ヨーネスとの別れ << マイネ 15 >>
王国評議会が終わって数日経った日、ヨーネスから「今日、アカウントを引き渡す」という連絡が来た。
フェアリーやセルバート王やザラにも、連絡したようだ。
引き渡す相手は隣のリゼア王国のプレイヤーだそうだ。
リゼア王国とはひとまず和平を結ぶことにことにもなっているので、敵対的な行為とは見なされなかったようだ。
セルバートはヨーネスに「喧嘩別れをする必要もないだろう」と言って、「ギルドチャットに別れの挨拶したらどうだ?」と提案したようだ。
ヨーネスも了解したようで、ギルドチャットにメッセージを書き込んだ。
「7か月前に、俺はこのゲームを始めたんだけど、こんなに充実したゲームになるとは思わなかった。王立騎士団の皆さんと出会えて、王国建国に至るまでの道を歩み、そして達成する成功の物語を共有出来たこと、心から感謝してます。セルバートの家で、ゴールネスのおっさんやイザベラ姉さんに出会ってから、二人が独立して立派にギルドを運営していることも、ここには二人はいないけれども嬉しいよ」
「スパイがいるかも知れんで」と、セルバートがゴールネスの口調で言うと、いくつかの笑いが起きた。
「セルバートの家が襲撃された時に戦い始めてから、ずいぶん戦ってきた。王国一の魔道士とセルバートに煽てられたこともあって、その気になって戦ったんだけど、負け戦もずいぶんあった。島ギルドや山賊ギルドに負けて、コボルド河の戦いでもルーデルに押されて、セルバートに助けられた。俺一人じゃここまでこれなかった。これまで励ましてくれた王立騎士団のみんな、一緒に戦ってくれたみんなにどれだけ感謝してもしきれない。マイネ、フェアリー、俺は本当にお前らとの時間が楽しかったよ」
僕はなんて返して良いか思いつかず、泣きべそのスタンプを送ってしまった。
フェアリーは「私たちも楽しかった」と言って、僕の気持ちを代弁してくれた。
そしてここで、ザラがヨーネスの今までの戦いを一つ一つあげていった。
近隣の小ギルドとの戦い、暫定政権との戦いや、錫鉱山での戦いまでもあげ、最後に王都攻略戦をあげて、そして偉大な数々の勝利への貢献に感謝を述べた。
感動がギルドチャットに満ちると、ザラは「多少、こき使われた感はありますが(笑)」とオチを付けた。
セルバートが「夢があるのだろう?叶えろよ」というと、ヨーネスは「変わらずに注文の多いボスだ」と言って、みんなを笑わせた。
「俺はサッカー選手になりたいんだ。大きな怪我をして1年休んでいたんだけど、そのおかげで怪我は治った。またサッカーに戻る。幸いにこのアカウントをかなり良い値で買ってくれる人がいたので、ここでこのアカウントとはお別れになります。今までありがとう」
シャルルが「錬金術の魔法を習得しようしたお前も忘れないよ(笑)」と言うと、「忘れて(泣)」とヨーネスは言って、笑いのスタンプを押した。
「ロマール王国は建国された。これからは他国との戦争が始まる。俺、ヨーネスも現実世界で戦いに挑む。俺の戦いは現実世界に戦線を拡大する。俺たち勝利を!必ず勝利を!今までありがとう」
そのメッセージの後に、セルバートは戦いのスタンプを押した。
続いてザラが戦いのスタンプを押した。
シャルルが、僕が、フェアリーが、王立騎士団のメンバーが次々に戦いのスタンプを押し続けた。
僕の中学生としての日常は、一つの転換点に来ていた。
部活漬けの夏休みが終わり、二学期が始まり、10月いっぱいで最上級生の3年生が部活を引退した。
今まで走らされていたばかりだった野球部の練習だったけど、2年生と1年生だけになったら、野球の本格的な練習をするようになった。
これは僕にとって、更なる悩みの種になった。
僕が野球の超初心者というのが、毎日隠せなくなくなっていったからだ。
早い打球など到底取れないので、外野を守ることにしたんだけど、外野は肩が強くないと出来ないんだよ。
僕は体が弱いので、外野から投げるときは、山なりで投げないと内野まで届かなかったんだ。
これはあまりにみっともないので、もう毎日のように罵声を浴びた。
その罵声は部活だけではなくて、日常のクラスにまで話が行って、運動部の人からあいつ野球部で使えないらしいという評判が立っていた。
僕は部活だけでなく、クラスでも最下層に沈みつつあった。
ヨーネスがプロのサッカー選手を目指して動き出したときに、僕は虐められっ子になろうとしていた。
ゲームだけが僕を救ってくれた。
僕の自尊心を守ってくれた。
僕はゲームの中で、王国最強ギルドに所属し、ヨーネスとは別れることになったけど、フェアリーやセルバートらと共に、成功への道を駆け上がっていた。




