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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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85 対策完了と商売の行方


「色々話してくれてありがとうございます。あ、これ1つください。」


その男は武器、防具の部署の中でもそこそこ上のものだったらしく、これから引き起こす計画の内容を大雑把にだが把握していた。

そしてそれをまんまと俺に話してくれたことに対して、俺は素直に礼を述べる。


これで降りかかる火の粉を引火する前に振り払えそうだ。


ただ、ここで話だけ聞いて何も買わずにどこかへ行ってしまっては不自然に思われるため、俺は少し高いと思いながらも鋼鉄の剣を一つ購入した。

シュラウドが強化した武器と大差ない性能といっても、それはこの武器のほうは素の状態だからだ。


これだって強化すればそこそこ強くなることだろう。


そう考えると初めはバカ高く感じられたこの剣も少し高いかな?程度に思えてくる



「お、買ってくれるのかい?ありがとよ。」


男は俺の手からお金を受け取り、気を良くしたような顔をした。

おそらくここ最近、この店の売り上げがほとんどないどころか人すら寄り付かなくなっているため、こうして狩ってくれる人がいるだけでもうれしいのだろう。


「では、俺はこれで失礼します。頑張ってくださいね。」

俺は自然を装ってその場を離れた。


欲しい情報は大体手に入った為、これ以上ここにいるのは危険だと判断したからだ。


先ほどの男は俺の顔は知らなかったみたいだが、ここにいる従業員のうち少しは俺の顔を知っている者がいてもおかしくはない。

いやむしろ、計画を知っているのにもかかわらず俺の顔を知らない先ほどの男のほうがおかしいと思えるくらいだ。


俺は購入した剣を片手にそそくさと店の外に出る。


別に何かしたわけではないのだが、何か悪いことをしているみたいだ。


店の外に出た俺は、これからどうするべきかを思案する。

先ほどの男は襲撃のタイミングと内容は完璧に教えてくれたため、それの対策をするべきなのだろうな。


その為にはまずはやっておくべきことがあるか。


そう思った俺はステータスウィンドウを開く。

最近はいろいろと忙しくて、なかなか確認することができなかったその窓が、俺の目の前に映し出される。


ステータス画面さん、ご無沙汰しております。


そんな冗談めいたことを心の中で呟きながら、俺はステータスを確認していく。


名前 天川 匠


クラス  魔闘士


レベル      18

HP     2110/2110

MP     216/216

力      146

魔力      89

体力     142

物理防御力  155

魔法防御力  100

敏捷     119

スキルポイント 34

状態      正常



確か最後に確認したのは一つ前の街、リリスと出会う前か。

俺の記憶が正しければその時はレベルが5だったため、13レベルほど上がっていることになるな。


リリスと暮らした2週間での狩りや、この前のドラゴン討伐を経てもまだこの程度しか上がってないのか?と思ったりもしたが、二次クラスのレベルの上がりにくさはこのゲームの仕様なのだろう、俺はそう納得することにしておく。


それに今回はステータスのほうはあんまり気にしない。


必要なのはスキルのほうだ。

確かこの前何気なく習得可能スキルを見ていた時に見つけたあれがあったと思ったのだが―――



俺はステータスウィンドウをすぐさまスキルウィンドウをに切り替え、上から1つ1つ習得可能なスキルを確認していく。

《魔闘気》やら《精神結晶の剣》とか、若干名前や説明がかっこよくてとりたいな~、と思ったスキルがどんどん俺の視界に入り、そして流れていく。


浪漫的に取りたいスキルも、今回はお預けだ。

今回取るスキルの使用スキルポイントは25、軽々しく他のスキルをとって肝心のそれが取れなくなってしまっては本末転倒だ。


それにこれはこのタイプのゲームを進めるにあたって、終盤まで絶対に腐らないスキルだ。

ここでとってしまって損はない。



・・

・・・・・


・・・・・あ!!あった!!


