表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病室のすみで  作者: 高美
4/8

約束を交わす

「ーーあれ? 寝てる」


カーテンを開けると、正人君は座ったまま机に寝ており、その下に手紙みたいなものがあった。誰に書いているのか気になった俺は手を飛ばすと、気配を察した正人君は、ゆっくりと頭を上げ俺に気づく。


「...ん? 誠?」


 初めて名前で呼ばれ驚きながらも喜びを感じた。

目を擦りながら俺の存在を徐々に確認し、俺の目線の先にある手紙に気づいた正人君は、慌ててテレビ下の引き出しに入れた。


「誰に手紙書いてたの?」


「あ、ああ。ちょっとな」


 目を泳がせながら誤魔化す正人君を、不思議に思いながらも話題を変えた。


「ふーん。ね、さっき俺の名前呼び捨てにしてたこと気づいてた?」


「え!?」


「そのまま俺のこと誠って呼んでよ。俺も、正人って呼んでいい?」


「...好きにしろ」


 ダメだと言われると思ったが、予想外の言葉に嬉しくなり、遠慮なく正人と呼ぶことにした。


 そして今日は、俺の好きな海の話をした。


「海ってさ〜 波が日によって高さが違うし、天気が良ければキラキラしててね」


「...へぇー」


 また外を眺めながら、聞いているのかわからない返事をした正人だったが、沈黙の後続けて言った。


「海...もう一度見てみたいな」


 窓の外を見ながら遠くを見つめ、瞳がゆらゆらと揺れていた。俺にはその姿が悲しく映ってしまい、なんとか元気づけようと未来の話をする。


「病気が治ったら一緒に行こう! 俺のお気に入りの海連れてってあげる」


「...誠と一緒に行ったら楽しそうだな」


 俺との未来の話に正人は無邪気に笑う。今日はやけに素直だし良く笑うなと俺は喜びに満ちた。


「俺も正人と一緒に行けたら楽しいだろうな〜。 もうそろそろ夏になるから泳げるし、花火もできるよ」


「絶対連れて行けよな」


「もちろん! 約束するよ」


 俺達は強く...強く約束を交わした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