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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十一章 小さな王子の冒険記
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第237話 魔物の領域でドラゴンを狩ったよ

「さーてとっ、花嫁の衣装も頼んだことだし。

 大弓の試射にでも行きましょうか。

 マロン、オラン、あなた達も一緒に行く?」


 にっぽん爺の家を出たところでアルトが尋ねてきたの。

 勿論、行くに決まってるじゃん。

 そんな面白そうなことを逃しはしないよ。


 そう返事をしようとすると…。


「私も行っても良いのか?

 ならば、行きたいのじゃ。

 あの大きな弓をどんな風に使うのか見たいのじゃ。」


 おいらより先にオランが一緒に行きたいと答えたよ。


「そう、オランがこう言ってるのだから、マロンも来るわね。」


 アルトはおいらに確認した後、広場に行って食べ物を買うように指示したんだ。

 今回の試射も魔物の領域でするから、一日にでは帰ってこれないって。


 食べ物を買い込んだおいら達が最初にやって来たのは…。


「はっ? アルト様、いきなり何事でしょうか?

 唐突に出掛けるからついて来いなどとおっしゃられて。」


 クッころさんは、目的も告げられずにアルトからついて来いと指示されて問い返して来たの。

 そう、ここはライム姉ちゃんのお屋敷なんだ。


「あら、ごめんなさい。

 この間、約束したでしょう。

 エクレアには、特別にレベルを上げる機会を作って上げるって。

 その準備が整ったから迎えに来たのよ。」


「それは有り難いですのですが…。

 私もライム様の護衛中でございますから。」


 そうだよね、仕事中にいきなり外出すると言われても困るよね。


「私はかまいませんよ。

 エクレア団長以外にもこの屋敷には護衛の騎士が五人もいますもの。

 せっかくアルト様がレベルを上げる機会を作ってくださるのですから。

 お言葉に甘えて行ってらしたら。」


 でも、ライム姉ちゃんが気を遣って、クッころさんに外出を認めてくれたの。


      **********


 クッころさんを拾って魔物の領域へ向かったんだけど。

 魔物の領域って無茶苦茶広いから、途中で一泊することになったんだ。

 アルトだって、不眠不休で空を飛ぶことは出来ないからね。


「魔物の領域に行くと聞いて。

 どんなにおどろおどろしい景色が広がっているのかと思ったのじゃが。

 この部屋から見る限る生えている木や草はあまり変わらんのじゃな。」


 ベッドに潜り込んだオランが、昼の間窓から見ていた魔物の領域の感想を漏らしたの。


「そうだね、前に来た時にアルトが言ってた。

 単に魔物が多くて集落が作れない地域を魔物の領域と呼んでいるだけだって。

 植生なんかは人の住む場所と変わらないらしいよ。」


「そうなのじゃな。

 まあ、空飛ぶ巨大なヘビなんてモノが住んでおるのじゃからのう。

 こんな場所にはうかうか町など作れんのじゃ。」


 昼間、やっぱりコウモリみたいな翅を生やした巨大なマムシ、『ギーヴル』が襲ってきたの。

 あいつら魔物の領域の何処にでも飛んでいるし、好戦的ですぐに襲ってくるんだ。

 だいたいレベル四十くらいはある高レベルの魔物なんだけど。

 アルトに掛れば雑魚みたいなモノで、難無く退治していたけどね。


「そうだね、一匹、二匹じゃないからね。

 あんなの襲われたら、村なんかすぐに全滅しちゃうよ。」


「それにしてもアルト殿は凄いのじゃ

 あんな強そうな魔物を普通に飛びながら、倒して行くのじゃものな。」


 アルトは向かってくるギーヴルを停まることなく撃退していたものね。

 オランは、今更ながらアルトの凄さを認識させられたみたい。


「あら、あなた達、まだ起きてたの。

 もう子供はお休みの時間よ。

 とっとと寝ましょう。」


 アルトは眠くなった様子で、おいら達の『特別席』に入ってきたんだ。

 そして、おいらが横になっているベッドの枕元に着地すると。


 そのまま、スヤスヤと寝息を立てて寝入っちゃった。


「はやっ…。あっという間に眠っちゃったよ。」


「アルト殿もお疲れなのじゃろう。

 それにしても可愛いのう。

 とてもあんなに強いとは信じられんのじゃ。

 愚かな者共が侮って虎の尾を踏のも頷けるのじゃ。」


 オランがアルトの愛らしい寝姿を見てそんな呟きを漏らしてた。

 見た目と戦闘力のギャップが凄いもんね。

 

    **********


 夜が明けてからまたしばらく魔物の領域の奥まで飛んだの。

 そして、降ろされたのはだだっ広い草原のど真ん中。


 朝ごはんの時間みたいで、二頭の巨大な魔物が小形の魔物を捕食してたよ。


「あれは、もしやドラゴンと呼ばれる類の魔物ではないでしょうか?

 何か、魔狼を一噛みで葬っているのですが…。

 もしや、あれを私に倒せとおっしゃるのですか?」


 全身羽毛で覆われていて、三階建の建物くらいの背丈をした二足歩行の巨大な魔物。

 それを目にしてクッころさんはすっかり怖気づいていたよ。


「あれ? 『バォロン』と呼ばれている地竜の一種ね。

 多分レベル五十くらいだと思うけど…。

 心配しないで、危なくない倒し方を考えて来たから。」


 アルトは、怖気付くクッころさんを宥めると、例の大弓を『積載庫』から出したんだ。

 その場で、アルトはクッころさんに大弓の操作方法を教えると。


「この位置からでも十分に狙えるはずよ。

 もし、危なくなるようならすぐに助けてあげるから安心しなさい。」


 アルトはクッころさんに指示し、大弓を何時でも発射できる状態すると。

 クッころさんにその場で待機するように伝えて、『バォロン』の方へ飛んで行ったの。


 そして、『バォロン』に近付くと何やら緑色のモノを大量にぶちまけたよ。

 多分、きっと、『ゴムの実』の良く熟した果肉部分だね。

 すると、それまで夢中で魔狼を貪っていた『バォロン』は二頭ともアルトの方へやって来たの。

 緑色のモノをぶちまけた辺りまで来ると、地面に向かって顔を突っ込む二頭のバォロン。

 ゴムの実の果肉部分を食べ始めたらしい。


 しばらく、それを見ていると、いきなり二頭のバォロンが喧嘩を始めたの。


「何じゃぁ、あれは?

