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レジェンドオブシルヴェリア――Ⅳ伝説記~そして農夫の息子は伝説となった  作者: 永礼経


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第10章 魔族侵攻(5)

5

「父さん! ――その腕は!?」

アルが空中を浮遊する「乗り物」にまたがる父に声を投げた。


「よお、アル! 待たせたなぁ! いいだろうコイツ、これはカラクリだよ。カラクリの技術を応用して、義手を作ったのさ。でも、ただ腕がついてるだけじゃねぇぞ? 見てろ!」

ダジムが地上で待機しているアルに向けて吠えた。


 そうしてその腕を振るい始めると、戦場に魔素で描かれた「光の線」が現れる。


「全軍に告ぐ! こっからは俺が指示を送る! 指示は見ての通りだぁ! 奮起せよ! 隊列を組んで崩すな!」

と、ダジムの号令が響き渡った。

 その「光の線」は戦場の空に描かれた「矢印」だ。そしてその「指示」は各方面隊の頭上に明確に記されている。


「テルドール卿の指示に従え! 各隊、隊列を崩さず、空中の指示を注視せよ!」

各隊の大隊長たちが指揮下の兵たちに指示を送る。


 数瞬後、人族世界の隊列に変化が見え始める。

 先程の大規模な魔法攻撃によってばらついた前線が再構築され始めたのだ。


「ふん、さすがダジムだ。アイツの用兵に従ってれば間違いがない。アル、お前も時間を見つけてアイツの用兵を習うんだな」

と、ルシアスがアルを振り返って笑った。



 数分後――。

 前線は落ち着きを取り戻し、再度、構築が完成した。

 たびたびと魔族軍後方から放たれる魔法の「閃光」にも、魔法士たちの防御魔法が間に合うようになり、少しずつだが、前線をじわじわと塔の方へと押し込み始めた。


「アル、頃合いだ。待たせたな、ここからは別行動だ。――リュシエル、無事にアルたちを送り届けてやってくれ、頼んだぞ?」


 すでに竜変化してアルとケイティを背に乗せた竜族王の側近リュシエル・ミュルスは、天に向かって首をもたげ、ごぉと一吠えする。


「ダジム! こっちも準備オッケーだ! 指示をくれ!」

「ルシアス! お前にも働いてもらうからな、恨み言なら終わった後で聞いてやる、だから――」

「ああ、もちろんだ! 終わったら、ソードウェーブの港で祝杯を挙げるぞ!」


 二人の目と目が合うと、ダジムはその「右腕」を振るった。

 すると、新たな「矢印」が二本、空にすぅっと描かれた。


 一本はルシアス隊の為に。そしてもう一本はアル隊の為に。


「見えるな! このルートで突撃だ。今は「道」は見えんだろうが、必ず拓いて見みせる。俺を信じて、駆けろ! いけぇ!!」


「ルシアス隊! これより敵軍中央司令部に向け突撃を開始する! 我に続け! ――アル! 俺が着くまでに決着を付けておけよ! ――行くぞ! 全軍突撃!!」

言うなり、ルシアスの騎馬が先陣を切って駆け出した。


 アルはその背中を見送ると、竜に跨る仲間たちに視線を送った。


「さあ、僕たちも行こう! みんな! 用意はいいね!」


 竜に跨った7人の仲間たちがアルの声に反応を返す。


「リュシエルさん! 行きましょう!」


 アルの掛け声に反応するように、竜の翼がばさりと開かれ、ぶんと一振りすると、ふわりと空中に飛び上がった。


 ゴォ――、と一声吠えると、竜は瞬く間に上空高く舞い上がった。


 まさしく直線的に真上に向かって疾走する。アルたちは竜の背にしっかりと掴まって、振り落とされないようにしがみ付いた。


 数瞬後、体にかかる圧力が落ち着きを見せた頃、すでにアルたちは地表から遥か上空に位置していた。眼下には遺跡群とその周囲を取り巻く戦場が見渡せている。

 塔を取り巻く両軍の様子を見るに、人類軍側の包囲網がじわじわと押し込んでいるのが窺える。


 そしてその中央にそびえたつ塔の屋上部分に目標となる黒い影が見えた。


 あの姿、あの威圧感、間違いない。あの時の黒騎士だ。ついにアイツがこの世界に降り立ってしまった。


 こうなってはもう方法は一つしかない。

 あの黒騎士を殲滅するのだ。


 出来るのか? などと言う問いに答えなどない。


 やるのだ。


 やらねば、この世界は終わりを迎えてしまう。


 空中に浮遊しながら次の父からの指示を待つ。現在の指示はこの位置での待機を表している。

 恐らく、敵もこちらの動きにすでに気づいていることだろう。あとは降下の準備を整えて待つだけだ。

(必ず父さんがその隙を作ってくれる――)

 アルはそう信じて上空から戦況を見守っていた。

 

 その時だ。

 地上の両軍の中を駆ける一筋の「軍団」が見えた。その軍団の先頭には見覚えのあるあの大剣を片手に獅子奮迅の働きを見せる騎士がいた。ルシアスだ。

 その「軍団」は両軍をかき分け一気に塔の入口へと向かってゆく。


「アル! 親分だ! すげぇ! あの人が隊を率いてるのを俺ぁ始めて見たが、やっぱ、親分あのひとはバケモンだ!」

と叫んだのはレイノルドだ。


 それに対抗するように、魔族軍の動きにも変化が見られた。

 この一群を何とかして突破させまいと、ルシアス隊を押しとどめるように集まり始めたのだ。ルシアス隊の進軍は留まることを知らず、群がる魔物どもを次々と振り払い打倒しながらずんずんと塔の入り口に迫る。


 その刹那、

「アル、見て! お父様からの指示が――」

アルの腰に手を回して後ろに乗っているケイティが空中を指さして叫ぶ。見ると、父ダジムの描いた魔素による光の線が、すぅっと放物線を描いて塔の真上を指し示している。突撃の合図が来たのだ。


「よし! みんな、行くよ! アル隊、降下開始!」


 アルの号令を受けた4頭の竜と8人の冒険者たちは、その光の線をたどるように塔の頭上からまっすぐに降下を開始した。


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