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『一組 ─今日からあなたたちは詐欺師です─』  作者: ミタラリアット
一年生 一学期編

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十一話『監視者の目』


 翌朝。監視役に「深夜、あなたちいらっしゃいませんでしたよね」と訊ねる本田。


 「深夜に外出したのか」と監視役の鋭い目が本田を捉える。


 「少しコンビニに」と言う本田。


 監視役のもう一人の男が、「深夜はロボットが学園中を巡回している。だから我々は眠る事が許される」と答えた。


 「お前ほど我々監視役と話す人間もいないぞ」と言う監視役の男に、本田は「…」と黙って俯く。


 「ロボットなんて学園内で見た事ありませんが」と言う本田に、監視役の男は「…」と少し発言を躊躇った。


 (なんだ…)と男の表情の切り替わりを観察する本田。


 「登校の時間だ」と言われては、「はい」と頷き、本田はスクールバッグを持って外に出る。


 (ロボット…ロボット…そんなのどこにも…)


 と思考を繰り返す本田。


 本田の脳裏は、校舎の監視カメラなどを思い浮かべる。



 正門前で、「おはよー‼」と本田に手を振る茅野。


 本田は、「嗚呼、おはよう」と答えつつ、茅野をジッと見つめる。


 「どうしたの?」と本田の顔を覗き込む茅野に、「いや、そういえばお前の事、生徒寮で見かけた事ないなって」と本田は茅野を見て呟いた。


 茅野は、「そりゃあね、私早寝だし、お友達の部屋とかだってあんまり行かないし、お食事も食堂使わずにお部屋だし」と続けて本田に笑顔を向ける。


 「でも、いずれは同じ女の子のお部屋に遊びに行きたいなって思ってるよ」


 茅野の発言に、本田は、「茅野」と茅野の名前を呼ぶ。


 「なに?」と茅野は首を傾げた。


 「今日、お前は何時何分に起きた?」


 本田の問いに、茅野は、「五時四十八分に目が覚めたよ」と答えた。


 「それがどうかしたの?」と不思議そうな顔を浮かべる茅野。


 本田は「お前がこの学園に入学した目的ってなんだ」と茅野に訊ねた。


 茅野は「うーん」とわざとらしく少し悩むような仕草をした後、「何も考えずに進学校ってだけでここ来ちゃったから」と答えた。


 茅野は下駄箱から上履きを取りながら、「本田くんってまるで…まるで…」と本田を見つめる。


 本田は、「?」と首を傾げた。


 「探偵みたい…」


 茅野の言葉に、「嗚呼…」と少し反応に困る本田。


 その様子を、茅野の真っ直ぐな瞳が捉える。


 仲睦まじい二人の様子を見た笹井が、「茅野さん?ちょっと本田くん借りるわよ」と本田の首根っこを引っ張って教室まで連れて行く。


 本田は抵抗を一切せず、スクールバッグの中に上履きを入れて引きずられながら笹井に連れて行かれる。



 誰もいない倉庫部屋に入っては、「本田くん」と笹井に顔を近づけられる。


 「なんだ」と無機質に答える本田。


 「私とあなたが組んでる事、それにあなたが偽サイトを作った事。生徒会に漏れてるんだけど」と言う笹井に、「嗚呼…それか」と本田は興味なさげに答える。


 「それか。じゃないわよ。私の事守ってくれるんでしょ。私、極力この学園を敵に回したくないの。私の身に危険が迫ってる事なのよ、説明しなさい」と催促する笹井に、「このクラスに裏切り者がいる」と本田は答える。


 「それに俺が偽サイトを作った事を生徒会が知っているとすれば、裏切り者は佐田か茅野」と本田は笹井に説明する。


 笹井は「佐田くんをシバけばいいのね」と指をポキポキと鳴らす。


 「…佐田がそうとは限らない」と言う本田に、「じゃあ茅野さん?そんな風には見えないけど」と笹井は本田に問いかけた。


 「とにかく佐田くんと茅野さんを連れて事情聴取」と笹井が言いかけるが、本田は「ダメだ」と制止する。


 笹井は「なぜ」と倉庫部屋で本田に視線を向けた。


 「疑わしいなら近くに置いといたほうがいいだろ?そっちのほうが監視もできる」と本田は腕を組みながら笹井に言う。


 「それじゃ情報をあっちに漏らされ続けるだけじゃないかしら」と本田の提案に苦言を呈する笹井。


 本田は笹井に、「笹井が生徒会を敵に回したくない理由はなんだ」と訊ねる。


 笹井は「…」と暗い表情を浮かべた。


 「言いたくないわ」と答える笹井。


 「本当に信頼がおける人にしか言わない」と言う笹井に、本田は「俺は信頼できないのか」と少し寂し気な目を向ける。


 「できないわね」と言う笹井。


 「まるで私を駒にしているみたいじゃない」と指摘する笹井に、本田は心の中で(あながち間違いではないが)と呟きながら感心する。


 笹井は「私が狙われないように精々対策してちょうだい」と本田に伝え立ち去って行く。


 その後ろ姿に、「誰かに命でも狙われてるのか」と話しかけると、笹井は背を向けたまま少し俯き、「ええ、そうね」と憎悪も込めたような言い方で答え、倉庫部屋から本田を置いて立ち去って行った。


 本田は「はぁ…」と溜息を吐きながら、夜中のうちにたまっていた非通知の着信履歴をボーっと眺める。


 そのまま上履きを履いては、教室へ向かった。



 張り出された紙には、【三百五十万】と収益分が掲載されていた。


 鈴木が、「三百五十万ってどういう事だよ⁉」と席から立ち上がりながら叫ぶ。


 「一人あたり十万円を…四時間で」と星野も目を丸くする。


 ザワザワと雑談が交差する教室に、出海奈が入ってくる。


 「はい静粛に」と出海奈は教卓の前に立ち生徒たちに語りかける。


 「うちのクラスが初日収益最高額だ。おめでとう、と言う会話からはじめたかったが、今日未明、島の奥で男子生徒数人が目撃された。誰かまではカメラでもわからなかったが、ネクタイの色から一年生だと言うことがわかっている。お前たちの中に該当者がいれば職員室まで来い」


 出海奈の言葉に、手を震わせる佐田。


 その様子を遠くの席から見つめる茅野。


 盛田は下を向き、マニュアルに目を向けている。


 「確定額は明日には振り込まれる。早いやつなら今夜にでも振り込まれるかもな。これを励みにお前らは詐欺を頑張ってくれ」と出海奈は生徒たちに言った。


 「今日の座学は国政についてだ」


 出海奈はホワイトボードに、【国政】と書き記した。

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