第267話 おいらの町の新名所?
「おお、今日からここが俺の家か…。
一年半前にこっちに飛ばされてきた時は、とんでもないところだと思ったが。
十六歳で、キレイな嫁さんとこんなでかい家持てるなんて、俺って人生勝ち組じゃねえか。」
「タロウ君、素敵!
こんな立派なお屋敷に住めるなんて夢みたい。
お姉ちゃん、頑張ってサービスしちゃうから期待してね。」
新居を前にして、シフォン姉ちゃんがタロウに抱き付いて、そんな会話を交わしてた。
ここは、おいらの家の隣にあるお屋敷の玄関前だよ。
なんと、タロウとシフォン姉ちゃんは、おいらの家の隣に引っ越してきたんだ。
何でも、にっぽん爺に教えてもらったマットプレイにシフォン姉ちゃんがハマっちゃったらしくてね。
お風呂のある家をシフォン姉ちゃんが強請ったらしいよ。
買ってくれたら、毎日、マットプレイを楽しませてあげると、タロウの耳元で囁いたみたい。
勿論、タロウが逆らえないように、大きな胸の谷間にタロウの腕を挟み込むようにしてね。
それで、タロウは一念発起してお風呂付の家を購入することにしたんだ。
タロウは、毎朝、おいらと一緒にトレント狩りをしているから、十分なお金が貯まったみたいなの。
昨年、王都で露店を開いた時からだから、父ちゃんよりずっと稼いでいるんだ。
役場のお姉ちゃんに聞いたら、お風呂が付いている家っておいらが住んでいる一画しかないんだって。
タロウは、シフォン姉ちゃんと二人だからあまり広い家は要らないと言ってたの。
それで、お風呂が付いている中で一番小さな家を買ったんだけど。
それでもこの一画はお屋敷街だから、敷地、建物共においらが住んでいる家の半分くらいの広さがあるよ。
おいらもオランと一緒に家を見せてもらったんだけど。
二人で住むには持て余すくらい部屋数が多かった。
アルトの話では、そのうちタロウの魂もこっちの世界に同化して子を成せるようになると言ってたけど。
十人くらい子供が出来ても十分な部屋数だった。
そして、シフォン姉ちゃん、待望のお風呂だけど…。
「洗い場スペースにこれだけの広さがあれば十分よね。
マロンちゃん、預けておいたアレ、出してもらえる。」
おいらはシフォン姉ちゃんの言葉に従って洗い場にエアマットを出したよ。
エアマットって、厚手でツルツルの布地の中に、膨らませた『ゴムの実』の皮を大量に詰め込んだモノだけど。
『ゴムの実』の皮を大量に膨らませるのって大変でね。
引っ越したらすぐに使えるようにって、シフォン姉ちゃんとタロウの二人で数日前から膨らませていたみたいなの。
今日、ここへ引っ越して来る時に、完成したエアマットを『積載庫』で運んで欲しいと頼まれたんだ。
軽いモノだけど、縦横に大きいモノだから嵩張って持てないってね。
さっそく、シフォン姉ちゃんは今晩から使うつもりらしいよ。
「久しぶりに、今晩は眠らせないわよ。
頑張ってね、タロウ君♡」
と言って、シフォン姉ちゃんはご機嫌そうだったよ。
ただ、オランの目には、洗い場にエアマットを敷いたのが意味不明なようで…。
「何やら、ベッドのようなモノのようじゃが。
風呂場にこのようなモノを敷いて、一体何に使うのじゃ?」
不可解な顔で、シフォン姉ちゃんに尋ねたの。
「オランちゃんって今、十歳だっけ?
マットプレイを楽しむには、まだちょっと早いかな。
あと五年したら、お姉ちゃんが実地で教えてあげるね。
同時にオランちゃんのチェリーも貰っちゃおう。」
なんて言って、シフォン姉ちゃんはオランの問い掛けをはぐらかしたの。
今この場で教えたことがバレたら、きっとアルトにお仕置きされるからって。
なるほど、おいら達の教育に悪いことなんだね。
でも、五年後じゃ、オランはもう王宮へ帰っちゃってるよ…。
オランのサクランボが何の関係あるのかも意味不明だし。
**********
その翌朝、トレント狩りのために迎えに来るアルトを待っていると…。
「うーん、スッキリ!
