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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十一章 小さな王子の冒険記
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第248話 オランのお土産話

 アルトと王様たちの打ち合わせが済むと。


「父上、ご無沙汰なのじゃ。

 シトラス兄上の婚姻に立ち会うため、いったん帰国したのじゃ。」


 オランが王様に帰国の挨拶をしたの。


「おお、オランか、元気にしておったか。

 男子、三日会わざれば刮目して見よと言うが。

 そなたも、王宮の外で荒波に揉まれてすっかり男らしく…。

 なっては無いようだな、相変わらず女子のような姿をして。」


 王様ったら、半年前と変わらないオランの容姿を目にして、ため息をついたの。

 おいらは、女の子のようなオランを可愛くて良いと思うんだけど。

 やっぱり、父親としてはオランに雄々しい姿を期待してるのかな。


「例え父上と言えど、それは失礼じゃろう。

 こんな見た目じゃが、私も日々精進しておるのじゃ。

 最近では、一人でトレントを狩ることことも出来るようになったのじゃ。

 これでも大人顔負けに稼いでおるのじゃぞ。」


 幾ら父親とは言え、顔を見るなりため息をつかれるのは心外だったようで。

 オランは苦言を呈すと、最近の成果を誇らしげに披露してたよ。


 実際、オランは毎朝最低五体はトレントを狩っているので、もの凄い稼ぎになっているの。

 持っていると不用心なんで、おいらの『積載庫』で銀貨を預かっているくらいにね。

 その銀貨も五万枚を超えてるのに、相変わらずおいらと一緒に慎ましい生活をしているの。

 それでも一つも文句を言わないし、毎日楽しそうにしているオランって偉いと思う。


「ほう、その歳でトレントを一人で狩るとは大したものだ。

 見た目に惑わされた私が悪かったよ。

 そなたが立派に成長していることを親として誇らしく思うぞ。」


 王様はオランの言葉を聞いて感心したみたいで、目を細めていたよ。


 でも、…。


「オランちゃん、トレント狩りなんて言う危ないことをして!

