飛ぶ!!))


 烈火は即座にライフルを抜き、砲塔に照準を合わせた。


「間に合えぇ!」


 引き金を引くと同時に、ブレイズのE粒子ライフルが発射され、ロンザイの砲撃と空中で激突!

 ドゴォオオン!

 轟音と共に大爆発が広がり、衝撃波が荒野を抉る。


 ~~~


 ロンザイの艦橋では、混乱が広がっていた。

 オペレーターが声を張り上げる。


「荷電粒子砲が相殺されました!」


 指揮官が目を剥く。


「馬鹿な、荷電粒子砲だぞ!? 一介のパイロット如きが!」


 続けて報告が届く。


「シェンチアン、五番機と三番機がロスト! 敵機の接近を確認!」


 指揮官の脂汗が滴る中、モニターに映る赤い機体が猛進してくる。


 烈火のブレイズは爆煙の中から飛び出し、両手の粒子ブレードを展開。

 瞬時にシェンチアン二機に襲いかかった。

 ───斬ッ

 一閃で胴体を切り裂き、もう一機の頭部を貫く。

 鋼の残骸が火花を散らし、烈火は次の標的を見据える。


 だがその背後――兎歌のリリエルが危機に瀕していた。

 三機のシェンチアンに囲まれ、兎歌が悲鳴を上げる。


「きゃあああ!」


 ダラララララッ!!!

 迂闊に突っ込んできた一機に、リリエルの両手に装備されたサブマシンガンが火を吹いた!

 無数の青い光がシェンチアンを貫き、爆発四散!

 だが、残る二機は間合いを取り、リニアキャノンを構える。

 ドゥンッ。

 重い砲撃がリリエルを直撃!

 粒子コートが光を放つも、凄まじい振動が兎歌を襲う。


『うわっ、揺れるー! 助けて、烈火ー!』


 動きの遅いリリエルが標的になる中、戦場はさらに混沌へと突き進む。


~~~


 キキキキンッ───

 ブレイズの左腕がシールドに切り替わり、シェンチアンからのアサルトライフルを弾き返す。

 金属音が響き合う中、右手が粒子バルカンに変形し、鋭い弾幕がもう一機を撃ち抜く。

 シェンチアンが爆発し、残りは二機!


 だが、その瞬間、ロンザイの砲塔から無数の砲撃が降り注ぐ。


「チィ!」


 烈火は舌打ちし、シールドを展開しながら後退する。

 コックピット内で、烈火の視線が揺れる。

 通信越しに聞こえる兎歌の悲鳴が気にかかる……だが、目の前のロンザイを放置すれば村に流れ弾が飛びかねない。


『くそっ、兎歌は自分で何とかしろ! 俺はこいつを止める!』


 額に汗が滲み、烈火は歯を食いしばる。


 一方、兎歌のリリエルは四足ダッシュで戦場を駆け回───否、逃げ回っていた。

 桜色の機体が砂塵を巻き上げ、敵を少しでも村から引き離そうとする。

 兎歌の声がコックピットに響く。


『ひぃー! やめてー! こっち来ないでー!』


 だが、シェンチアンは執拗に追う。

 銃撃の隙間を縫って一機が接近し、コンバットナイフが煌めく。

 兎歌は意を決して叫ぶ。


「リ……リリエルは! 接近戦でも、意外と強いー!」


 リリエルの馬のような前足が持ち上がり───強烈なキックがシェンチアンのコックピットを直撃!

 ズガァンッ!!

 瞬間的にE粒子が放出され、鋼が歪み、敵機は炎をあげながら背中から倒れ込んだ。

 1秒後、爆発音が響き、兎歌が目を丸くする。


「や、やったー!?」


 だが、喜ぶ間もなく、残る一機がリニアキャノンを構え直し、リリエルを狙う。

 兎歌はリリエルの中で身体を強張らせた。

 リニアキャノンの砲口が彼女を捉え、回避は間に合わない。

 粒子コートがあるとはいえ、無敵ではないのだ。


「や、やだぁー!」


 悲鳴が響く瞬間、横から飛んできたコンバットナイフがリニアキャノンを貫く。

 ブレイズが撃破したシェンチアンが爆散し、破片が飛び散るその瞬間、ブレイズは空中で腰のナイフを抜き、そのまま投擲したのだ。

 シェンチアンは死角からの攻撃に対応できず、リニアキャノンの暴発でよろめいた。


「……はッ!」


 兎歌は目を瞬かせ、危機を脱した瞬間に我に返る。


「烈火! ありがとー!」


 即座にサブマシンガンを構え直し、弾幕を残る一機に叩き込む!

 ズドォオオンッ!!

 煌めく粒子砲弾がシェンチアンを蜂の巣に変え、爆発が荒野に響いた。

 兎歌が小さく息をつく。


「ふぅ、やっと終わったー……」


~~~


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