このゲーム、習得可能なスキルの種類が本当に多いため、たった1つの目的のものを探すのに結構時間がかかる。

検索機能や絞り込み機能とかつけてくれればよかったのにな。


そんなくだらないことを考えながら、俺は迷いなくそのスキルを習得するべく、今までコツコツためてきたスキルポイントを支払った。


何も実感的なものはないが、これでちゃんと習得できているはずだ。

本当に作用しているのかどうかはその時が来てみないと分からないが、これで俺の店に来るであろう襲撃に対しての対策はほぼ完全に終わったといえる。




「うん、これでよし、だな!!思ったより早く終わったし、みんなを手伝いに行かなきゃな。」


ここ最近の心配の種が取り払われたことで心が軽くなった俺は、軽快な足取りでみんなが一生懸命に働いているだろう店に戻った。




















「あ!!タクミだ!!」

裏口から店に入ると、ノアが真っ先に俺の存在に気が付きそんな声を上げた。

彼女は現在ここの店の従業員服を着ており、その手には魔石の入った木箱が抱えられている。


おそらく今、それをシュラウドのほうに運ぶ途中なのだろう。


「予定より早くこっちの用事が終わったんでな。手伝いに来たんだけど・・・っておわっ!?」

そこまで言ったところで、部屋の中から何かが俺のほうに向かって飛んできた。


突然のことに反応できなかった俺はそれを頭で受け止めることになる。


しかし飛んできたものは軽かったため、俺にダメージはない。


「ほらタクミ!!早くそれ着て手伝いなさい!!」

奥からリリスの声が聞こえてくる。


何事かと俺は頭の上にかぶったものを見てみるとそれは俺手作りの従業員服 (男用)だった。

先ほど入るときに思ったが、今日も繁盛しているみたいで、今は猫の手でも借りたい状況なのだろう。


俺はその場で即座にその服に着替える。



「ただいまシュラウド、調子はどうだ?」

そして客の対応に入る前に一度、店の奥で武器の強化にいそしむシュラウドに声をかけてみる。

彼がつらいとか言い出したら即座に店を閉めなきゃいけないからな。


「はい、問題ありません。そしてタクミ様に1つお知らせがあります。」

少し、嬉しそうな顔をしたシュラウドが魔石と武器をそれぞれの手に携えながら、小話をするような口調で話し始める。


「お知らせ?」

何かあったのだろうか?


「はい、今日の朝方、この店に陳列した竜爪の剣ですが、見事に売れました。」

両手を塞がれながらも、誇らしげに胸を張るシュラウド・・・・って今、なんて言った?


「竜爪の剣が売れました。」

俺は心の中で言ったつもりだったのだが、口に出ていたみたいだ。

俺の疑問に答えるようにシュラウドが先ほどと同じセリフを繰り返す。



「売れたって・・・まだ昼にもなってないぞ!!?それなのに1500万もする武器が売れたっていうのか!!?」

1500万ともなれば流石に大金だ。この店の購入費だって300万程度しかしなかったんだぞ?

それほどの値段のする武器がこの短時間で売れてしまうというのはどういうことだろうか?


「はい、それなのですが、朝一で来たお客様がドラゴンの素材を使用した武器をとても興味深そうに眺めていらっしゃったので、一応それは1本しかないものだということを伝えると騒ぎながら外に出ていかれてしまって・・・」


「それでその少し後にお金を持った人が買いに来たっていうことか?」


「はい、そういうことです。」


誰だよ1500万Gもポン!と出したやつは、あれは売れなかったら俺が使う予定――――いや、売れたんだからいいんだけど・・・


それにしても、数量限定という言葉の魔力ってすごいな。

やっぱり、他の人が購入した瞬間にそれはもう手に入ることはなくなってしまう―――という競争意識が芽生えると途端に人は視野が狭くなってしまうものなんだろうな。


それに今回は一応とはいえ竜の武器だし・・・この世界におけるドラゴンの格付けはいまいちわかっていないが大体のゲームではドラゴンは種族としては最高峰に位置することが多いしな・・・欲しくなるのもうなずける。



「そうか、売れたのか。」

一度でいいから実践で使ってみたかった感はあるんだが、売れてしまったものは仕方がない。

実はあの武器、この前手に入れたアースドラゴンの爪をほぼすべて使って作られているため、同じものをシュラウドに作るように言っても作ることはできないみたいなのだ。


朝食の際にそのことを聞かされてからは少し、売れないことにも期待したのだが・・・・



「そしてそのことでなのですが・・・」


「ん?まだ何かあるのか?」


「はい、むしろここからが本題です。」

ここからが本題?これ以上何か重要なことが今の俺たちにあったっけか?


「して、その本題とは?」

考えても答えは出そうにないし、俺は素直に聞くことにする。

ここでわかっているような雰囲気を出して教えてもらえなくなっても仕方ないしな。



「はい、その剣をかったお客様がこの店の店主に合わせてくれとお願いしているのです。」


「ん?ならお前があってきたらいいんじゃないのか?」

この店を購入したのは俺だが、使用用途としてはシュラウドのためのものだから実際はシュラウドの店なのだ。

その為、俺の中では勝手にこいつが店主だと思っていたんだが・・・


「何をおっしゃいますか。お客様は店主をといっていたのです。タクミ様、あなたを指名されました。」


「え?だってこの店の店主ってお前だろ?俺は今手伝いできているだけだし、ここまで繁盛したのもお前のおかげだし・・・」


「それでも店主はタクミ様なのです。お客様は今、店の中を見て回っているとおっしゃいましたので、まだいらっしゃるはずです。今から顔を出してきてはいかがですか?」

う~ん、こんなところで認識の祖語があったとは・・・ある意味意外――――でもないのか?


「まあいいや、それなら俺がいかせてもらうよ。シュラウドも無理しない程度に頑張れな。」

そもそも考えてみれば今、シュラウドは武器に魔石を入れる作業で忙しいのだ。


俺と話している間も、常に手を動かしていたがその速度はそれだけをやっているときと比べると少し遅い。

これ以上引き留めて邪魔をしてしまったらいけないだろう。


俺も俺のできることをやらないとな。



俺はこの店の店主に会いたい、そう言っているらしい人物への対応をするべく表に出ていくのだった。


「タクミ!!着替えにいつまでかかってるのよ!!」


少しシュラウドと話していたせいか、リリスに少し怒られた・・・

これから客と会話をしなきゃならないっていうのに、客のみんなが見ている前で俺を叱るのはやめてほしいものだ・・・・


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