タロウ君、素敵だったわよ。
久しぶりに朝まで燃えちゃったわ。
お風呂場をきれいに掃除して待ってるから、早く帰って来てね。」
顔をテカテカと光らしたシフォン姉ちゃんが、タロウを見送りに出て来たの。
一方のタロウはと言うと…。
「あやつ、何やら、朝から随分と疲れておるのじゃ。
あれで、トレント狩りなどしてケガせんのじゃろうか。」
オランの言葉通り、げっそりとやつれた雰囲気に見えたよ。
まあ、シフォン姉ちゃんが嫁いできた頃は毎朝あんな感じだったから平気じゃないかな。
おいらがそう返答すると、オランは「あやつ、見かけによらぬ強者なのじゃの。」って感心してたよ。
そんな感じで、タロウとシフォン姉ちゃんが隣に引っ越してきたんだ。
それからしばらくして。
妹のミンメイをおいらが抱えるようにしてラビに乗せていると、…。
「キャー! 見て、見て! 可愛い!
小っちゃな耳長族の女の子がウサギに乗っているの。」
「ホントだ、可愛いわね!」
屋敷のフェンス越しに見知らぬお姉ちゃん達がはしゃいでたよ。
「おい、こっちの家にはキレイな年頃の耳長族の娘がいるぜ。
耳長族ってのは、噂に聞く通りのベッピン揃いだな。」
「ああ、俺も、あんなきれいな嫁さんが欲しいぜ。
しかも、ずっと若いままなんだろう。」
今度はタロウの家の庭を覗いている兄ちゃん達の声が聞こえたの。
広くて、二人じゃ持て余すと思っていたタロウの家だけど。
実際、住み始めてみたら、そんなこと無かったの。
シフォン姉ちゃんがにっぽん爺と組んでしている服の仕立ての仕事。
以前からシフォン姉ちゃんの手に余る分を、耳長族のお姉ちゃんに外注に出してるんだけど。
それが大繁盛で忙しくなっちゃって、耳長族の里との往復時間すら惜しむ事態が起こるようになったの。
最近は忙しい時に、耳長族のお姉ちゃんが泊まり込みでシフォン姉ちゃんを手伝うようになったんだ。
何だかんだで、月の半分くらいは耳長族のお姉ちゃんが泊まり込んでいる状態になっちゃった。
それで、部屋がけっこう埋まっているらしいの。
そして、それは町に滞在している人にも噂として広まったんだ。
この区画へ行けば、耳長族が生活してる様子を見ることができるってね。
アルトが、耳長族に手を出す不心得者を警戒して、町を出歩かせなかったから。
今までは、『STD四十八』や騎士団の公演の伴奏をしている姿しか、耳長族を見ることが出来なかったの。
そんな中で、耳長族のお姉ちゃんの日常姿を見ることが出来ると広まったものだから。
おいらの屋敷とタロウの屋敷を覗いて行く人が増えたんだ。
フェンスの外から声が聞こえたお姉ちゃんや兄ちゃん達が、それだね。
その中には、町に住む人だけじゃなく、買付けの商人や興行の見物客みたいな町の外から来た人もいるよ。
おいら、庭でミンメイと遊んでいることが多いから、見せ物になった気分だよ。
アルトは、そんな見物人を警戒して、耳長族だけでは決して屋敷の外へ出るなと注意してたよ。
外へ出る時は、父ちゃんか、タロウが必ず付き添うようにってね。
この町の住民の中にはもう不心得者はいないだろうけど、他所の人はそうとは言い切れないからってね。
まあ、用心に越したことは無いね、聞き分けのない愚か者って何処にでもいるみたいだから。
お読み頂き有り難うございます。




