三十四話『規格外の破壊神』
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夜。食事も終えた本田は風呂で「…」ボーっと考え事に浸る。 (そもそも…なぜ詐欺なんて脚がつくようなやり方で学園を運営するんだ…?それに…出海奈先生が俺たち生徒に助言するのも変だ。普通なら…楚々辺理事長側に出海奈先生がついているのなら…もっと別の…) 本田は考えるが、(茅野に関する仮説のせいで頭が回らない…)この場では一先ず諦めて浴槽を出る。
服を着て紺色の髪をバスタオルで拭く本田。 『俺ァ頭で考えんのとか苦手なモンでねぇー』 『で?お前さんはどーして最近そんなに俺を避けんのかな?』 『まッ、お前が俺ん事どう思ってよーが、俺にとってお前が最高の相棒である事には変わりねぇよ♡』 本田は脳裏で白髪の男の愉快な声や加減がない距離感などを思い出す。
本田は「この場にいないのにうるさいなお前は」と独り言を言って定期的に学生証アプリが入ってないほうのスマホに来る【おーい元気かー】などと言ったメッセージを見る。 (今日は通知五十件か)微笑ましく画面を眺める本田。 本田は机の上の炭酸飲料が入った缶を開ける。 青いデザインのコーラ。 ゴク、ゴク、と流すように飲んでは、伸びをする。 「あー」背もたれにもたれかかりながら本田は脱力した。
ピコン、と学生証が入ったアプリに笹井から通知が入る。 【本当にこれ競技祭やれるの】メッセージと同時に、現時点での今月の収入が記された紙の写真を笹井は送る。本田は「…はぁ」と溜息を吐きつつ、【現場のまとめ役はお前じゃないのか】とメッセージを送る。
笹井は【わかってるわよ】と少し怒っているような顔文字と一緒に返信する。 本田は「はぁ…」と呆れつつ、一度トークを全て既読にした。(スマホ二台体制にしといて正解だったな)と呟く。 一つは今手元にもっている白の端末。 もう一つは三年ほど前の型の少し古いデザインである青の端末。(研究所は二千二十六年設立だと書いてあった…少なからず学園が出来たのはそれより前…ん?待てよ、学園のほうが後だったとしたらどうなる…いや…だがそもそも…何について研究しているんだ) だが暫く考えてみるものの、(いや…どうみても…学園が先に作られてないと…)と迷う。
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本田は敢えてさくらに電話をかけようとするが、(否、本人に直接聞くのは悪手だな)と思い止まる。 そして非通知、つまり椛島の電話番号にかけた。 『こちら椛島』と電話を取る椛島。 「国の海洋エネルギー研究について知りたいんですが」と言う本田に、椛島は『私が知っていたならお前に研究所には行ったか、なんて言わないだろう…』と言うが、その後に椛島が『資料が残っていない』と答える。 「はぃ?」とつい変な声を出す本田。 「だって国…の…研究なら」と本田が問うが、椛島は『探すにも国の資料が無いんだ』と残念そうな声色で言った。 「消されたって事ですか」と本田は続ける。 椛島は『違う。最初から無い。全てはZ2の後、報道が少しずつ出た時期からしかない。それも不可解でお前でも知っているような情報だけだ』と答える。 「…それって…」と本田は、「本当に海洋エネルギー研究所として利用されていたんですか」と疑う。 『決定づけるものは何もない』と言う椛島。
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本田は「…」と小さく息を吸った後、「俺の仮説聞いてくれませんか」と本田の言葉を聞いた椛島は、『仮説?』と興味を持った。 「――――」 本田は仮説を椛島に全て話す。 椛島は『待て、その場合、お前はもう既に…』と声をワントーン下げる。 「…敵の掌の上だと」と本田は続ける。 椛島は、『盛田に学園側が接触した時点でお前も危なかったが、これはなかなか手厳しいな』と少し困った様子を見せる。 『本田、お前は[命を捨てる覚悟]があるか』と椛島は本田に問いかける。 本田は「まさか、まだ生きたいですよ」と笑った。 椛島は『…』と黙る。
「…部下を戦場に送り込む軍隊の上司みたいな雰囲気出さないで下さい、俺は…確かに奇跡を起こせはしないけど、状況を覆すのは[奇跡]ばかりだとは思わない」と何かを決心したような声色で言う本田。
椛島は『じゃあ何を』と本田に問いかける。
「破壊」
本田の返しに椛島は『ふッ』と笑った。
「こんな汚い[救済]なんて。救われない方がよかったって後悔させるくらいまで破壊してしまえばいい」
本田の言葉を聞いた椛島は『お前ってそんなこと言うキャラじゃないだろ』と面白がる。 「俺は真剣です。だってここは…俺の相棒の…一番人生で楽しい時期を乱した思想を持っている奴らが占有している可能性が高い島ですから」 本田はそう言うと、椛島の電話をブチ切りした。(…俺は…この学園に復讐のために来ている)本田が見下ろす視線の先には、海外旅行中の白髪の男と紺色の髪の男…つまり本田が至近距離で笑顔で映っているフォトブックの中の写真が、大切そうに机上に置いてあった。




