仲直り << マイネ >>
この話は、時系列としては、王立騎士団のヨーネスが島ギルドを攻撃する前の話になります。
王立騎士団のミーティングで、セルバートからヨーネスに島ギルドを潰すように指示が出てから、現実時間で1ヶ月半の時間が流れた(ゲーム内時間で、約1年間)時の出来事です。
ヨーネスがギルド評議会の雰囲気に促されて、島ギルドを攻撃すると宣言したことで、僕とヨーネスの仲は冷え込んだ。
フェアリーは僕に寄り添ってくれたくれたけれど、ヨーネスとは今まで通り挨拶などはしていた。
同じセルバートの屋敷で暮らしていたので、食事などを一緒にすることも何度かあったけど、僕はヨーネスにあえてこちらから話すことはなかった。
セルバートは屋敷にはほとんど帰らず、工業都市フレアの都庁に住み込みで政務を行っていた。
ヨーネスには、セルバートから度々出征の指示が来ていて、近隣のギルドと小競り合いを繰り返していた。
帰ってきたときは、いつも疲労している様子だった。
僕はフェアリーに「セルバートは人使いが荒いよね?」と聞いてみた。
「彼は一人で部隊を引き連れて敵対ギルドを襲撃しているみたいね。特にギルドメンバーと共同で動いている様子はないし。第一ギルドや平原ギルドのような有力なギルドとの抗争ではなくて、割合小さめのギルドを対象としているみたい。都市や私たちの拠点をいたずらに攻撃してくる、無法者集団を壊滅まで追い込むように言われているみたい」
「それはヨーネスから聞いたの?」
「そう。あなたがヨーネスと接しなくなってから、彼いつも一人だからね。あなたがログインしていないときに会えば、その時は話しているわよ」
「そうなんだ。ヨーネスはどんなつもりで、僕たちが知り合った島ギルドへ攻撃するなんていったのかな?僕をライバル視したからだけなのかな?」
「それ、私が言ったんだっけ?冗談よ。ヨーネスはあなたの成長を喜んでるわよ。彼はね。信頼できる人から、やれと言われたことはやる、そういう子だと思うわよ」
「僕にはよくわからないな。やりたくないこともやるの?」
「私たちはチームで戦っているからね。みんなが歯車の一つになって動き、大きな成果を上げる。それを理解している子だと思うけど」
「島ギルドの人たちは悪い人には見えなかったけど」
「そうね。でもこのギルドがこの王国の支配者になろうという時に、彼らは必ずしも味方になるとは限らないわ。鷹の目ギルドを強襲して戦争したという話も聞いている。彼らは大人しいギルドではないと思うわよ」
「そう言われてみると、そうかも知れない。組織的に動いていたし、マイノスさんにも、強いリーダーシップはあるのかもね」
「彼は急激に強くなっているわ。どこまで強くなるのか、セルバートも警戒してるわ」
「そうなんだ。僕がヨーネスを嫌うのは筋違いだったのかな。無視を続けて、悪いことしたかも」
「今度少し話してみたら?ヨーネスは帰還後も、次の攻撃先として山賊ギルドを指定されてるから、ここで仲直りしておかないと、また当分機会を失うわよ」
「わかった。そうする」
僕はそれからこまめに接続するようにして、ヨーネスがログインするのを待った。
そしてフェアリーから、今いるわよというメッセージが来たので、僕もログインして、ヨーネスに挨拶のスタンプを送った。
ヨーネスから「よお!元気にしてるの?」というメッセージが来て、僕は本当にホッとしたよ。
すぐにフェアリーも加えた3人のグループチャットを作って、「もちろんだよ、友よ。フェアリーも加えて話そう」と誘った。
「何か忙しそうだね。今度は山賊ギルド攻撃に行くんだって?また一人の行くの?山賊ギルドは一人ではキツくない?」
「ヨーネス、錫鉱山では、マイネを避難させるの手伝ってくれてありがとね。私一人じゃ無理だった」
