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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 二学期編

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五十九話『笹井と本田、恋の御守り』


 一学期が終わった。


 夏休み中はこれといったことは無く、ただただ本田は自責に駆られていた。


 そして今日がその夏休みの最終日。


 夏休みの間に、精神を安定させるためでもあるが、椛島と何度も、何度も、連絡を取って話合いを重ねた。


 だが新たな情報は無い。


 椛島は『競技祭に出向けば情報を少しは得られ、君のいう【笹井】って女の子も守れたかもしれん』と言ったが、本田からすればもう後の祭りでしかなかった。


 笹井という重要な役割を失った本田は、その事実を引き摺りながらも、一組の同級生の長所・短所を紙に書き、誰をクラス委員に選定するかを組み立てていた。


 【除外】と書かれた場所には、朝日・飛鳥・榎本・福川・布田の文字が。


 志田・星野の名前は、志田だけ丸で囲まれ、【二組】と書かれていた。


 だが布施と時折メッセージアプリでやり取りをすると、布施はどうやら二人こちらに送り込むらしく、もう一人を本田は悩んでいた。


 (恐らく星野と繋がっているのはやたら仲が良い志田、できれば片方を二組に送りたいが星野は圧力に意外と対処する冷静さを持ち合わせている、反抗的な志田のほうが布施の威圧にあっさりやられる)


 と判断し、二組に送る一人に志田を選定する。


 (あと一人は朝日を送りたいところではあるんだがそうなると一組の戦力に欠ける、朝日はこっちだ)


 朝日の評価をした後、 (情報を得るために口が軽い奴をもう一人二組に送りたいが…そうするとこっちの情報を漏らす可能性がある、布田は駄目だ、馬鹿だから。となれば増田か鈴木だなぁ…だが増田は良いとして鈴木は暴力沙汰起こしそうだ)と考え、(ちょうどいいスペックなのは佐田か…)と決める。



 (んでクラス委員は…敢えての星野と言うのもありだが…茅野のようにうまくは行かなさそうだ…なぜなら茅野とは違い、志田というもう一人の面倒くさい奴が味方にいる…。朝日の友人の榎本をクラス委員に置くのも悪くなさそうだが…そうなると朝日と自然に会話させたりが難しいんだよな…それに二度もアンケートは使えない…かと言って多数決で俺にされても困る。つまり誰かに自分から言わせるしかない)


 「はぁ――――」


 本田は怠そうに溜息を吐いた。


 サブ端末で飛鳥の連絡先を見て、ふッと微笑んだ後、本田は何かを入力する。


 机に置かれていた笹井から貰った手作りのお守りは中身を取り出されている。


 そこには笹井らしくない可愛らしいメモ帳が折りたたまれた状態で飛び出していた。


 『がんばれ競技祭♡』


 と律儀にハートマークまで付けられて。


 (もう俺が見る前提で作ってる)


 笹井の能力の高さに苦笑しつつ、お守りの中にメモを戻した。


 メッセージアプリに何度も何度も夏休み中大量に送られてくる外出中のクラスメイトたちの写真。


 『本田も来いよ』


 『本田連絡寄越さないんだ』


 心配するメッセージが大量に届いていたが(友達でも何でもないのに…)と本田は溜息を吐いてそれらをスワイプした。


 いろいろ思考したものの、あからさまに精神状態が良くない本田は、二学期に不安を抱えていた。


 と、言うのも、幻聴のように、今も笹井の呻き声が薄っすら頭の中に残っている。


 八月も終わりがけなのにいつまで引き摺るのか、と自分でも呆れるが、解決法などなく、とにかく思考を組み立てるしか自分が落ち着く方法は無かった。


 …もう二度と失敗しないため。


 そう考え本田湊は自分自身の中に生まれた仮の存在でしかなかった。


 だが、段々と、本田湊本人に近づいていることに、自分でも違和感を覚えるばかりだ。


 本田のメガネケースの横に、常に黒い革製の手帳が置いてある。


 何処かで見た事があるような、縦型だ――――。




 一方、理事長室では、さくらが楚々辺に、


 「お見事でしたわ」と微笑みながら紅茶を淹れる。


 紅茶を飲みながら、「二人目のユーザーが追加されていた事は知っていた。お前が本田と取引していたことは後から聞いたがな。となればここから先は簡単。本田湊は笹井のぞみが【夜】に襲われると踏んでいた。茅野アリスに対する命令も、細かい時刻までは想定できない。時間を間違えた場合、護衛が出来ないからだ。何かあったら守れ。そのようなアバウトな指令を出していたのなら、こちらが新しく何時何分に理事長室に来なさいと茅野に命令してしまえば機械がどちらを優先するかはすぐにわかる。正確な時刻、場所を伝えなければ。機械は的確な動きが出来ない。茅野が【自立思考型】という前提で本田は動いたのだろうが、実際には細かい調整が必要。素人に扱えるような技術じゃあるまい」楚々辺はさくらに種明かしをした。



 「素敵ですお父様」と楚々辺を敬うさくら。


 楚々辺は、「ふん。本田湊もたいした事無かったな」とふんぞり返る。


 「笹井という重要なあいつの手段は処理できた。次は奴自身だ。奴自身を、光道教に取り込む。」


 さくらに伝える楚々辺。


 父の様子を見たさくらは、「ふふッ、そうやってお父様はよく言われますが。本田くんは只者じゃないですよ。どれだけ簡単そうな相手に見えても、警戒心は損なわないほうがよろしくて?」さくらの言葉に、楚々辺は、「娘の分際でよく口出しが出来る」と楽し気に笑った。


 「だって私は光道教の理念自体には中立ですもの。でも――――。光道教そこに私の座れる椅子があるなら…」とさくらは続けた後、「その時は。救済の女神パート2にでもなりましょうかね。」静かに口角を上げるのだった。



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