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67.帰り道は未だ遠く

前回のあらすじ:天使マキシマとの死闘の末バアルは見事マキシマを撃退し、蘇生処置の為その血をマキシマに与えた結果、その身というより羽を黒に染上げたのであった。烏骨鶏うこっけいみたいである。

カ「ジュルッ」 マ「食われる!?」

 十分後、膝を抱えて落ち込んでいたマキシマは、気遣うように、しかし声をかける事も出来ずに隣に座っていたバアルの方をようやく向く事ができた。


「とりあえず、バアルさんに敵対する気持ちは何故か起こらなくなったんですが、理由を説明して頂けますか? 後、何をしたのかについても説明を」


「分かった、知っている限りの事を話そう」


 バアルはマキシマに対して行った事とその理由を掻い摘んで話した。


 バアルが行ったのは、バアル自身の再生力を他者に一時的に与える事で高速回復させる術だった。バアル自身の血液を媒介に行う魔術の一種で、死の直後で体がある程度元の状態を保っていれば蘇生も可能である。


「昔の仲間は『魔王の洗礼バアル・バプティズム』と言ってたな」


「なんて術をかけてるんですか貴方は!!!!」


 怒髪天を突かんばかりに立ち上がったマキシマは、またすぐに座り込んだ。


「駄目だ…、怒りが持続しない…。この敵愾心の減少は何なのですか?」


 無意識の内に口調が丁寧になっている事にまたマキシマは苛立つが、それも僅かの間に消え失せてしまう。

 バアルは飽くまで経験則であるがと前置きして話始めた。


「この術を施した者に共通して起こった副作用があるんだが…、まず第一に俺への高い忠誠心、次に多幸感や万能感、あと短時間ではあるが自己再生能力の獲得などが見られた」


「イケナイお薬みたいな効能ですね」


「人の血液をなんて物に例えるんだ。おそらく敵愾心の消失は俺への忠誠心と相殺されているのでは無いかと考える。羽に関しては……、今まで天使に施術した事が無いので分からん。しかしいずれの副作用も数日の時間経過によって消失したから、しばらくすれば元に戻ると思う」


 マキシマはまだ少々納得いかないところはあったが、仕方ないと何度か頷くと真剣な表情でバアルの眼を見つめる。


「で、私に何をさせようと言うんです?」


「…さっきから言ってるが、元の場所まで返してくれればそれでいいんだが…」


 バアルはキョトンとした表情でマキシマを見返す。マキシマはしばしバアルの眼を見つめていたが、やがて困惑したように眉を寄せる。


「驚きました。本当に貴方は魔王ですか? 私を利用して人間世界の再侵略を行おうとはしないのですか」


「もう面倒くさいから全部暴露するぞ。いいか、俺達は…」


 そうしてバアルは自分達の出自、現在に至る状況をマキシマに語って聞かせた。

 マキシマはバアルが嘘を言っていないか注意して聞いていたが、当人にとっては残念な事にバアルが嘘を言っていると確証が持てなかった。更にマキシマがバアルの身体や能力を精査した結果、ようやくマキシマはバアルが悪魔では無いと確信した。


「なんと……、本当に別世界の魔王とは。偶然とは怖いですねぇ、いや失礼しました」


 マキシマは気まずそうにバアルに頭を下げる。バアルは肩の荷が下りたと大きく息を吐き出す。


「納得して貰えたなら幸いだ。今度はこっちが幾つか知りたい事があるんだが」


「ええ、答えられることならなんなりと」


 いつもの気の抜けた表情に戻ったマキシマは居住まいを正してバアルの質問を受けた。


「まず、何故俺を悪魔と思ったんだ?」


「最初にバアルさんを疑ったのは出会った直後のアナトーさんの言動ですね。より疑いが濃くなったのは、色町近くの公衆浴場で凍ったお茶について聞いた時です。熱く煮えたぎったお茶を呪文も唱えずに凍らせた、という事に違和感を覚えて調査を開始し始めました。同時刻にバアルさんが浴場近辺に居たことも把握してましたし」


「え、尾行していたのか?」


 バアルが若干マキシマから距離をとると、マキシマは慌てて首を横に振る。


「いやいや違います! 私の羽をバアルさんに預けていたでしょう、あれでバアルさんの位置を把握していたんです。バアルさんが地下道を通ってる時もそれを目印に転移しました」