「あれは酷い戦いだったね(笑)今回の話も、あれがきっかけって話だよ。マイネも無事で良かった」
「僕はあまり強くないから、何か足手まといになっちゃって、恥ずかしいよ。でもヨーネスが大人に混じって、役員やったり戦争やったりして、凄いなって思っていたよ」
「山賊ギルドも一人で行くの?あそこは結構強いわよ」
「いや、今度はね、暫定政権と王立騎士団の連合軍で行くみたいだ。フェアリーにも声がかかると思うよ」
「連合軍ってあるんだ。他のギルドと一緒に戦うとか、かなり高度な戦いになるね」
「それは楽しみね。私も張り切っちゃおっかな。でもマイネは戦争はもう少し強くなってからがいいかも」
「将校レベルは上がってきたから、部隊レベルが上がるのは比較的早いと思うよ。あと少しだよ、マイネ」
「うん、ありがとう。ヨーネスは連戦になってるけど、嫌じゃないの。疲労とかは大丈夫?」
「いつも帰還すると疲れているみたいだけど。マイネも私も少し心配してるわよ」
「戦争は緊張するからね。領主と違って、僕らはプレイヤー将校しか使えないから、NPCよりは強さはあるけど、死んでしまうと俺達自身への精神的ダメージは大きいからね。慎重に戦っているよ。戦闘が終わったら、ほんとぐったりだよ。でもその分、濃いゲーム時間を過ごしているよ。セルバートには感謝してるよ。戦争は嫌じゃないよ。それを楽しむためのゲームだしね」
「いいね。ポジティブだ。ヨーネスのそういうところ、尊敬する」
「セルバートおじさん、伝えておくね。もっと戦いたいって」
「マイネ。フェアリー。島ギルドへの攻撃に賛成したことは、ごめんな。せっかくマイネたちが接してきた人たちだったのに」
「ギルドの方針だから。大丈夫だよ」
「山賊ギルドの戦いのあとに、島ギルドへの遠征があるかもっていう話が出てる」
「うん。セルバートから聞いてる。まずは山賊ギルドとの戦いに集中する。先のこと考えても、山賊ギルドとの戦争で死んでしまったら、やる気を維持できるかわからないからね」
「ヨーネスが無事に帰ってることを願ってるよ」
「マイネ。私の無事も願って。たぶん、私にも招集がくる」
「山賊ギルドのヴァイスは、出遅れ参入の一番弱いギルドと自称してるけど、そういう人が最も危険だったりする。俺は今回も慎重に戦うつもりだよ。そもそも暫定政権が討伐できないから、王立騎士団に連合軍の要請が来たわけだからね」
「その慎重さがあれば大丈夫そうだ。フェアリーも無理しないで」
「ヨーネスって子供なのに、なんか大人びてるわね」
「一応、青年って言ってくれる?これでも・・・ま、その話はいいや。また話そう。今日はありがとう。部隊の回復や、アイテムの買い物済ませたいんで」
「こちらこそ。遠征の応援してるよ、友よ」
「その時はよろしくね」
良い時間だった。
ずいぶん長い期間会話してなかった気もするけど、実際はそれほどもない。
こうして仲直り出来たのも、運命のように、自然に出来た。
そしてこれが僕たちのあるべき形のように思えた。
僕はフェアリーに喜びのスタンプメールを送り、彼女の返信を待った。
彼女からはこんなメールが来た。
「良かったね。また彼との楽しい時間が戻りそうね。こういう時間は大切にしないとね。マイネは子供だからまだわからないと思うけど、こういう時間は永遠ではないし、楽しい時間ほど、終わってみると短いものだから」
僕は「何となくわかるよ」と返信して、次の彼女の返信を待った。
待ちながら、夜を明かし、その彼女からの返信は翌日で、「おはよう(太陽の日の出の絵文字)」が来て、そしてヨーネスからも来た。
僕は二人に戦いのスタンプと応援のスタンプを連続して送り、一日を開始した。
僕はもう一人じゃないし、とても良い友達を得たと思った。




