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ソード帝国 vs 騎士団殺し  作者: 鷹山ジン
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ぶっちゃけアリえねぇ!

「おい、マジでこんな事していいのかよ…

うちに配置される新型ハンターだろこの中身…」


二人の騎士がこそこそと話している。


「当たり前だろ。機械化されたハンターって噂らしいが、

そんな奴が配属されたら俺らの仕事がなくなる。

その前に沈めちまうんだよ」


「でもちょっと可哀想な気も…

勝手に生み出されて、人間の都合で捨てられるって…」


強気な騎士が頭をはたく。


「アホ!こいつは噂のハンター狩りに喧嘩売って

おめおめと逃げ帰ってきて改造された奴って事らしいぜ。

こんな落ちこぼれ、捨てても誰も文句は言わねえさ。」


ガタッ


「ひっ!?」


金属コンテナが揺れた。


「ふん。まだ起動してないのに怒りやがったか。

危ない野郎だ。さっさと沈めて処ぶ…」



強騎士の胴体が、コンテナから生えた腕に貫かれる。

鮮血を吐いて即死する。



「ひええええええ!?」



「だれが落ちこぼれだと…?」


「えっ…ひ…うぐ…」


弱騎士も手で首を掴まれて声が出せない。


グギリと鈍い音がした。




「ウオオオオオおおおおおおおおおお!!!!




ハンター狩りめええええええええええええ!!!!」









深夜。

電気の町から三人はそっと脱出する。


「よく見たらネオンばっかでいいところだな。田舎にしては。

ちょっと観光していきたかったぜ」


ユウサクが愚痴を漏らす。


「まぁもっと刺激的な街に来れるだろうよ。おれについてくれば。

危険度も増すがな。


これで倒した使徒はやっと一体…道のりは長いな。」




「あの…シゲルさん。」


ほぼ裸にジャケットを羽織っただけのアオイが口を開く。


「なんだ?服ならそこらに干してあるの調達してやるから

ちょっと待ってな。」


「いえ…あのメガネの白衣の人も…コウモリの使徒なんですよね?

