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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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93 無理と無茶


そういえば、戦闘中は集中していたから忘れていたが俺たち2人は屋敷の窓から飛び出して脱出したのだった。

その際、入り口前にいた見張りに見つかったんだっけ?


あの見張り達、どこに行った?


そこに倒れている男との戦闘はスキルの発動回数を思い返してみてもそこそこ時間がかかっていたように思える。

その間、屋敷から出てきて俺を取り押さえに来るのは時間的に考えて容易なことだったはずだ。


だがそれはしなかった。


その理由は今、直面している問題を考えればすぐに出てくる。


彼らは俺ではなくシュラウドをとらえることを優先したのだ。


あいつがいい武器を作り出すことができることは何ら隠してはないため、少し注意深く見ている人なら簡単に知ることができる。

要するに、『メルクリウス』の目的はそもそもが俺ではなくシュラウドなのだ。


「ってことは・・・結構やばい状況は続いているっていうことだな。」


「これは急いだほうがよさそうね。でもどこを探せばいいのかしら?」


「う~ん。妖精さんたちはシュラウド――――えっと、お前たちの召還主の背の高さくらいで執事服みたいな従業員服を着た少年を見ていないか?」


ダメもとで聞いてみる。

俺の言葉に周りに群がっている妖精たちが体を使って何かを伝えようとするような動作を見せる。

だが、その意味はよく分からない。


知っている風だが、その内容が俺たちに読み取ることができないのだ。


「やっぱりノアじゃないとだめなのか?」

ここに彼女はいない。

シュラウドの場所を知りたければ彼女のいる店まで戻らなければならない――――が、ここからでは少し遠いな。


一刻を争うと思われる今、そこまで走っている余裕はあるのか?


「ふふん、やっぱり、タクミはボクがいないとだめみたいだね!!」

んー―?今、何か聞こえたような?


「ってあなた、どうしてここにいるの?リアーゼは?」


「無理矢理押しのけて来た!!ちなみにリアーゼちゃんは今もそこら辺の物陰に隠れてるよ!!途中からボクを捕まえるのはあきらめてサポートしてくれるみたい。」


ふーん、なるほど。


「で、ノア、お前ならシュラウドの場所、わかるのか?」


「任せておいて!!・・・と、言いたいところなんだけどシルフちゃんたちはある建物に入ったところまでしか見てないんだって。」


「それだけわかれば十分だ。案内してくれるか?」


「うん!!じゃあい、くよ?あれ?」

そこでノアがゆっくりと倒れる。

リリスがノアが現在、消耗していることはすでに教えてくれていた。


店にいるときにはもうすでに立つことも覚束ない様子だったらしい。

そんな状態で、彼女は自分の足でここまでやって来た。


決して店からここまでは短くない距離だ。

体力が尽きてしまってもおかしくはない。いや、むしろそれが自然なのだ。


「ノア!!?大丈夫か?」


「う~ん、だいじょーぶー、すぐに起きるから待っててー」

気の抜けたような声だ。

大丈夫、という言葉が全く信じられない。ノアはここに置いていくか、リアーゼに安全な場所に連れていかせるのがいいのかもな。


「ノア、その建物の場所を口頭で教えてくれるか?」


「それは難しいんだよ。だから、ボクが、案内するんだけど・・・ちょっとだけ待ってね。」

ノアがひどく弱っているのは誰の目にも明らかだ。

そんな人間にこれ以上無理を強いると最悪の結果が起こっても不思議ではない。


だが、件の建物の場所は口頭では説明できないような場所にあり、妖精―――シルフだったな―――の言葉は召還主であるノアにしか理解できない。


なら、やることは1つだ。


「そうか、ならちょっとだけ揺れるが、それは我慢してくれよ。」

俺はノアを背中に乗せる。


これならばノアの体への負担を抑えながら案内をさせることができる。


「えっ、あ、うん!!じゃあボクはここから指示を出せばいいんだね!?」


「ああ、どっちに進めばいいかとか、そこら辺のことを教えてくれるといい。」


「ならー、まずはあっち!!」

ノアは俺の背中の上で一つの道を指さした。

彼女は俺の背中に乗っているため、見えるのはその腕だけだ。


「よし!!リリス、リアーゼ、行くぞ!!」

俺はノアが示した方向に向けて走り出した。

リリスもそんな俺に続くように――――リアーゼの姿は見えないが、たぶん彼女もついてきているはずだ。


シュラウド・・・何もなければいいんだが・・・・・・・











「ここは?」


「真っすぐ!!通りを二つ抜けたら右だよ!!」

彼女の指示通り、俺は道を帆走する。

街には人が多くおり、それを避けて走っているため全速力とはいかないがかなりの速度で移動することができている。


「曲がったぞ!!」


「なら次はその路地に入って!!」


「で、そのあとは少し真っすぐ!!ボクがいいっていうまで真っすぐ進み続けて!!」


「わかった!!」


ただただ指示通りに走っているが、これはどこへ向かっているんだ?

周りを軽く見渡すと、軽く危なそうな場所に入ってきてるんだが・・・まぁ、人通りがほとんどないからここは走りやすいな。

俺は人にぶつからないように抑えていたスピードを通常の走りに戻す。


ノアからの新しい指示はない。

その為俺は彼女の言葉通り、真っすぐ進み続けたのだが・・・・


「なあノア、行き止まりなんだけど?」

その先の道は途絶えていた。

建物の背中に位置するであろう場所が俺の目に移されており、右を見ても左を見ても道が存在しない。


まさか道を間違えたのか?


・・・・・・・・・・・・・・・?ノア?


彼女から、返事がない。


俺は首を回して後ろを確認してみる。


・・・ノアは意識を失っていた。

流石に、無理をさせすぎたのか。背負うことで負荷を軽減しようとしたが、それでも今のノアにはつらいことだったのだろう。


悪いことをした。


「リアーゼ、こっちに来てくれ。」

いつの間にか、隠れるものがなくなったのかその身を現してついてきていたリアーゼに俺は声をかける。


「どうしたの?」


「なぁ、ノアを担いで店まで戻ることはできるか?それか、だれにも見つからない場所にかくまうだけでもいい。」

ノアを担いだままではこれ以上は無理だろう。

どうせリアーゼもついてきたところで今回はほとんど出番はないはずだ。


それならばと俺はリアーゼにノアを預けることにする。


「わかったよ。じゃあ私は先に帰ってるね。」

リアーゼが俺の背中のノアを背中に担ぐ。

いつもの鞄はその場におろしていた。彼女の小さな体では、2つともは運べない。


運ぶものの優先度を考えたら当然の行動だ。

だが、その鞄はリアーゼが今まで大切に使ってきたものだ。

それを手放させてしまうのは少し心が重くなる。


「リアーゼ、ごめんな。鞄はこれが終わったら新しいのを買いに行こう。」


「うん。気にしないでいいよ。物より命のほうが大事だからね。」


「うぅ、、、」

ノアの少し苦しそうな声が聞こえる。

彼女はこんな状態になってもまだ、動こうとしているのだ。


「ノア、今はちゃんと休め。体は大切にしないと意味ないぞ。」


「タクミ、目的地は・・・・ここら辺に・・・・」

ノアはそれだけを言って再び眠りについた。

それだけでも伝えなければならない。そう思ったからこそ、最後の力を振り絞ったのだろう。


ノアがここまで頑張ってくれたんだ。

俺だって頑張らないとな。


リアーゼの小さな背中に乗せられ、運ばれているノアの姿を見ながら俺は気を引き締めた。

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