↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/35

第三十二話「とっつき」

 オールの背を追い続けていると、とある部屋に案内された。中に入ると、そこは見渡す限りロッカーで埋め尽くされている。その一つ一つにネームが貼られており、だいたいは武器の種類が書かれている。その中でも、ネームに腕部と書かれたロッカーの前でオールは立ち止まり、扉を開けて中を漁る。

「アリスに似合うのは、スマートなのがいいよね」

「実用性があるのならなんでも」

「もう少し外見も気にしたほうがいいよ?」

「余計になお世話よ。それよりも、本当にここは色々あるわね。本当に駐屯地なの?」

 私の言葉に、彼の手の動きが止まった。振り返ったオールは、驚いたように声をあげる。そんな事も知らなかったのかと言わんばかりに。

「敵陣に突入する前に、もう少し情報収集をしたほうがいいと思うよ。確かに表向きには駐屯地だけど、実際は研究施設さ」

「研究……クローンの?」

「僕はそう聞いているよ。一度は破棄された場所なんだけれども、国を再建するにはこの施設がどうしても必要だと、オリジナルが言って聞かなかったそうだよ。本当かは知らないけどね」

 彼は再度ロッカーへと視線を移し、そこから一つ取り出した。黒檀に近い色で染められた義手が、私の目の前に姿を現す。肩まで覆うタイプの義手かと思いきや、何故か前腕に大きな長方形の箱が備え付けられている。

「これとかどうだい? 実用性が高いかと聞かれたらまた別の話だけど、きっとアリスなら気に入ってくれるよ」

「なんなのよ、その箱」

 手にとって見れば思ったよりも軽い。オールは一度咳払いをし、どこか誇らしげに語りだす。

「知る人ぞ知る、パイルバンカーという武装さ。充分すぎる破壊力を持っているけれど、癖が強すぎる代物だね。盾としても扱えるから、攻守にも優れているよ。他にも探せば色々あるけど」

「ふーん……それにするわ。けど、私は付け方を知らないわよ?」

「幸運にも接続部は残ってるみたいだし、あとは作った人が同じなら繋がるはず……。アリス、痛かったらごめんよ」

 そう言うや否や、義手を接続部に無理やり押し込む。何かが繋がる音と共に、電流が全身を駆け巡る様な錯覚を覚える。それに耐えられず片膝をついてしまうが、声をあげるのだけは我慢出来た。かつての義手を付ける際は意識を飛ばされていたが、こういう事だったとは。全身が悲鳴をあげているけれど、なんとか立ち上がる。体を少し揺らしながらも、新たな義手を動かす。

「一応動くわ」

「それならよかった。じゃあここからは別行動になるから、よく聞いて」

 オールは丁寧に、設備までの道を教えてくれる。彼が言うには、この部屋から割と近いようだ。あとは壊す手段とタイミングだけ。

「君が設備の部屋まで辿り着いたら機材に付けられているモニターを注視して欲しいんだ。そこにはオリジナルや僕達クローンの名前が書いてある。オリジナルが僕に干渉するとモニターに変化が起きるから、そのタイミングで機材を壊して欲しいんだ。それまで暇かもしれないけど、よろしく頼むよ」

「分かっているわ、そういう話だもの。ただ、何があっても知らないわ」

「構わないさ。アリスが支援してくれるだけで、僕は大丈夫だよ。それじゃ、生きてたらまた」

 私の髪を軽く撫で、部屋から意気揚々とオールは立ち去った。その後姿を見送りながら、無理やり接続した新しい義手を見る。握りやすい位置に、箱からグリップが突出する仕組みのようで、私の意志で収納も出来た。何度かそれを繰り返す内に、グリップにボタンが付いている事に気付く。夢中になり過ぎて気付かなかった自分が恥ずかしいが、直ぐに気を取り直す。このボタンは武装を箱から取り出す時に使うのだろうと予想した。それ以外で武器を箱から出す方法が思いつかない。早めに試し打ちしときたいところだ。

 強くグリップを握りしめ、私も部屋から出る。これからやる事は簡単だけれど、ここから先は単独行動だ。ゆっくりと、体に鞭を打ちながら目的地へと向かった。


 言われた道を進み、見えてきたのは重厚な扉が一つだけ。周囲には人の気配すら感じず、扉の向こう側から機械音が聞こえてくるだけだ。ドアノブに手を伸ばして回すが、扉は応えてくれない。箱の先端を扉に押し当て、グリップに備え付けられたボタンに力を込める。試し打ちするなら今だ。

 箱の中で機械が音を立て、数秒ほどそれが続いたかと思いきや、先端から何かが放出され、扉を木っ端微塵にする。箱を見れば、ボタンを押す前のように静かになっていた。あるのは重厚な扉がなくなったという事実のみ。

「……なにこれ」

 箱の後端から、少量の煙が放出されていた。それはかつての義手に取り付けられていた蒸気機関に通じるものがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。