「とんだお守りを持たされていたんだな、俺は…」


 バアルは顔を顰めながら胸元から純白の羽を摘まみ出した。マキシマは些かも心苦しい様子を見せずに、茶目っ気たっぷりに舌を出す。


「いえいえ、元々は街中で面倒に巻き込まれたり、迷子になったりしたバアルさん達を助けるために持たせたつもりでしたから、悪気は無かったんですよ?」


 悪戯っ子のような表情を見せるマキシマを見て、バアルはもう二、三滴自分の血を注入してやろうかと心の中で思った。

 結局心の澱はため息に乗せて吐き出し、バアルは次の質問に移る。


「さっき、仕事が一つ減ったとか言っていたがそれは何の事だ? 後ここはどこだ?」


「ああ、それはバアルさん以外がお茶を凍らせていたら悪魔が二匹いることになるでしょう? でもバアルさんが凍らせたという事は悪魔が一匹だけだから討伐の仕事が一つ減ったという意味です。あとここはアイウーズ市から多少離れた草原です。あっちの丘を越えたらアイウーズ市が見えますよ」


 そう言ってマキシマは数百m離れた小高い丘を指差した。意外と近い場所だった事に安心したバアルは最後の質問を発した。


「マキシマの敵、『魔王』とは何なのだ?」


 バアルの発した問いに、それまでおちゃらけていたマキシマの顔が引き締まる。その眼には強固な拒絶の色があった。


「申し訳ありませんが、その事については話す事はできません。…意地悪とかでなく、私は話せないんです」


 最後の言葉を発する時にはマキシマの顔は沈痛な表情に変わっていた。バアルは肩を竦めるとそれ以上の追求は避けた。


「言えないならそれでいい。積極的に関わる事案でも無いだろうしな…。その代わり頼みがあるんだが」


「何でしょう?」


 バアルはマキシマの方に身を乗り出し、強い意志を込めてマキシマを見据える。


「俺達を元の次元に…、故郷に返してくれないか?」





「うん、それ無理です」





「……あとコップ一杯分くらい輸血すれば従順になるかな?」


 微かな殺気を放ちながら立ち上がるバアル。対するマキシマは座ったままじりじりと下がりながら諸手を挙げて降参の意思を示していた。


「待って待って待って下さい! 前も言いましたがこの世界の人達との約束で次元移動の為のゲートを開いたりする事は出来ないんです。第一私には次元移動を行う技術はありません」


「ならば誰が知っているんだ?」


 バアルは焦れたように早口でマキシマを詰問する。マキシマは困ったように頭を抱える。


「申し訳ありませんが技術の譲渡に関しても約束により不可能なんです。これは魔術師ギルドがギルド員に施している、『沈黙の刺青』以上の強制力を以って私達天使を縛っているので、教える事は出来ないです…」


