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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十一章 小さな王子の冒険記
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第253話 不良冒険者を減らすためには…

 新しい家にも慣れてきたある日のこと。

 日課のトレント狩りから町に帰ってくると。


「おっ、マロン嬢ちゃん、それにオラン嬢ちゃんも、お帰り。

 今日も狩りに出かけたんかい、お疲れさん。」


 門番役の冒険者の兄ちゃんが、おいら達を労ってくれたんだ。

 いまだに冒険者たちは、オランを女の子だと思っているの。

 一々男の子だと説明してないから、仕方ないかもしれないけどけどね。


「うん、今日もアルトとトレント狩りに行って来たよ。

 兄ちゃんも、門番の仕事お疲れさま。」


 おいらは、兄ちゃんに返事をして町へ入ったのだけど。


「前々から思っていたのじゃが、この町の冒険者は礼儀正しいのう。

 王宮では、冒険者はすべからく無法者だと教えられたのじゃ。

 風体こそ堅気な様子じゃないが、やっていることは至ってまともなのじゃ。」


 オランが、門番の兄ちゃんを見てそんな感想を漏らしてたよ。


「素行が良いのは、この町の冒険者くらいだよ。

 王都の冒険者なんて、ほとんどならず者だし。

 それに、この町の冒険者の素行が良くなったのだって最近だから。

 この町なんて、ホント、無法地帯で、不良冒険者の吹き溜まりだったよ。」


 一年と少し前まではここの冒険者も町の人の鼻つまみ者だったことを、オランに話してあげたの。

 堅気のお店からみかじめ料をせしめたり、堅気の人にゴロをまいたりしてたってね。


 冒険者ギルドの組長がアルトの勘気に触れて手酷いお仕置きをされたことや。

 その時に、堅気に迷惑を掛けることをアルトから禁じられたことなんかも話したよ。


「やはり大方の冒険者は、聞かされていた通りのならず者なのじゃな。

 しかし、アルト殿からお仕置きされただけで、あのようにお行儀よくなるものじゃろうか。

 キツイ仕置きをされて、堅気に迷惑を掛けないと約束させられたのなら。

 それは守るじゃろうが、あのようにお行儀よくしろと約束させられた訳じゃあるまいに。」


「ああ、あんな風にお行儀良くなったのは本当につい最近だよ。

 アルトが『STD四十八』の興行を始めてからのことだね。」


「うん、あの芸人達の興行が、冒険者の素行と関係あるのか?」


「連中の興行って、耳長族のお姉ちゃんが伴奏をするでしょう。

 興行を始める前に、アルトが冒険者ギルドに乗り込んで釘を刺したんだ。

 冒険者が耳長族に手を出したら、ギルドに連帯責任を負わせるって。

 それで他所からやって来た冒険者が耳長族に手出ししないように門番を置くことになったの。

 でも、その段階では、今ほど愛想は良くなかったし、素行も良くなかったね。」


 この町の冒険者って、冒険者とは名ばかりで大部分は農村の重労働が嫌で逃げ出して来た腰抜けばかりだもん。

 堅気へのみかじめ料の徴収やゴロ巻きを禁じられても、ロクに魔物狩りなんてできなかったよ。

 かと言って、おいらやタロウみたいに、スライム捕りやシューティングビーンズ狩りなんて地道なことをする輩でもないしね。

 聞いた話では、数人組でウサギ狩りをして日銭を稼いでは、ギルドにある酒場で飲んだくれていたらしいの。

 でも、大の大人がそれで食べて行ける訳ないよね、どうしていたかと言えば…。

 若い冒険者から博打でお金を巻き上げていたらしいんだ。


 ウサギ狩りに出かけて数人で一匹狩るでしょう。そんな冒険者は一組じゃなくて、何組もあるんだ。

 それで、ベテランの冒険者は駆け出しの冒険者をイカサマ博打のカモにするの。

