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私はドラゴンの里で永住するのですよ?

 お兄様は私と沢山お話をしてから、数日滞在してまた帰っていった。

 私が生きている事は国で証明され、私は公爵家令嬢であるけれど、問題がなくなったとしても帰るつもりはなかった。公爵家令嬢として生きる道もある。その場合は新しい婚約者が出来て、嫁いでいくのだろう。家族の事を考えると公爵家に帰った方がいいのだとは思うの。でも、私はこの場所で生きたいの。

 このドラゴンの里に永住したいと思っているの。

 それは心からの本心で、問題が解決したとしてもここでずっと生きていきたいと私は願っている。

 「……良かったのか。兄と一緒に帰らなくて」

 でも、私の隣にいるシンラは違ったみたい。私がお兄様と一緒に帰るのではないかとそれは考えていたみたい。私は帰る気なんて欠片もなかったのに。

 「いいの。私はこの里にいたいの」

 シンラの大きな体に寄りかかって私はいった。

 「……人は人の世で生きた方が幸せなのではないか。ここには人はエルフィーナしかいない」

 「それは、私が決める事だよ。シンラ。確かに、人間である私がこのドラゴンの里で生きていくのは不便な事も多いよ」

 「なら……」

 「でも、私はシンラの側で生きていきたいって言ったでしょう? 忘れたの? 私がいった言葉」

 そう、私がドラゴンの里で暮らそうと決めたのはシンラが居るからだ。

 人は人の世で生きた方が良いというのは確かな事だろう。ドラゴンたちの中で人間である私が生きているというのは不便な面も多い。でも不便だったとしても、私はここで生きていきたいと思った。

 「……忘れてはいない。だが……」

 「もう、ぐたぐた言わないでよ。私はね、シンラ。シンラがなんて言おうとシンラの事が大好きなの。シンラとずっと一緒に居たいの。シンラはドラゴンで、私は人よ。でも、私はシンラが大好きなの。他の誰かの側じゃなくて、シンラの側に居たいの。シンラだって、私の事好きだっていってくれたのに、どうしてまたそんなことを言うの?」

 そう、私はシンラが好きなのだ。シンラはドラゴンで、私は人で、確かに種族は違うけれども私はシンラが好きなのだ。

 第二王子であるグラ様と婚約していた頃から、ずっとシンラは私にとって特別だった。私は種族が違ってもシンラが好きだった。

 でも私は王族の婚約者という立場で、公爵令嬢で、そういう地位を捨てる事は考えていなかった。異種族での婚姻というものがないわけではないけれど、そんなことは本当に稀で。私はシンラに思いを告げるつもりもなかった。

 「私ね、幼馴染であった婚約者に殺されかけるぐらい邪魔に思われて悲しかった。でも、それと同時に、令嬢としての私が死んだならシンラと一緒に居れないかなって思っちゃったんだ」

 グラ様があんな暴走をしなければ、私はここにはいなかった。貴族の令嬢として王子の婚約者であることを受け入れていたから、そのまま卒業したらグラ様の妻になるつもりだった。

 だけど、男爵令嬢の件とかで色々あって、自由に生きられたらって考えてしまった。シンラの側で生きられたって。

 「それは確かにそうだが、その、俺と番になったとしても子もなせないだろう?」

 「確かにそれはね。私とシンラは種族が違うから仕方ないわ。私は子がなせなくてもシンラと一緒に居たい。それに子供は養子をとってもいいし、自分の子供が出来ない分、里の子竜たちを可愛がればいいもの」

 そんな事を気にしていたのかと、シンラの言葉に答える。

 子供がいらないといえば嘘になる。女として子供は欲しい。でも、私は子がなせなくても、シンラと一緒に居たい。種族が違っても、シンラの事が大好きでたまらない。シンラとずっと一緒に居たい。

 問題が片付いたのに帰らなくていいかと問うシンラに、私は改めて言った。

 「シンラ、私は人の世界では生きない。私が居たいのは、シンラの隣よ。貴方の隣だから居たいの。貴方の隣だから、私はこの里で生きていたいの。私の生はただでさえシンラよりも短いわ。長くても数十年しか貴方の側にはいられない。たったそれだけの時間でいいから、私にシンラの時間を頂戴。私はシンラが好きだから、貴方の、そうドラゴンの世界でいう番として生きていきたいの」

 私の紛れもない本心。どこで生きたいかというより、誰の隣で生きたいかだ。私はシンラの隣で生きたい。そう、願った。

 シンラは私の方に、顔を向けた。真っ黒な瞳が、私を見ている。

 私はシンラに寄りかかったまま、シンラの目を見返す。

 「……俺も、エルフィーナが人だろうが、お前の事は好いている。例え、エルフィーナが他の種族だったとしても、俺はエルフィーナに好意を抱いたと思う」

 「うん! 私も大好き」

 「……ドラゴンは番に執着する。もう帰りたいといっても人の世界には返せない。それでも、本当にいいのか?」

 「もちろん。ずっと傍にいさせて」

 「じゃあ、ずっと、傍にいろ。エルフィーナの生が尽きるその時まで」

 「うん。私は死ぬまでずっと、シンラの傍に居るよ」

 シンラは優しい。ドラゴンは番に執着する生き物で、私の事を好いてくれているシンラは私を人の世に帰したくないくせに、私のためを思ってこんなことをいってくれている。

 シンラが本当に、私は大好き。

 ずっと、傍にいさせてね、私の赤竜。






 ――――元貴族令嬢は、ドラゴンの里で楽しく生きています。

 (元貴族令嬢は、ドラゴンの里で夫と共に楽しく生きている)




あとがき

ここまで読んでくださりありがとうございます。読者様が少しでも何か感じていただければ嬉しいです。

この作品は「ドラゴン愛企画」に参加してみようと書いてみた作品になります。

元々私はドラゴンが大好きです。そもそも幻獣全般が大好きなのですが、その中でもドラゴンがとても好きです。そのため企画に参加したことはなかったのですが、参加してみようと書いてみました。

人化する人外ものも結構好きなのですが、人化しない人外ものも好きなのでこんな感じになりました。

エルフィーナはドラゴンの里で楽しく生きています。短い作品ですが、書いていて楽しい作品でした。

感想などいただければ嬉しいです。



2017年2月24日 池中織奈

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