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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十一章 小さな王子の冒険記
230/848

第230話 やっと、我が家に帰って来たよ

 ハテノ男爵領再興の最終目標として五十年程前のスタンピードで魔物の巣と化したダイヤモンド鉱山の奪還を掲げたアルト。


 そんなアルトに対してレモン兄ちゃんが尋ねたの。


「もしかして、シタニアール国に対してこの国への『永久不可侵』を誓約させたのも。

 私を人質として婿入りさせたのも、ダイヤモンド鉱山の奪還に向けての布石ですか。

 ハテノ男爵領がダイヤモンド鉱山を奪還して豊かになった時、シタニアール国に狙われないようにと。」


 以前、家宰のセバスおじいちゃんから聞いた話だと、ここのダイヤモンド鉱山は周辺国で最大だったらしいの。

 アルトは、ダイヤモンド鉱山を奪還した後の保安の事まで考えていたみたい。


「そうよ、せっかくダイヤモンド鉱山を魔物から奪い返しても。

 欲を出した他の領地、他の国に奪われてしまったら元も子もないでしょう。

 地理的に見て触手を伸ばしてきそうなのは、シタニアール国、とりわけイナッカ辺境伯だものね。

 イナッカ辺境伯から攻め込まれたのは、色々な意味で渡りに船だったのよ。」


 まあ、魔物に対峙するための騎士団強化も手っ取り早く出来た上に、『永久不可侵』まで誓約させたからね。

 ダイヤモンドの輸送に使うための馬も持って来てくれたし。

 まさに、アルトからしてみれば、カモがネギをしょってやって来たみたいに見えたんだろうね。


「確かに、先代のイナッカ辺境伯なら、やりかねませんでしたね。

 耳長族の女性を手に入れたいがために騎士団を動かした愚か者ですから。」


 レモン兄ちゃんは、先代イナッカ辺境伯を思い起こして相槌を打っていたよ。


 アルトとレモン兄ちゃんがそんな会話を交わしていると。


「あの…、アルト様。

 私にはご褒美は無いのでしょうか。

 今回は私もそれなりに活躍したつもりなのですが…。」


 騎士団長のクッころさんが、控え目に尋ねてきたの。

 今回、イナッカ辺境伯やシタニアール国王を手際良く拘束したのは、クッころさんとペンネ姉ちゃんの二人だものね。

 なのに、クッころさんだけ『生命の欠片』を貰ってないんだ。


「ああ、エクレアは特別よ。

 あなたにはもっと沢山の『生命の欠片』を手に入れる機会を作るから。

 準備が整うまで少し待っていないさい。

 一月もしないうちに、あんたも人類最強クラスの仲間入りをさせてあげるわ。」


 今、クッころさんはレベル三十、アルトの目標はレベル五十だものね。

 今回イナッカ辺境伯の騎士団から巻き上げた『生命の欠片』では大してレベルは上がらないって。

 なので、クッころさんだけは別に『生命の欠片』を手に入れる機会を設けるだって。

 多分、おいらや父ちゃんみたいに、魔物の領域でレベルを上げるつもりだね。

 アルトの言う『準備が整う』って、ノーム爺に頼んでいた道具の完成を待っているんだと思う。


        **********


 騎士団のお姉ちゃんやレモン兄ちゃんに、『生命の欠片』を分配し。

 『ダイヤモンド鉱山』奪還のプランも明かして、領都でやるべきことは全部終えたの。


 それから、また少しの時間、アルトの『積載庫』に乗せられ…。

 十数日振りに帰って来たよ、辺境の町。

 おいら達を家の前に降ろすと、アルトは騎士団の詰め所に飛んで行った。

 留守番をしていた騎士のお姉ちゃんに『生命の欠片』を分配するんだって。


「ここが、マロンの家か…。」


 おいらの家を見て、オランが言葉に詰まってたよ。


「何か不満でも? オランがおいらと一緒に住むって言ったんだからね。

 狭いとか、汚いとか文句言ったら追い出すよ。」


 オランが平民の生活を体験してみたいと希望したのだから。

 おいらは、オランのお望み通り、気遣い無しに平民と同じ扱いをする事にしたんだ。 


「いや、私の方からマロンに頼み込んだことなのじゃ。

 家が狭いとか、汚いとか文句をつけるつもりは全く無いのじゃ。

 だが…。

 何で、この家の庭だけ雑草だらけなのじゃ?」


 オランは、おいらの家の前庭を見て呆然としていたらしい…。

 オランが呆気に取られていたのは、傍若無人に茂った『カタバミ』の魔物。

 確かに、他の家の庭はこんなに草ぼうぼうではないし。

 おいら達と一緒に出掛けていたタロウの家の庭ですら、庭に生えた雑草はまばらだものね。

 それに、おいらの家の庭に生えている雑草は他の庭には全く生えてないからね。

 はた目に見たら異様に見えるかも。


「あはは…。

 実はこれ、植物型の魔物なんだ。

 魔物なんで、繁殖力がものすごく強いんだけど。

 うちの庭を自分達のテリートリーと認識しているようでね。

 この庭からはみ出して、広がろうとはしないみたいなの。」


