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ゲーム攻略者とゲームの世界  作者: Fis
第3章 終わった機械と刻む歯車
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84 新商品と敵情視察

「タクミ様、頼まれていたものが完成しました。」


朝一番に俺の耳にシュラウドの声が聞こえてくる。

普段は俺たちが完全に目を覚ましてから話しかけてくるのだが、今日はノアが俺を起こし次第すぐに声がかかる。


「頼まれていたもの・・・・もしかしてあれか?店に置く用の武器の第一号か?」


「はい、夜のうちに完成したので、最終確認をしてもらえたらと。」


「最終確認?」


「はい、作りはしましたが使えるかどうかといわれると話は別になりますので、冒険者の視点から確認をしてもらえたらと思います。」

なるほど。確かにシュラウドがいい武器を持ってもそれの良さはわからない、宝の持ち腐れ状態になるからな。


「そうか、じゃあそれをこっちに渡してもらえるか?」


「はい、わかりました。」

シュラウドが俺に渡したのは一振りの剣だった。

俺はとりあえずそのアイテムの詳細を開いてみてみる。


名前 竜爪の剣

効果 武器攻撃力+48 

説明 アースドラゴンの爪を使い作られた剣。高い攻撃力を誇る。


ほう、今まで見た武器の中で最高の攻撃力だ。

エリックが持っていた聖剣や、地雷アイテムでしかなかった骨の魔剣を大きく突き放した攻撃力だ。

圧倒的まである。


俺は今度は周りに気を使いながらその剣を振ってみる。


重心がおかしいとかそういうことはない。

非常にいい武器であるといえるだろう。


「シュラウド、ちなみにこれ、魔石は?」


「入れておりません。」


おお!!魔石なしでこの攻撃力なのか。


「完璧だな!!」


「はい、ありがとうございます。」

俺の賛辞を、そのまま受け取るシュラウド、彼自身、今回の仕事には納得のいくものがあったようだ。

その表情はどこか誇らしげだし、今日、朝早くに話しかけてきたのもこれを早く見てほしかったのかもしれない。


欲を言えば俺がこの武器を使ってみたいというのはあるのだが、今回は店用に作ったもののため我慢だ。

余裕ができたら俺用のものも作ってもらうことにしよう。


「性能はかなりいいものだってのはわかったけど、シュラウド的にはこれをいくらで売りたいと思っているんだ?」


「―――?タクミ様が決められるのではないのですか?」


「いや、これは俺より作った本人が決めたほうがいいと思うんだ。」

それに俺、この世界のアイテムの相場とかあまりよく知らないしな。

適当な値段をつけて買いたたかれても癪に障りそうだしな。


「そうですか。では―――」

シュラウドは少しだけ思案するようなしぐさをみせ、そして少し後に一言だけ、


「では、ここは大きく1500万Gでどうでしょうか?」


「それはまた――大きくでた・・・のか?」

エリックが代々伝わる云々言っていた聖剣より性能としてはかなり上の武器なのだ。

ある意味妥当なのかもしれないが・・・そこのところはどうだろうか?


「売れなかったら飾って看板にするとおっしゃられたので、このくらい引き上げてもいいと愚考いたしました。それに最悪、だれも購入する気配がなければタクミ様が使ったらよろしいかと思いまして。」

