『剣と魔法の王国戦争』との出会い << マイノス >>
この国はコロナウイルスの流行を終えようとしていた。
第六派の流行はまだ続いていたが、入学式や入社式が行われ、行動制限のない日常が戻りつつあった。
私はこの日は休日で、部屋で寝そべり、スマホを見ていた。
ニュースサイトのゲーム広告をタップして、紹介文を読む。
ストラテジーゲームの、『剣と魔法の王国戦争』。
面白そうだとダウンロードして、プレイヤー登録した後に、私はもうゲームをやる気が失せていた。
この手のゲームはやり尽くしていた。
課金をしなければ、他のプレイヤーに攻められ続け、楽しめないことを知っていた。
ゲーム評価のコメントは、課金は優しいと書かれていたが、面白くない経験を何度もしていた私は、ゲームを進める気持ちにはならなかった。
「何か、面白いことないかなぁ」
何もする気がなくなり、大の字に床に寝て、開けた窓から流れてきた、春の風を感じた。
「私に会いに来て」
私は触れていたスマホを見返すと、ユーチューブが自動再生をしていたようだ。
どこかの五輪の開会式の映像で、美しい旗手と共に、聴いたことのあるゲームのテーマ曲が流れてきた。
それと同時に、ポップアップしたゲーム画面が再び立ち上がり、ゲームを再開するよう、私を催促した。
私は自分のスマホが、商業システムに支配されていることにうんざりしながらも、画面を見た。
私に会いに来てとは?
空耳か?
そんなメッセージは、どこにもなかった。
ユーチューブの動画からかなぁ。
「ま、いいか」
世界のどこかに、私を必要としてくれる人がいたらいいのに。
私は、まどろみ始めた昼下がりに、もう一度、座り直して、スマホを手に取った。