あの人のもとに預けていて、母は大丈夫でしょうか?」


「ああ、あいつは特別だ。

馬鹿兄二人と違って頭が回る。

だから戦死したフリして親父の研究所に来て助手してんのさ。」


「全部の上級ハンター…使徒を倒すってことでしたけど、

やっぱりあの人も…?」


「ああ、そうだな。

あいつはあいつでじじいの血を吸っていたのをおれはハッキリ見た。

いずれケジメはつけなきゃならねえ…と思う」



「無敵の戦士にも弱点があるんだな。

ちょっと共感したよ。」


ユウサクがポンと肩を叩く。

うざったそうに手を払うシゲル。


「おれは自分に線引きして戦ってる。

騎士じゃない奴に原則手は出さないし、人を喰ったハンターはいいやつでも殺す。

そもそも人喰いハンターに良心は残ってないだろうがな」


「どういうことだ?」



「一度人肉を喰った人機融合ハンターは、急激に凶暴さが増す。

人間を見下して家畜以下としか見なくなるのさ。

じじいを喰った使徒ってのは本当はもっと沢山いた。

その中で更に喰らいあいをして残ったのが13の使途ってわけだ。

蟲毒だよ。


コウモリ3号…ユダは血だからギリギリセーフと言えなくはない。まだな。」




「ああ…人肉の味を覚えた動物は凶悪になるっていうみたいな…」


「そういうこと。

まぁ親父の立てた仮説がマジなら、ウィリアムの魔王城には

ほかの12使徒を全部殺さにゃ入れん。」


「どういうことですか?」


「ウィリアムは12使徒の体内に、キーを埋め込んだらしい。

ユダの体をスキャンして存在は確認してる。」


「…キーだけ取り出して殺さないって手はねえのか」


「現状難しいだろな。

心臓の中枢に埋め込まれてるって話だ。

無理に摘出しても死ぬだけだと思う。

親父がうまい事いい方法を発明できればいいんだがな。


おれだって、ユダを殺したくはねぇよ。」


意外な心情の露吐に、二人は驚愕した。


「…あいつは親父の助手をやってくれてるし、人を襲った事も知る限りない。

せいぜいが、匿ってる奴らから

少しづつ献血してもらってその血を飲む程度だ。

あとは滅多にないが、紛れ込んできた野生ハンターの撃退が仕事だ。

その為に技を磨いてる。

本当におとなしくて人間臭い奴だよ…」



「し、しかしお前にしては今回王を倒すのが遅かったな。

よほど強かったのか?」


「城出る時に見なかった?ミイラ化した騎士どもの死体。

どうやら毒で洗脳して騎士団の統率を図ってたみたいだな。

んでおれが致命傷を与えたら、触手で毒の回収と一緒に

血や体液を吸ってパワーアップしてたらしい。


おれにいわせりゃ、あいつの方がユダよりよっぽど吸血鬼だよ。」


「う…」


アオイが口を抑える。


「どしたアオイちゃん!?やっぱあの触手にタマゴでも産み付けられた!?」


「い、いえ、私、シゲルさんの拳銃で触手を撃ちました。

騎士団の人たちの血とかも撃っちゃった…

ってことですよね。」


「泣くな。生きるためだ。正当防衛だ。

お前が無抵抗でやられるよりよっぽどいい」


寝静まった民家の外から、下着や肌着、ローブなどを漁る。


「これで勘弁してくんな」


数枚の札と硬貨を置いていく。


「な!な!やっぱちょっと泊まっていかねえ!?

てかお前も戦いで疲れてるだろうから充電しなくてええん!?」


「ここの王は電気クラゲの特性を持った使徒だった。

つまりこの街の過剰な電気装飾は、本来はやつのおやつの副産物だったってわけだ。

それ知ったらもうここの電気は吸えねえよ」


「ま、確かに。

人の食いかけのメシなんか食いたくもないな。

気持ちはわかる。」



軒先のパン屋に放置されているパンを数個取る。

代金をそっと置いていく。


「今のうちに歩きながら食っとけ。

街を出たらちょっと救援を呼ぶ」


「きゅうえぇん?

そんなんあるならもっと早く呼んでほしかったぜ!

あ、騎士団支給のハムあるよ。アオイちゃんもどう?」


もぐもぐと楕円形のパンを頬張りながらぶつくさ言う。


「あ、いただきます!」


「お前らの考えてる救援とは違うんだよなぁ。


あ、ユダ。真夜中にすまんな。

アレに飲み物いくつか載せて転送してくれっか?」


『私は夜行性なのでご心配なく。

では5分ほどお待ちください』






外。



一台のバイクが泊められている。



「おお、バイク!

