感じたことのない気持ち
桃花が眼を覚ますと、あの時と同じ高層ビルの夜景が窓の外に広がっていた。
その窓にドア側の景色が光に反射して視界に入ってくる。そこに映っていたのは、大事なくまの人形の傷を縫い合わせる緑虎の姿。針を持つ右手はしっかり包帯が巻かれている。
「くま・・・たん・・・。」
その声に気づいた緑虎は、静かに手を止め、桃花を見つめてこういった。
「桃花様・・・」
涙を流しながらにこっと笑う緑虎。桃花の心の中は、今まで感じたことのない感情で溢れ始めていた。
その時、桃花はあることに気づいた。その部屋に柚子はいなかった。
「魔王様と妃様にお伝えしなければ!」
「緑・・・虎・・・」
桃花は緑虎の服の袖を掴んで柚子のことを聞く。すると「別の部屋でお休みいただいています。」と緑虎は答える。
「どうして・・・同じ部屋じゃないの・・・?」
「魔王様のご命令ですので・・・。」
そういうと、緑虎は部屋から出て行った。
その頃
柚子はベットの上で眠っていた。自分をコントロールできないくらいの力を放出したことで数日間、発熱状態のまま泥のように眠っていた。龍鬼は、自らも重傷しているにも関わらず、自分のことは二の次で必死になって柚子の看病をしている。
そこに魔王が入ってきた。
「どうだ、柚子は・・・」
「まだ・・・眼を覚まされては・・・。」
「思いっきり暴れ倒したらしいな・・・。あの時以来か。」
「来靭の件以来です・・・ね・・・。」
「なぁ・・・。それより、お前も休め。ひでぇ怪我してんだからさ・・・。」
魔王は、だましだまし怪我を隠して看病をしている龍鬼のことを心配でならなかった。
子ども達と同じぐらいに・・・。
「しかし・・・私は柚子様の執事です。柚子様がどのような状態であったとしても、主である柚子様のお側を離れる訳にはいけません。」
「お前な・・・とにかく直せ、その怪我。柚子が見たらびっくりすんぞ。」
「・・・かしこまりました。」
コンコン・・・
「失礼します。」
緑虎は、部屋に入ると魔王に桃花のことを伝える。魔王は「そうか。」というと、妃にその事を伝えたかを確認しながら緑虎と一緒に部屋を出た。