 その愛らしい顔に傷なんてつけてないでしょうね。」


 ネーブル姫が慌てて寄って来て、オランの顔をペタペタと触って傷がないか調べ始めたの。

 それまで、アルトが持って来た『妖精絹』の反物を手にしてうっとりしてしていたんだけど。

 溺愛しているオランが、トレント狩りをしていると聞いて気が気でなかったみたい。


「姉上、私は何処もケガなどしていないのじゃ。

 恥ずかしいからやめて欲しいのじゃ。

 もうそんなに子供じゃないのじゃ。」


 過保護に心配されて恥ずかしがるオランだけど…。


「そんなに恥ずかしがらなくても良いわよ。

 私にとっては、何時までも可愛いオランちゃんなのだから。

 そんな事より、本当に怪我はない…、って、ナニコレ。

 こんなにツルツル、スベスベのお肌してどうしたの。

 私よりもお肌がキレイじゃない。

 いったいどうしたの?」


 恥ずかしがるオランのことなど気にしないで、顔を触っていたネーブル姫だけど。

 オランのお肌が王宮にいた時よりキレイになっているんで驚いたみたい。


「これは、温泉のおかげなのじゃ。

 私が住んでいる辺境の町では、地の底からお湯が湧き出しておるのじゃ。

 そのお湯には肌が綺麗になる効能があるそうなのじゃ。

 毎日、温泉に入っているので肌が綺麗になったのじゃ。」


「ええぇー! 何それ、羨ましい!」


 そんな驚きの声を上げたネーブル姫は、今度はおいらの顔をペタペタ触り始めたの。


「まぁ、マロンちゃんのお肌もとっても綺麗。

 その温泉というモノ、興味あるわ。

 私の部屋でもっと詳しく聞かせてちょうだい。

 どうせ今日は泊っていくのでしょう。」


 そんな訳で、おいら達はネーブル姫の部屋に場所を移したんだ。


      **********


 ネーブル姫の居室に場所を移したおいら達。


 ネーブル姫にせがまれるまま、オランは温泉のことを詳しく話したの。


「へー、人が何十人もいっぺんに入れるようなスペースにお湯が張ってあるなんて…。

 水が貴重なこの町ではそんなの信じられないですわ。

 しかも、平民が毎日、そこで湯浴みができるなんて驚きです。」


 やっぱり姉弟だね、最初にお風呂の話を聞いた時のオランと同じリアクションをしてるよ。

 この町では入浴の習慣が無くて、王族でもお湯で湿した布で体を拭くだけみたいだものね。


 平民が贅沢にお湯を使って入浴していると聞いたら驚くのも無理が無いね。


「平民が気軽に湯浴みできるというのも驚きですが。

 それが無料だと言うのはもっと驚きですわ。

 シトラスお兄様の話では、ギルドが経営する風呂屋というもは。

 お湯に浸かって泡姫なる者に体を流してもらうと、銀貨三十枚も必要だと言っておりました。

 何でも、貴重な水を沢山使う上、お湯を沸かすのに薪も沢山必要だとのことで。

 無料でお肌がこんなに綺麗になるなんて、なんて羨ましい。」


 イヤイヤ、それ、シトラス兄ちゃんに騙されているよ。

 いくら貴重な水だって、銀貨三十枚はしないって。

 銀貨三十枚と言ったら、普通の平民の三日分の稼ぎだからね。

 アルト達の話では、あそこはいかがわしいサービスをするから高いお金を取るそうだから。

 泡姫の姉ちゃんは体を流すだけじゃないみたいだよ。


「そうなのじゃ。

 温泉は心地良くて、一度入ると病み付きになるのじゃ。

 でも楽しいことは、温泉だけでは無いのじゃ。

 外の世界には、私が知らなかったことが溢れていたのじゃ。

 そうだ、姉上に私達の仲間を紹介するのじゃ。」


 温泉の話が一段落すると、オランはラビを紹介したいと言い出したの。

 丁度、ネーブル姫の膝の上にはふさふさな毛をした可愛いウサギが横たわっていたよ。

 ネーブル姫、相当なウサギ好きらしくて居室にいる時は大抵ウサギをかまっているらしいの。


「ええっと、オラン、ここで出して良いのかな。

 あれ、一応魔物だから…。

 王族の部屋で出すのは拙くない?」


 王族に危害を与えようとした疑いで捕まるなんて嫌だよ、おいら。


「平気なのじゃ。ラビは私達の家族同然なのじゃ。

 大人しいし、人を襲うことも無いから平気なのじゃ。」


「そうかな…。

 おいら、叱られても知らないよ。」


 おいら、肩の上でおいら達の会話を聞いていたアルトに頼んだの。

 この場で、ラビを出して頂戴って。

 アルトはネーブル姫の反応が楽しみなのか、悪戯な笑顔を浮かべて承諾してくれたの。

 そして、『積載庫』から出されて、おいら達前に姿を現したラビ。


「ミュ!ミュ!」


 ラビが姿を現した途端、ネーブル姫の膝の上にいたウサギが焦った声を上げて体を強張らせたの。

 次の瞬間、脱兎のごとくソファーの後ろに逃げ込んだよ、…ウサギだけに。

 やっぱり、小動物のウサギからしたら、突然魔物が姿を現したら恐怖を感じるだろうね。


 一方のラビはというと…。


「ウキュ!ウキュ!ウキュ!」


 こっちはこっちで、おいらにしがみ付いて悲しそうな鳴き声を上げてたよ。

 どうやら、アルトの『積載庫』の中で一人取り残されて寂しかったみたいだね。


「姉上、紹介するのじゃ。

 今、一緒に住んでいるウサギのラビなのじゃ。

 大きな体をしているけど、とても人懐っこくて愛らしいのじゃ。」


 逃げて怯えるネーブル姫のウサギと、おいらにしがみ付いて鳴き声を上げているラビ。

 そんな二匹の様子を気にすることもなく、オランはラビの紹介をしたんだ

 少しは二匹を気遣ってあげても良いと思う…。


「か、…。」


「か?」


 目の前に現れたラビを見て、何か呟こうととして言葉を詰まらせた様子のネーブル姫。

 おいらがオウム返しに尋ねると…。


「可愛い!」


 そんな叫びと共に立ち上がったネーブル姫は、その勢いでラビにガバッと抱き付いたの。

 そして、ラビの背に頬ずりしながら。


「凄い、モフモフで柔らかい。

 こんな大きなウサギ、始めた見たわ。

 オランたら、こんな可愛い子と一緒に住んでいるなんて羨ましすぎる!」


 どうやら、ネーブル姫はラビのことを気に入ってくれたみたい。

 魔物を部屋に入れてと叱られなくて良かったよ。


      **********


 そして、王宮の中庭。


「凄い、凄い。

 ウサギに乗せてもらえるなんて夢みたい!」

 

 オランと一緒にラビの背に乗って、中庭を跳ね回るネーブル姫。

 ラビがおいらとオランの移動手段になっていると聞いて、ネーブル姫も乗りたがったの。

 流石に、おいらも含めて三人乗るのは難しそうだったんで、二人で乗ってもらったんだ。


「ふふ、ここの王族は変に偉ぶってなくて良いわね。

 魔物に乗って無邪気に喜ぶ王族なんて、初めて見たわ。」


 アルトが、ラビの背に乗って楽しそうにしている二人を見てそんなことを呟いてたよ。

 今まで、アルトが目にした王族がどれだけいたのかは知らないけど。

 確かに王国貴族って偉ぶってそうなイメージで、この国の王族は少し印象が違うね。


 気が済むまでラビの背に乗せてもらったネーブル姫は、ラビのことを気に入ってくれたみたい。

 その晩は、ネーブル姫の大きなベッドで、ラビも含めてみんな一緒に眠ったんだ。

 

 つい最近まで、一人ぼっちで眠るのが当たり前だったから。

 こういうのって、なんか良いね。

お読み頂き有り難うございます。

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