ビンボー騎士じゃまずお目にかかれねぇブツ!」


「悪いがおれの相棒だ。お前へのプレゼントじゃあない」


搭載されている水の容器を二人に渡す。


「喉乾いたろう。口んなかパサパサになりきる前に飲んどけ」


「タダ!?」


「お前が味方ならな」


二人とも、ゴキュゴキュと勢いよく飲む。


「ユウサクはおれと2ケツ。

アオイはサイドカーに乗ってくれ。」


「これ名前なんて言うんだ!?」



「…ハンタージェノサイダー。

ノリで今つけた。」





ブーン





軽い休憩後に、エンジンをかける。

森の中を走る。


飛び掛かってくる小型獣ハンターはアオイの銃でけん制し、

しつこい奴はシゲルの電撃で焼いた。


「うまそうに焦げやがるなあ。ハンターって食えねえの?」


「機械まみれでまずいぞ。知らんが」






次の町。



「少し寝るぞ。敵が寄ってきたらこいつが排除してくれる」


バイクをポンポンと叩いてガクッと眠りに落ちる。


「よっぽど疲れてたんだな。俺らも寝よう。

アオイちゃんは平気なのか?」


「何がですか?」


「触手に裸にされるとか、危ない目にあったりしたのにさ。

俺の娘だったら、速攻で安全なとこに送り返すよ。」


「もっと小さいころに、帝国の学校でいろいろと学びました。

ウィリアム王の征服の歴史や、偉大さについて。


でもあの町で暴行を受けそうになった時に考えたんです。

帝国はよくないことをしているって。

私の家もお父さんを騎士として取られて、お金とかの保証もなし。

そういう家がきっと世界にたくさんあるはずです。

殺しはいけないけど、ウィリアム王を倒すか説得してよくできれば…って。」


「子供なのによく考えてるなぁ。

俺なんか毎日がデンジャラスだよ。

偉そうな上級騎士には馬鹿にされてたし。団長とかね。

でも帝国の実権握ってるのが騎士団とハンターだからねぇ…


あいつがクモ王を殺してくれた時、悪いけどちょっとスカッとしたんだ。」


「いじめられてたんですか…?」


「王はいい人だったよ。いじりのノリで騎士を気まぐれに殴ってたりしてたけど。

騎士の階級で差別はしなかった。

多分力で劣る第二世代だからなのかな…

でもやっぱり…民間人いたぶるのはよくないよ…」


「自分勝手に見えて、いい人なんですね。ユウサクさん」


「まぁ妻子守る為に騎士団に自分から入ったからね。

優しいっていうか、ヘタレだよ…

自分でもわかってんだよね。」





昼。


いくつかの小型ハンターが散らばっている。


「おは…わぁ!?」


「アリ型か。獣じゃないとは珍しいな」


「分析してる場合か!?」


ユウサクは動揺している。


「こいつが片づけてくれてたんだ。別にいいだろ」


薬莢と、地面の焼け焦げた跡がある。


「へへ…武装バイクかよ。

身震いするね。」


「おれの同行者には攻撃を加えないようになってる。

親父とユダのセッティングのたまものだな。

いくぞ」



その時、通信機のディスプレイが光った。


『おはよう。カブだよ。』


「親父」


『単刀直入に言うよ。

その町、人間の気配がない。』


「騎士もか?」


『わからない。使徒の襲撃にあったのかもしれない。

確かその町にハンターとしての王はいなかった気がするんだよ。』


「疎開じゃないスかぁ?

ハンター殺しのうわさが広がったとか」


『真偽はわからない。

でも、十分注意して侵入してね。』


「やれやれ。宿を取れるかと思ったらこれか。

親父、ありがとな。

ユダが寝てるならよろしく伝えといてくれ。

あと、母さんにも無事っつっといて」


通信を切った。


「…まずおれが先行して城に忍び込む。

お前らはジェノサイダー付近で待機。


子機を渡しとくから、なにかあったら連絡を」



疾風のように去っていった。


「はや…

アオイちゃん、ちょっとだけ…ちょっとだけ…ネ?

町を見物していこうよ」


「ユウサクさん!観光に来たんじゃないんですよ。」


「だいじょーぶ。いざとなったら俺が守ってやる。

俺をお父さんと思ってくれ!」


サムズアップで答える。

アオイは折れた。







「…なんだこりゃ」



人が一人もいない城内。


なにかの皮膚や残骸は見て取れる。


「…やはり使徒の襲撃か?

あのアリハンターどもにやられたのかね」


背後に気配を感じ、左腕をめり込ませる。


「ぎいいいいいいいい!!」


頭に触覚を生やしたアリ型ハンター。

体には鎧をまとっている。


「死ねッ!」


めり込んだ腕を動かし、頭を引きちぎる。

緑の体液が飛び散る。



「まさか…」




「ぎぃぃぃぃぃ…お前か…コウモリから報告があったハンター…」


物陰で気づかなかった。

ひときわ大きいアリがこちらを睨んでいる。

尻が妙にでかい。


「デカブツ!これお前の仕業か!」


「そうだね…気づくのが鈍いんだよ。

もうこの町の人間は我が支配下だ。」


大アリはシゲルに嚙みつこうとする。

反射的にパンチをお見舞いする。




「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!」



「おいおい、まだ元気の1ボルトも流してねえぜ?」



大アリの金切り声に応じて、王室入口にワラワラとアリ兵士が集まってくる。

全員、鎧持ちだ。




「チッ…



アオイ!ユウサク!町からジェノサイダーで離れろ!

アリの巣だ!!」









ア〇ゾンマンションかな?

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