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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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三十六話『最高の掌握』


「朝早くに私が自らカメラを仕掛けに学校に行くのも不自然。かと言ってほかに二組や三組の生徒を分散させる方法も無い。だから私が…いや…一組の生徒で二組や三組の生徒と面識があった人が動いた。だから、カメラを仕掛けたのは二組と三組の生徒自身。しかもそれが【カメラ】だとは誰も思わない方法」


 説明する笹井に、増田は「ペンか」と勘付く。


「凄いわね、なぜわかったの?」と首を傾げる笹井。


 増田は「なんとなく」と腕を組みながら答えた。


 志田が、「そ、そんなんいつ買ったの」と笹井を感心しつつ訊ねる。


 笹井は、「いいえ。買ったわけじゃないわ。なぜそんなものを持っていたのかわからないけど。持ってきてた人から譲り受けたの。もう一本はその人の知人のもの。いつか使う事があるかもってご厚意よ」とある場所に視線を向けながら言った。


 本田は、「盛田か」と訊ねる。笹井は本田を見て溜息を吐いた後、「そうね」と答えた。


 茅野は、「でもカメラ仕掛けてどうするの? 別に他クラスの状況知っても今からじゃそんなに」と笹井の発言を疑問視する。


 笹井は、クラスメイトたちを見渡しながら、「追い上げていかないからカメラを仕掛けた、と言ったけど。私はあなたたちを心配していないわ、本当の目的はこっちじゃない」と言った。


 鈴木が、「なんだお前‼ 未達で俺たちが死んでもいいのかよ」と叫ぶ。


「人の話は最後まで聞きなさい。こっちにはもう既に万が一に備えたチート級の武器がある。どうにだって出来るように私はもう整えてあるの‼ それより対策を取らなきゃならないのは競技祭。それこそ本当に下手を打てば一組が終わりかねない、死そのものよりも悍ましい本当の恐怖が待ち受けてるのよ。だから今日、詐欺をやる前に競技祭に向けて全員に聞いて欲しい事があるの。これは私が帰り道、上級生から聞いたことなんだけど――――」


 一組の生徒たちに伝える笹井。

 真剣な目、声色、その場を支配するような空気。


(さすがだな)高揚感に浸る本田。


 笹井が全てを一組の生徒たちにに言い終わると、女子生徒が、「えぇッ⁉ ちょっと、ルールが残酷過ぎる…」と狼狽える。


「これは私が二年生から聞いた事実よ。でも、裏を返せば絶好の機会でしょ」


笹井は一組の生徒たちに鋭いまなざしを向けた。


「お願い出来るかしら。あなたたちの【演技力】に全てがかかってるわ」笹井の言葉の後、「これこそ星野が適任じゃねーの?」と鈴木が怠そうに言う。


 布田は、「せやけど、俺らも活躍するチャンスや‼」と微笑んだ。


 飛鳥が、「最強の秘密結社ダークアトランティスみたいだな⁉」と楽しそうに笑う。こちらは厨二全開。


 志田は、「私は賛成、ようやくなんか青春らしいこと出来る‼」大喜びの様子。


 だが茅野が、「青春って言ってもカジノだけどね?」と苦笑する。


 朝日がどこか満足気な本田を眺める。


 「なに、本田くん気にしちゃって、三角関係のよ・か・ん?」榎本に揶揄われる朝日。


「そんなんじゃないわよ」朝日は頬を赤らめながらそっぽを向く。


「じゃあ、そうゆうことだから。ここからはいつも通りよろしくね」笹井は髪を靡かせ教室を離れて行った。



 笹井の手に、紫色の宝石の指輪。


 本田は、(あいつそんなのしてたっけ)と眺める。


 榎本が、「さっそく依頼来てるわよ~♡ 一件目の調査依頼♡」とスマホを取り出しながら微笑む。


 一方で茅野、布田、佐田の対応係は、頭を悩ませていた。「どないしよ。星野おらんくなってもうたし」と嘆く布田。


 茅野が、「ねぇ、私に任せてよ」とコールが来ている学園スマホを手に取る。


「かや…の?」


 いつも積極的に動かない茅野とは違う言動に、布田が強烈な違和感を抱いた。


「いいのいいの。私が一組の生徒で居られるのは…もうそんなに長くない…なんだかそんな気がするんだ」


 茅野は感情を持ちはじめたような声で言いながらスマホを握りしめ教室を出て行った。茅野の腕を布田が掴む。「何を言うてるんよ。茅野は、俺らにとって…大切なクラスメイトや…」