俺がこの剣を自分で使ってみたいと思っていることは、シュラウドにはお見通しだったみたいだ。


「それもそうだな。別に残って困るってものじゃないんだ。売れなくたって問題ないか。」

俺は自分の心を見透かされて少しだけ恥ずかしくなったのを誤魔化しながらそう言った。


「タクミー!!ご飯行くよー!!リアーゼちゃんももう待ってるよー!!」

そこで先ほど、俺を起こした後に自分の部屋に戻ったノアが再び俺の部屋に戻って来て呼び掛けてくる。

もうそんな時間か。


「ほらリリス、ご飯だぞー、起きろー。」

寝ているリリスの頬をぺちぺち叩いて俺は彼女を起こす。

最近はノアが引き起こす朝の騒がしさに慣れてきたみたいで、それだけでは起きなくなっていた為、こうやって体に呼び掛けてやるしかない。


「んー?起きるのー?」


「ああ、起きるぞ。」


「ん、わかった・・・」

半分寝ぼけた様子のリリスを引き連れて、俺たちは朝食を食べるため食堂まで下りていった。















「そういえば、イアカムさんは『メルクリウス』って知ってますか?」

朝食途中、流石にこの時間帯には他の客はほとんどいないので気楽に話しかけることができる。


「ん?確か冒険者御用達の店の名前だったよな?それがどうかしたのか?」


「いえ、どんな店なのかなって思いまして、知っているなら少し話を聞こうと」


「そうか。といっても俺が知っている話はほとんどねえな。なにせ俺は見ての通り料理人だ。冒険者用の店なんていかないからな。すまねえな、力になれなくてよ。」

そうだよな。

こんな厳つい見た目をしているのだから、料理人になる前は冒険者だった――――とかいう割とありがちな設定を期待して聞いてみたのだけど、そうではなかったみたいだ。


「そうですか。ありがとうございます。」


「おいおい、俺は何も話してねえから礼なんていらねえって。」


確かに、イアカムは店自体のことは何も話していなかったが、彼自身、その店についてはよく知らないという情報をくれた。

実はこの質問、昨日店に来た客にちょくちょく聞いていたのだが、みんな同じような答え―――冒険に必要なものが大体そろっている店―――を口にするばかりだった。


俺の店に来る客は大体が冒険者のため、それ以上の情報を得ることができなかったのだ。


だがイアカムが言っていたことを考えると、『メルクリウス』とかいう店は知名度こそあれ冒険者間にしか利用されていないみたいだな。

ただ利用されていない人にも知られているってことは結構大きな店なんだろな。



そんな店にこじんまりとやっている俺たちの店が目をつけられているのか・・・・


ここに来た初日に出会った奴みたいな、営業妨害野郎を送り込んでくるのかもしれないな・・・

まぁ、そのくらいなら面倒だが何とかなるからいいんだけど・・・問題はそれ以上の―――嫌がらせの範囲を超えたことをやってきた場合だよな。


そもそも、初日のシュラウドがとった宣伝方法がそもそも営業妨害じみたことだったため、少し何かされたくらいではあまり強く言えないし・・・


う~ん、どうしたものかなぁ・・・



俺はいずれ来るだろう妨害工作に対しての対策を考える―――が、何をやってくるか特定できるほど情報が出ていない為、何をメタればいいのかがよくわからない。

ここは一度、実際の店を見てみたほうがいいかもしれないな。



「イアカムさん、その店の場所ってわかります?」


「ん?それなら確か冒険者ギルドから通りを一つ東に抜けたところにある大きな店がそれだ。」

あぁ、あれか・・・

記憶の中に、教えてもらった場所に大きな建物があったなということを思い出す。


依頼をこなすために街を出る際に少し通りがかったくらいではあるが、そこそこ大きな建物であったため記憶に残っている。

外装は白を基調とした壁に、青で店のエンブレムのような物が掲げられている―――くらいしか覚えていないが、結構立派だったように思える。


「今日はそこに行ってみるかなぁ・・・シュラウド、」


「はい。どうなさいましたか?」


「今日、俺は店の仕事に出ないつもりだけど・・・いいか?」


「問題ありません。」

思えば、あの店はシュラウドの暇つぶし用に用意したものだった。

俺たちが依頼などをこなしに行っている間、一人さみしいであろうシュラウドを紛らわすためのものだったのだが、今はそれをメインに動いている。


本当に、何が起こるかわからないものだな。
























そして朝食を食べ終わり、宿を出ると同時に俺はみんなと別れて件の店へ向かった。

他の4人は今日も店であくせくと働くみたいだ。

そんな中に俺一人だけ抜け出してこうして店に行くのは少し忍びない気がしたが―――これも店を守るための一環なのだ。


別にさぼっているわけではない。

そう言い聞かせて俺は冒険者ギルドを通り過ぎ、店の前までたどり着いた。


あらためて見ると結構立派な店だ。

こんな店が1つの小さな店をどうこうしようとしているとは到底思えないが、何があってもいいように準備だけはしておかなければならない。


それが経営者としての心構えなのだ―――といっても、俺は元の世界ではまだ学生であったため、店で働くのはゲームソフトを買うためのバイトをするくらいだったのだが・・・


俺は迷いなく、その店の扉を開き中に入った。



そしてすぐにあたりを見渡す。


店の中には多種多様なものが置いてある。

それぞれにタグが付けられており、それが売り物であるということが一目でわかる。


武器や防具だけでなく、保存食やロープなどの冒険グッズまで本当に冒険に行くならここに来るべきだといわんがばかりに色々なものがそろえられていた。

ここは朝なのにもかかわらず、そこそこの数の人が来店していた。


それらの人は思い思いの商品を手に取り、それをお金と引き換えに手に入れている。


だが、よく見てみると一部分だけ、人がほとんど立ち寄らない区画があった。


俺はその区画に足を運ぶ。




そこに置いてあったのは武具類であった。

俺はその中の1つを手に取り、アイテム詳細を開く。


名前 鋼鉄の剣

効果 武器攻撃力+16

説明 鋼鉄製の剣、オーソドックスな一品だ。

値段 140、000G


―――高っ!!


いや、確か俺がリリスの槍を購入したときもこのくらいの性能でこのくらいの値段がしたような気がするのだが、今見てみると高すぎるのではないか?という思いがある。


うちの店では石製の武器は確か5000G、性能的には大体攻撃値+15くらいだったため、1の数値を気にしないならかなりの節約になる。


それに聞いた話によれば冒険者がパーティを組んでいる際の報酬はそれぞれが倒した魔物分しかもらえないらしい。

それだといくらパーティで稼いでいても、お金を持っていない人が出てくるかもしれない。


俺が今までいろいろな依頼をこなしてきた限りでは、14万Gは高いと思えるくらいだし、値段を気にして俺たちの店に流れてきても仕方がないのかもしれないな。


「お兄さん、それ、買うのかい?」

俺が手に取って剣を見ていると、店員と思しき人が俺に話しかけてきた。

その表情は暗く、目の下にはクマができている。


「凄いクマですけど・・・どうかしたんですか?」


「ああ、これね。最近うちの部署の商品が売れなくなって上からこき使われてね・・・でも大丈夫だよ。1週間もすればまたぐっすり眠れるようになるから・・・・」



――――ん?こいつ今なんて言った?

1週間もすればまたぐっすり眠れる―――ってことはあれだよな?あと1週間以内に俺たちの店に何か刺客が送り込まれるってことか?


「その話、詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

何気ない話をするように、俺は持っている剣を眺めるふりをしながらそう問いかける。


「ああ、聞いてくれるかい?」

そうするとやはりストレスが溜まっていて、誰かに話して発散したかったのだろう。

その店員は今、この店に起こっていることを隠す様子もなく話してくれた。



その目の前の男が、おそらくその原因を作ったであろう人間であるとはつゆも知らずに・・・・

感想もお待ちしております。

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