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怒らないで・・・。
カチャ
「桃花~!」
「ママ・・・」
妃は、桃花を見るなり、泣きながらぎゅっと抱きしめる。そして少し離れると、両手で桃花の顔にパッと置く。
「どうして勝手にお家出て行っちゃったの?」と妃は桃花に尋ねるが、桃花はその問いに答えようとはしない。
「桃花。家に居るのが嫌か?パパとママが嫌いか?」
真剣な眼で、桃花を見つめながら魔王は尋ねる。すると・・・
「本で見た・・・世界が見たかったの。すごく・・・綺麗だったから。」
そういうと、桃花はベットの横に置いていた海の写真集を手にとって、魔王と妃に中の写真を見せる。
「パパもママも好きだよ。お家も嫌じゃない。柚子も来靭お姉ちゃんも悪くないの。悪いのは私。だから、パパ、柚子を怒らないで。」
そういいながら桃花は堰を切ったように泣き出した。妃はそっと桃花を抱きしめると、魔王とアイコンタクトをとる。魔王は、困った顔をしながら苦笑いの表情を浮かべた。
その日、魔王が桃花を叱ることはなかった。というよりも叱ることが出来なかった・・・。