「なんと、この雑草が魔物。

 雑草のようななりをして面白い習性があるもんじゃなぁ。

 しかし、何ゆえ、この庭にだけ魔物が存在するのじゃ。

 いったい、何処からやって来て、ここに住みついたのじゃろうか?」


 ギクッ! こいつ、何気に鋭いな…。

 おいらが植えたと答えたら、きっと何で植えたのかを尋ねて来るよね。

 『金貨採集量増加』のスキルの事はバラしたくないし、どうしようか。


「以前、アルトと一緒に魔物の領域に行ったんだけど。

 この魔物、そこに生育していたんだ。

 偶々、靴の裏にくっついていて、持って来ちゃったみないなの。」


 おいらは、苦し紛れにいい加減な出まかせを言ったんだけど…。


「そうなのか、魔物というのは中々難儀なモノじゃのう。

 こんなに繁茂してしまうとは。」


 オランはあっさりと納得してくれたの。

 王宮で蝶よ花よと育てられたせいか、人を疑うことを知らないみたいで助かったよ。


「おお、この部屋でこれから暮らすのじゃな。

 私も、マロンも、まだ小さい故、十分な広さなのじゃ。

 これで狭いなどと文句を言ったらバチがあたるのじゃ。」


 家の中を見回して、オランはそんな言葉を口にしてたよ。

 クッころさんが一緒に住んでいた時も、狭いとは思わなかったからね。

 子供二人で暮らすのなら、十分な広さだとは思うの。


       **********


 それから、おいら達はオランの服を揃えるために改めて外出したの。

 今オランが着ているいる服は、肌触りの良い上等な服で、見た目にも王侯貴族と分かる服なんだ。

 こんな服を着て町を歩いた日には目立つことこの上ないし、下手をしたら誘拐されちゃうものね。

 やっぱり、平民らしい服を着てもらわないと。


 最初にやって来たのは、隣のタロウの家。


「あら、殿下に下着が欲しいの?

 待ってて、今商品を持ってくるから。」


 そう、シフォン姉ちゃんが扱っているパンツを買いに来たんだ。


「殿下、まだ、ご挨拶していませんでしたね。

 私はシフォン、ここに住むタロウ君のお嫁さん。

 ここで、下着とか、女性用の服の仕立てをしてるの。」


「シフォンじゃな、覚えたのじゃ。

 私の事は殿下ではなく、オランと呼ぶのじゃ。

 街中で殿下などと呼ばれると目立って仕方がないのじゃ。」


 おいらと最初に話した時のように、名前で呼べと要求するオラン。

 王族なのに偉ぶっていないのが、好感が持てるね。


「あらそう、じゃあ、オランちゃんと呼ばせてもらうね。

 それで、オランちゃんは、どんな下着が良いかしら?

 オランちゃん、可愛いからオシャレな下着も似合うと思うよ。」


 おいっ! 何で、オランに女の子用のパンツを勧めるの。

 シフォン姉ちゃんが最初に見せた箱の中身は、女児用のパンツばかりだったよ。

 

「凄いのじゃ。

 姉上が履かせてくれるような可愛い下着が沢山あるのじゃ。

 このフリルが付いているのが、気に入ったのじゃ。」


 オランもオランで、シフォン姉ちゃんが差し出した箱の中から一番可愛いパンツを選んでやんの。

 こいつ、今、どんなパンツを履いてるんだろうか。


「シフォン姉ちゃん、オランで遊ばないで。

 オランは男の子だよ、トランクスを出して。」


「あら、ごめんなさい。

 オランちゃんが、女の子みたいに可愛いモノだから。

 つい可愛い下着を着けさせたくなっちゃって。」


 ゴメンと言いながら、全然悪びれていないシフォン姉ちゃん。

 マジでオランに女の子用のパンツを履かせようと思っていたみたい。


 おいらに催促されて、やっと男物のトランクスを出して来たよ。


「これは、さっきのと違って可愛げの無い下着じゃのう。

 うん? でも、何じゃこれは?

 ずり落ちるのを防ぐための紐がないのじゃ。

 しかも、ビヨーンと伸び縮みするのじゃ。

 不思議なモノで出来ておるのじゃな。」


「凄いでしょう。

 それがハテノ男爵領特産のゴムよ。

 そのゴムが伸び縮みして、パンツがずり落ちるのを防いでくれるの。

 脱ぎ着し易すくて便利でしょう、今売れ筋商品なのよ。

 その伸び縮みする素材は、アルト様からしか手に入らないの。」


 シンプルなデザインのトランクスを手に取って、最初は不満気だっオランだったけど。

 トランクスの上部が伸び縮みする事に驚き、シフォン姉ちゃんの説明を聞いて感心してたよ。


「世の中には、まだまだ知らないことが沢山あるのじゃな。

 あのまま王宮にいたなら、私がこのゴムという素材を知るは何年後になった事か。

 やはり、マロンに付いて来て正解じゃったのじゃ。」


 いや、パンツくらいでそんな大袈裟な…。

 それに、おいらやオランくらいのガキんちょじゃ、知らないことの方が多くて当たり前だから。


 そんな感じで、おいらとオランの共同生活は始まったんだ。

  

お読み頂き有り難うございます。

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