 布田の声を聞いた茅野は、「ただの予感だって確率は四十五。」と伝え教室を出て行った。


 「茅野、なんだか様子がおかしいな?」茅野が去って行った場所を見て言う佐田。


「悪い、少し離れる」本田が言っては、「サボりか?」と飛鳥が訊ねる。


 本田は、「みたいなものだな」と素直に返し堂々と教室を出た。「自分がなんでも調査隊やれって言ったくせに」朝日は口を尖らせる。



 本田は電話対応する茅野を見つめる。「はい、失礼します。」電話を切った茅野は、「本田くん⁉」と目を見開きながら本田の名を呼ぶ。


「随分とスムーズにこなすんだな。住宅会社の営業を偽造した取引先とのやり取り。」廊下で話す茅野と本田。


 茅野は、「…ねぇ、本田くん、本田くんも自分の班の仕事があるんでしょ?」と学園スマホをポケットに入れながら本田から逃げようとする。


「ちょっと来てほしいんだが」


 と本田は嫌がる茅野を倉庫部屋へ連れ込み、壁ドンのような姿勢で追い詰める。


「へ?」


 本田を上目遣いで見つめフリーズする茅野。本田は茅野の首の後ろに手を伸ばす。そのまま服の中に手を入れた。


「な、なに⁉ ちょっと、やめて」と動揺する茅野。


茅野の首の中から本田は手を離す。「…やっぱりな」本田は口角を上げた。余裕そうな表情。


 茅野は、「あッ…」と本田に怯えるような表情を見せる。「茅野」本田は茅野の名前を呼んだ。


「―――――」


 本田からの命令に、茅野は瞬きして両目を違う色に変える。


《…わかりました。本田湊、あなたを第二のマスターとして登録します。》機械そのものの声質で本田に答える茅野。本田は、「わかればいいんだ」と言い倉庫部屋から去って行く。


 茅野は自分の胸に手を当てる。


(なに…わたし…は…理事長の…エージェント…じゃない…の?)記憶の混合に、茅野は呼吸を乱す。




 どこか清々しい顔で教室に戻った本田。朝日が、「どこ行ってたの」と本田に訊ねる。


本田は、「散歩」とだけ朝日に答えた。


 教室ではホームページ対応係の志田が、「やばいッ‼」と焦りの声をあげる。「ちょっとずつ検索サジェストに私たちの架空のサイトが怪しいって出始めてる‼」志田の報告の後、茅野と同時に帰ってきた笹井が、「そう」と志田に答える。


「注文住宅会社。高校生がやるにはちょっと難易度が高かったわね。」笹井は続ける。


「でも安心して。明日の授業から爆弾を使うわ。『最初からこれで良かったじゃん』と思わせるような。とっておきの…。【偽投資サイト】を‼」


 笹井が言っては、「偽投資サイト⁉」といいリアクションをする布田。


「ええ。実は以前、本田くん、茅野さん、佐田くんの三人でやってもらったものの強化版。クラスの全員それぞれに別の投資サイトを動かしてもらってクラス全員で運用するわよ。すごいスピードで稼げるから。安心して」


 笹井の案に、「すっげー…」と鈴木が目を輝かせる。


「星野さんにも誰かメールしといて」


 笹井が一組のクラスメイトたちに伝えてしばらくが経ったあと、キーンコーンカーンコーン。とチャイムが鳴った。



 同時に、出海奈が帰ってくる。


「自分の席にそれぞれ戻れ。」


 出海奈の指示と同時に、それぞれ自分の席に戻って行く。


「星野が発熱した、だが生憎この島には病院がない。星野は暫く養護教諭に診てもらう事になった。」


 出海奈の説明に、教室中の声が谺するように騒がしくなる。


「競技祭までに治るのか?」隣の生徒と耳打ちする男子生徒に、出海奈は、「競技祭まで時間どれだけあると思っている、大丈夫だ」と答えた。


 だが本田には、(不自然だな、嫌な予感がする)と出海奈の言葉が引っかかっていた。

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