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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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第11章 生存をかけた戦い(3)

3

 ダジム・テルドールはその瞬間を見逃さなかった。


 ルシアス隊が塔の前門を突破し、塔内に進入した時だ。魔物たちの軍勢にいささかの動揺が見られた。門は塔の南側に位置している。突破を食らった方面の魔族軍の軍団長である黒騎士が、これ以上の突破を許すまじと、門の前に軍団を集結させるべく、号令をかけた。

 魔族軍の士気もまだまだ高い。

 即座にこの号令に合わせて、軍勢が左右から中央へと集結を開始した。


 しかし、この南側の軍の移動が、一つの「ほころび」を生み出す結果となった。


 敵南軍のみが南門の全面を守るべく中央に寄ったことで、その軍の左右、つまり、左の西軍と、右の東軍それぞれと南軍の間が若干手薄になったのだ。


(今しかねぇ――!)


 ダジムは右腕を振って各方面隊に指示を送った。

 赤色の線、王国軍への指示は対峙する魔族軍の左側面から中央へ。青色の線、冒険者軍への指示はこれとは逆に右側面から中央へ。

 つまりは正面の敵に対して左右から挟み込むように指示を出す。


 南の魔族軍が中央に寄っていることにより、まずは南方面隊が魔族軍の左右をついて挟み撃ちをかけた。これに伴い、東西の方面隊も南側が手薄になっているため、南側から側面を突き、これに気を取られ、南側に偏ったため、次いで、北側の側面にも人類軍がなだれ込む形となった。


 この結果、東西南北各方面の戦場は、魔族軍が左右から挟まれる格好になる。つまり、魔族軍の正面には人類軍の魔法士隊が控えるのみとなった。


 誰が叫んだか――。


「正面が開いたぞ! 全軍、前進せよ!」

という号令が魔族軍に伝わった。


 魔族軍たちは押し出されるように、正面の魔法士隊の方へと一斉に駆け出したのだ。


「行け行け! 前進だ! 進めぇ――! 正面の隊を突破しろぉ――!」

魔族軍の小鬼や大鬼、オウガの後ろから、黒騎士の号令が飛ぶ。


 魔族軍は魔法士隊の正面に迫りくる。

 魔法士隊と魔族軍がぶつかり、防御に弱い魔法士隊が蹴散らされるのも時間の問題かと思われたその時だった。


 正面に立つ魔法士隊が一斉に左右に分かれたのだ。

 そしてその裂け目から、横一列に並んだ十数騎以上の「悪魔たち」が行進を開始した。


――ガラガラ、ガラガラ……。


 規則的な金属がこすれるような音を鳴らしながら、「その悪魔たち」が姿を現した。


 陽光を反射し金色に光る胴体、回転する車輪――。

 そしてその車輪と車体の全面に無数に取り付けられた刃――。


 それが、各方面隊の後方から真っすぐに、塔へと向かって前進を開始したのだ。


――ガラガラガラガラ……。ガラガラガラガラ……。


 そいつらは徐々に速度を上げると、真正面から魔族軍に向かって突っ込んでゆく。


 もちろん、車輪が回転し前進するということは、それに取り付けられた無数の刃も回転する。 


 グ、グァ?

 グガガ! グガガ!


 迫りくる全身刃を纏った「悪魔たち」の存在に気が付いた、最前線の魔族軍が慌てて前進するのをやめようとしたものの、後方から雪崩なだれを打って押し寄せる自軍に押されて、ある者はたまらず前に押し出され、ある者は急ブレーキをかけたがゆえに後方の自軍に踏みつぶされ、そして、ついにその「悪魔」と対峙したものは、無数の物言わぬ肉片へと細切れにされた。


「――これは、ひでぇ……。だが、情けをかけてる場合じゃねぇんだ……」

ダジムは上空から各方面の戦場の様子を見て、絶句した。


 守護獣機ムンバサウロ――。

 アルが話していた「それ」はまるで大きな金属でできたサソリのような形をしていたという。何本か左右に生えた肢で地面を蹴り、歩き、跳んだらしい。左右の大きなハサミから繰り出される一撃は非常に重く、力強かったという。


 しかし、現在の人類の技術、ダジムの工房の技術ではそれを再現する力はなかった。かわりにもたらされたのがこの「守護獣()機」の設計図だった。


 車輪による自発走行を可能にした無人の戦闘車両。ただし、一度走り出したら、何かにぶつかって止まるまでまっすぐにしか走ることができない。それゆえに一度しか投入できない最終決戦兵器だ。

 全身を金属で作成された「守護獣源機それら」は相当の重量があるため、簡単には留めることは出来ない。まして、前面にも車輪にも刃が施されている。その上、突進速度は騎馬にも匹敵する速さだ。


 正面からまともにぶつかり合う形となった魔族軍はその悪魔の行進になすすべもなく呑み込まれていった。


「ひ、ひるむな! 押し留めよ!」

黒騎士たちは必死に魔物どもに号令をかけ、なんとか守護獣源機の行進を押し留めようとするが、次々と魔物たちは轢き殺され、切り裂かれ、消滅していった。


 たがて、守護獣源機が塔の壁に辿り着き、ぶつかってようやく停止した頃には、各方面の戦場には何とかその行進から逃れ出た魔物たちと、切り裂かれて瀕死の状態のものが残っているのみだった。


「俺の仕事はこれで終わったな――。最後の指示だ――」

ダジムは、『全軍突撃残党を処理せよ』の指示を送るべく、その右腕を振り上げ天に魔素の線を描いた。


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