 あの地竜どもいきなり喧嘩を始めおったぞ。

 しかし、卑怯な戦い方をする魔物じゃのう。

 ガタイの大きな方が、小さい方に後ろから襲い掛かるなんて…。」


 オランがバォロンの闘い方を見てそんな感想を口にしてたよ。

 確かに、少し大きなバォロンが、小さな方を後ろから押さえ込むように襲っているんだ。


「ええと、この子達に何と説明した良いのでしょうか。

 あのバォロンは多分喧嘩をしているのではなく…。」


 オランの言葉を耳にしたクッころさんは、顔を赤くして言葉に詰まっていたの。

 何と説明して良いのか困っているみたい。


 すると、アルトが戻って来て。


「見なさい、あの二頭、あの位置から動かないから狙い易いでしょう。

 おそらく、あの行為に没頭しているから、こちらから攻撃しても気にしないと思うわ。

 さあ、大弓を撃つのよ。

 二頭とも倒すまで、何度でもね。」


 そんな指示を出すと、予備の矢を足元に積み上げたよ。

 

「攻撃したら向かって来そうですが…。

 本当に大丈夫なのでしょうか。

 危なくなったら助けてくださるんでしょうね。」


 そんな危惧を持ちながら、クッころさんはバォロンに向かって矢を放ったの。

 ビュンと言う音と共に、凄い勢いで飛んで行く槍のような太さの矢。

 その矢は外すことなく、バォロンに吸い込まれ…。


 ギャアアアア!


 かん高い獣の悲鳴が響いたの。

 クッころさんが放った矢は、上に覆いかぶさっているバォロンの背中に深々と刺さっていたよ。


「何なのじゃろうか?

 あんな悲鳴を上げるほど痛いはずなのに…。

 それを無視するように、夢中で腰を振り続けておるぞ。

 矢で攻撃した者に反撃するより、喧嘩を続ける方が優先するようなのじゃ。

 不思議なこともあるものじゃな。

 あれなら、横から攻撃し放題なのじゃ。」


 横槍を入れられても無視して喧嘩を続けるバォロンを見てオランが首を傾げてたよ。


「相変わらず『ゴムの実』の発情作用は凄いわね。

 矢で受けた痛みを無視して続けるなんて…。

 ほら、ぼさっと見てないで、次の矢を射るのよ。」


 おいら達のもとに戻って来たアルトは『ゴムの実』の効果に感心してたよ。

 アルトの指示で、二本目の矢を放つクッころさん。


 その矢は再び大きな方のバォロンに吸い込まれて…。

 当たり所が良かったのか、ドシンという地響きを立てて上に覆いかぶさったバォロンが地面に倒れたの。


 すると何故か、下に組み敷かれていたやや小さなバォロンも巻き込まれるように転倒して…。

 無防備なお腹をこちらに晒したんだ。


「エクレア! 今よ!

 あのお腹に矢を打ち込みなさい!」


 アルトの指示で、続けて矢を放つクッころさん。

 お腹の方が柔らかいのか、より深々と矢が刺さったように見えたよ。

 腹に矢を受けたバォロンは苦しそうにもがいたけど。

 クッころさんが更にもう一射し、二本の矢を腹にうけた後はピクピクと痙攣し始めたの。


 しばらく様子を見ていると、二頭とも動かなくなって…。

 二頭が倒れ伏す地面に大量の『生命の欠片』が積み上がるのが見えたんだ。


 「二射でバォロンを倒すなんて中々の威力ね」と呟いたアルト、さっそくそれを回収に行ったよ。


 バォロンと『生命の欠片』を回収してきたアルトは、クッころさんに大弓の使い勝手とかを色々と確認してた。


 そして。


「これが、約束の『生命の欠片』よ。

 悪いけど一頭分は別のことに使いたいから。

 一頭分だけで勘弁してちょうだいね。」


 アルトは、クッころさんの背丈ほどになる『生命の欠片』を積み上げたんだ。


「アルト様、これ頂いてしまって良いのでしょか。

 私、ほとんど止まっているバォロンにここから矢を射ただけで。

 大したことしていないですが。」


 クッころさんは目の前に積まれた『生命の欠片』の余りの多さに遠慮してたよ。


「当たり前でしょう。

 この間のシタニアール国遠征に対してのご褒美だもの。

 それに、ダイヤモンド鉱山の奪還に向けてエクレアには強くなってもらわないとね。

 さあ、遠慮せずにその実に取り込みなさない。」


 アルトに促されて、『生命の欠片』に手をかざしたクッころさん。

 それが体に吸い込まれるように消え去り…。


「アルト様…。

 レベルが五十になっているのですが…。

 私を人類最強クラスの仲間入りさせるって、冗談ではなかったのですね。」


 自分のレベルを確認したクッころさんは驚きの余り呆然としていたよ。


 その時、アルトはとても満足そうな顔をしてていたの。

 大弓の試射の結果は上々だったし、クッころさんも目標通りのレベルになったものね。


 町へ戻ったらノーム爺に大弓の追加発注をすると言ってたよ。

お読み頂き有り難うございます。

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