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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
92/293

92 確定と不安

大体敵のスキルは出そろったな。


目の前の男が持っているスキルは今、大体判明した。

他にも何か隠し持っているのかもしれないが、見ている限りではそれはないと判断する。


男が持っていたスキルはかなりの量にわたっている。

しかしその一つ一つはさほど強力なものではなかった。


おそらく、ポイント要求量が少ないものを片っ端から取っていったのだろう。


確かに、アクティブスキルなんかは少ないスキルポイントのものでも結構強力なものが多い。

ただしそれは対応できる範囲の話だ。


こうやって詳細を裸にしてしまえば恐れるものはあまりない。


まず一番恐れるべきスキルは2分30秒ごとに飛んでくる背後への移動技。

これは移動と攻撃まで一瞬だけ間が開いているため、発動タイミングさえ見誤らなければ回避することは難しくない。


そして次は投げナイフ、これは避けるのが非常に難しい。

どういうわけか飛んでくるナイフは空中で軌道を変えることで俺に迫ってくる。


ただ、投げられたナイフは俺の心臓のある位置に真っすぐに飛んでくること、ナイフを投げた後は敵も少しの間動けないこと、そして冷却時間が長く一度投げると6分は飛んでこないことの要素が絡み合い、ある意味対処が簡単なスキルともいえる。


他のスキルはまあ・・・・あれだ。

普通の行動に毛が生えた程度のものだ。


というかモーションがある程度決まっている分、普通の行動のほうが脅威ということは言う必要もないだろう。


それに、今回は事前に状態異常耐性を取得してきたから暗殺者特有の毒を用いた攻撃は俺には通用しないしな。


しかし・・・・


「ほら!!逃げ回っているだけではどうしようもないぞ!!?」

こちらが攻めるということは一切していない。

その為戦闘は長引くだけ長引いている。


相手には少し疲れの色が見えてきているが、その程度のことは問題にならないだろう。


「俺としてもそろそろこの戦いを終わらせてここから離脱したいところなんだけどな。」

この場に長くとどまったら屋敷の中から新手の敵が出てきそうだし、早く事態を収拾するに越したことはない。

だが、俺のほうから攻める手は現在ほとんどない。


現状では俺はこうやって攻撃を耐え続けることしかできないのだ。


「貴様がすばしっこいのはわかったが、しかしそれだけだ。攻撃が当たりにくいだけで当たらないわけではないし、別に貴様が無敵というわけでもない。こうやって攻め続けている限り、俺に負けはないということだ。」

俺が攻めることができないことをわかっているそいつは調子づいたような台詞を吐く。


「本当、そろそろ終わらせたいよな。ノア、リリス、」

それに対し、俺は仲間たちの名前を口にする。


彼女たちは今、この場所にはいない。

だが、俺にはわかっている。ノアなら、リリスなら手助けしにここまで駆けつけてくれるはずだ。


俺はそう、半ば確信をもって笑みを浮かべた。



「ええ、お母さんが迎えに来たわよ~。だからもうお片付けして帰りましょうね~」

あまりにも場違いな声が、その場に響き渡る。


間違いない―――リリスだ。

彼女は俺の予想どおり、この場所を探し当てて迎えに来てくれた。

リリスはその声の後、空から舞い降りるように現れる。


「ん?リリスだけ?ノアは?あいつなら真っ先に飛んできてくれそうなんだけど?」


「ノアはあなたを探し当てるのに精いっぱいでここまでこれなかったわ。彼女、頑張っていたもの。」


ああ、今冷静になってみてみれば、初めは数体しかいなかった妖精もとんでもない数集まってきているな。


「まさかこれ、全部ノアが召喚したのか?」

聞かなくても答えはわかっているが、そう聞かずにはいられない。


「えぇ、彼女、『タクミはきっと困ってるから、ボクが助けるんだ~』って言って、一人でやり切ったのよ。」

リリスはそのことに対して誇らしげに胸を張る。


なるほど、これだけの数の召還魔法を連続行使したため体力が底をついたのだろう。


後でちゃんとねぎらってやらなきゃいけないな。


「ッチ、新手か。」

軽く舌打ちしてから、男はその体重を後ろにかけるような動作を見せる。

これは―――背後移動の予備動作だ!!


「リリス!!後ろに――――」


そう注意喚起をしようとしたが、流石に男がスキルを発動させて後ろに回る方が早い。

俺がその言葉を言い切る前に、リリスの後ろから男の姿があらわれた。


空気の揺らぎなどは全くない。

来ると知っていなければ、どこに行ったのかさえ分からない。


そのスキルが今、何も知らないリリスに向かって放たれた。


どうする?

リリスの手を引いて―――もしくは彼女を押し出して回避をさせるか?

いや、流石にこれも間に合わないだろう。


結局俺は、見ているしかできない。


リリスの耐久力は高い。

一撃受けるくらいなら、問題はないはずだ。

俺はそう信じて、今から起こることから目をそらさずに反撃の準備を整える。


だが、俺の予想は別の意味で裏切られた。



「なっ!!?なんだと!!?」

男の腕が、リリスの手によって強く握られているのが見える。

リリスの力はすさまじく、その腕がきしむような音が聞こえてる錯覚まで覚えるほどにその腕は強く握られていた。


「ふふ、助けに来たのに真っ先にやられちゃったら格好がつかないからね?多少は私も活躍しなきゃ!」

お茶目な風を装ってリリスはそう言った。

その台詞の中でも、彼女は腕をつかむ力を緩めようとはしない。


やがてそれに耐えかねた男はリリスに向かって蹴りを放たんと行動を開始した。


「じゃあ、この足ももらっていくわね。」

リリスは空いているほうの手で足をつかむことで、その蹴りを防ぐ。

にこやかな笑みを浮かべてはいるが、やっていることは結構残酷だ。


「というかリリス、どうしてさっきのやつ、反応できたんだ?」

掴まれている男のことよりも、そっちのほうが俺的には気になる。

俺だって初見はくらった攻撃だ。リリスだって情報を持っていたわけではないだろうし、何をしたのだろうか?


「それならこの前不意打ちを受けてびっくりしたから周りのことがよくわかるようになるスキルをとったのよ。」


「リリスってかなり高レベルだと思ったんだけど、スキルポイントってそんなに余ってるのか?」


「ん?レベルはこの前聖水をかぶった時に大幅に下がったわよ?」

へえ~、聖水ってレベルに効果を与えるアイテムなんだな。

ならリリスに聖水をかけてレベル上げて―ってやっていけばすべてのスキルをとることも夢じゃないのか・・・・


いや、流石にリリスに悪いし心が痛みそうだからやらないけどね?


「ぐああああああああ放せ!!放せぇ!!」

あ、そういえばこいつのこと半分忘れてたな。


どうしても緊張感が切れるとほかのことを考えてしまう・・・・これは俺の悪い癖だな。


「リリス、そいつは適当に気絶でもさせてそこらへんに放置しておこう。ここは一応、他人の家の敷地内だし何があってもおかしくない。」


「わかったわ。じゃあ、おやすみなさいね。」


「わっ、や、やめ――――」

リリスが手足をつかんだまま男を高らかと上げ、そのまま地面にたたきつけた。

効果は抜群だ――――かどうかはわからないが、地面にたたきつけられた男はそのまま動かなくなる。


よし、完全に意識を失ったみたいだな。



「よし、じゃあ早いところ店に戻ろう。ノアもリアーゼもシュラウドも、ヴィクレアだって待ってるかもしれないしな。」


「そうね。そこでなんだけど・・・・シュラウドは一緒じゃないの?」


「え?」




明日は投稿をお休みします。


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