 駆け出しの冒険者の分け前を、博打で巻き上げて自分達の飲み代にしてたらしいよ。

 なので、ベテランがウサギ狩りに行くのは数日に一回なのに対して、駆け出しは毎日ウサギ狩りに行ってたらしいの。


「酷い輩もいたものじゃな。

 前途有望な若者からイカサマ博打で金を巻き上げて。

 ベテラン冒険者達は酒場で飲んだくれておったと言うのか。

 それが、また、どうしてあのように改心したのじゃ。」


「ああ、それは冒険者ギルドが宿屋と駅馬車を始めたからだね。

 『STD四十八』の興行が評判になってね。

 他の町から人が集まってくるようになったんだ。

 冒険者を食わしていくのに困っていたギルドが、他所から来る人に目を付けてね。

 宿屋を始めて、そこで冒険者を雇うことにしたの。

 それと、アルトがギルドに馬を与えて駅馬車を始めさせたんだ。

 そこでも冒険者を使ってね。

 お客さんと接するようになると、態度が悪いと困るでしょう。

 だから、ギルドが素行を厳しく指導したの。」


 元はと言えば、農村での重労働が嫌で逃げてきた連中ばかりで、定職に就くあてが無いから冒険者になっただけだもの。

 危険な魔獣狩りなんかしなくても、そこそこの給金が貰える定職をギルドが用意してくれたんだ。

 冒険者の連中だって、素行を改める努力くらいはするよ。


 加えて、町の治安が良くなれば、他所から来てくれるお客さんが増えるとギルドも気付いたみたいなんだ。

 最近は、門番をしているお兄ちゃんも不審者が町に入らないように真面目に見張っているし。

 不審者ではないと判断した人には、さっきみたいに愛想よく声を掛けるようにしてるの。


 『STD四十八』の興行がある日なんて、騎士団のお姉ちゃんに協力して会場の警備を手伝っているしね。

 ちなみに、門番も、会場の警備も冒険者ギルドが給金を払っているんだよ。


「なるほど、ならず者のような冒険者を減らすためには、定職を与えれば良いのじゃな。

 元々、定職に就くあてもなく、魔物を狩るような素養もない者が冒険者になるのが間違いなのじゃ。

 素行の悪い冒険者が増える理由は、安定した仕事が不足しているからと言えるのじゃな。

 安定した収入を得るために素行を改めるとは、まさに衣食足りて礼節を知るじゃ。」


 シタニアール国でも素行の悪い冒険者に頭を悩ましているようで、常日頃、王様が愚痴ってるみたい。

 冒険者を取り締まる事ばかり考えていて、仕事を創り出して冒険者に与えるという発想は無かったみたいだって。


 今、他所からこの町を訪れる人が増えているおかげで、冒険者ギルドは『宿屋』、『駅馬車』、『風呂屋』が大繁盛なんだって。

 『宿屋』、『駅馬車』、『風呂屋』って、それもう冒険者ギルドじゃなくて商人だよね。

 でもって、そこで雇われている兄ちゃん達は、もう冒険者とは言えないよね。

 かろうじて冒険者と言えるのは、門番と会場の警備、それに駅馬車の護衛の冒険者くらいかな。


 この町には、相変わらずロクに魔物を倒せる冒険者はいなくて。

 トレントがつける『砂糖』などは、すっかりおいら達頼りになっちゃってるよ。


「それは、それで問題なのじゃ。

 トレントくらいの魔物を倒すことが出来る冒険者の育成も課題なのじゃな。」


 『砂糖』、『はちみつ』、『メイプルシロップ』はトレントを倒せないと手に入らないからね。

 そのくらいは安定的に倒せる冒険者がいないと困っちゃうね。


 一番簡単なのは、駆け出しの冒険者に『生命の欠片』を渡して促成栽培しちゃうことなんだけど。

 『生命の欠片』って、実質的に王侯貴族の間で秘匿されているから、そんなことは難しいだろうね。

 平民で簡単に『生命の欠片』を手に入れることが出来るのって、おいら達くらいだもん。

お読み頂き有り難うございます。

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