 マキシマは申し訳なさそうにそう締めた。バアルは望みが絶たれたと知り、顔を掌で覆う。手の隙間から漏れる声は、少しだけ、震えていた。


「そうか…、まだ、帰れぬか…」


 そのまま二人の間にしばしの沈黙が下りる。その間バアルは微動だにせず、マキシマは口元に手を当て思案していた。

 沈黙を破ったのはマキシマだった。



「次元移動の知識についてならば、当ては一箇所あります」


 バアルは手を顔からどけると、マキシマをじっと見つめる。


「どこだ…?」


「探求者の国『エグリゴリ』、その秘奥である『最奥図書館』にいる、ある司書ならば知っている筈です」


「その者の名前は?」


 バアルが生気の戻った声で聞くと、マキシマはまた少し考え込んだ後、上目遣いにバアルを見た。


「紹介してもいいんですが、バアルさんに手伝ってもらいたい事があるんです」


 是が非でも聞き出そうとマキシマに詰め寄りかけていたバアルは、マキシマに逆に頼みごとをされ虚を突かれて眼を瞬かせる。そして小首を傾げながら先を促した。


「頼みごとというのは、先日ドワーフの国『ガンザード』に住んでいる私の知り合いの天使から援護要請が来ましてね、それを手伝ってやって欲しいんです」


「何故マキシマが行かないのだ」


「めんどい」


「ちょっと腕を貸せ、あと一滴でいいから輸血する。大丈夫、痛くしてやるから」


「らめええええええ!! 僕痛いの苦手なの~~~~!!」


 ずんずん音を立てながら近づいてくるバアルから、マキシマは大急ぎで走り出して距離をとる。



 しばらく追いかけっこをしていた二人は虚しくなってどちらからとも無く止まった。



「…話が進まんから茶化さんでくれ」


「正直すみませんでした」


 息も乱さず走っていた二人の間には、もうどうしようも無い位ぐだぐだに乱れた空気が流れていた。


「えー正直言いますと、私この町でエロハイム共和国側の神竜王国に対する戦力でもあるんです。だから町から離れるわけにはいかないんですよね」


「……話が見えないな、対抗戦力と言うならばもっと国境に近いヘラゴルン市に居るべきでは無いのか?」


 反論するバアルにマキシマはチッチッチと指を振る。


「アイウーズ市内に居るドラゴン達をお忘れですか?」


 バアルは眼から鱗が落ちたように得心する。


「大使館か」


「そうです。神竜王国大使館には五体のドラゴンが常駐しています。少ないと思っているのでしょうが、アイウーズ市の兵力ではとても対抗できる戦力ではありません、だから私が居るんです」


 マキシマは腕を組み更に解説を続ける。


「我々天使は先の竜大戦でエロハイム共和国側に協力しました。『悪魔』以外との戦いは我々にとって本来なら忌避される事ですが、この世界に馴染んでしまった天使達が意外と多かったんですね。私もその一人ですが。ともかく現在もその共闘関係は継続中です。最近の友好的な雰囲気は察していますがまだ自由に動けるような時期でも無いのです。…あとこんな羽の色で向かったら、私が仲間から死を告げられてしまいます」


 ちくりとバアルに対する嫌味を混ぜてきたマキシマの視線をかわす為に、バアルは視線をそっと逸らせた。


「分かった。その知り合いの援護をすればいいんだな。何と戦っているんだその知り合いとやらは」


「それが、よく分かっていないんですよね。『悪魔』が関わっている事態が発生するかも知れない、あるいは既に進行中である可能性があるので援護求む、という内容の連絡でしたので。詳細は私の知人、グレーテルに聞いて下さい。後ほど紹介状を書いて渡しますので、仕事が終わったら彼女がエグリゴリにいる伝手の名前を教えます。あと連絡もさせますので」


「分かった、その取引を受けよう」


 バアルが手を差し出すとマキシマも同様に手を差し出し、二人は固い握手を交わした。




「……今の内にもうちょっと血を加えておくか、天使の協力者は貴重だしな」


「ヤメテーー!! …あっ!? くそっ、離して下さい、離してー!! この為の握手だったのか、やっぱりあんた悪魔やーーー!!」


 今までの鬱憤晴らしとばかりに、ぎりぎりとマキシマの手を強く握り、バアルは邪悪な笑みを浮かべながらマキシマの腕に手を伸ばす。マキシマはバアルの恐るべき膂力を跳ね除けられず、ネズミ捕りの罠にかかった鼠よろしくジタバタ暴れて抵抗するのだった。



 最終的に、疲労困憊したマキシマの眼から光が消え始めたあたりでバアルはようやくマキシマを解放した。



 ……



 その後、マキシマの魔術でバアルは神竜王国大使館の前まで戻ってきた。


「すっかり遅くなってしまったな。カルニウェアンからの連絡も無いし、皆心配しているだろうな」


「その折は失礼しました…。ところで私も行く必要あるんですか?」


 バアルの後ろを歩きながらマキシマは居心地悪そうに周囲を見回す。ドラゴン達のテリトリーに居ることに抵抗を感じているようだった。バアルはひらひらと手を振ってマキシマに気にするなとアピールする。


「あまり過敏になる必要は無かろう。何かあっても俺達が何とかするさ。ファフニールと言う強い味方もいるしな」


「面識は無いんですけど、バアルさんのお仲間ですか? ドラゴンに対して特別に強い戦士なんですか」


「いや本人がドラゴンだ。しかも神竜王国の姫君に惚れられているからな、色々と便宜を図ってくれるんだ」


「そう言う意味ですか……。道理で神竜王国の大使館に潜伏できるわけですね」


 マキシマが呆れた様子で零している間にバアルは大使館の門まで辿り着き、扉を開けた。


「おーい、今帰ったぞ……」







「もう待てん、草の根分けてもバアル様の捜索を行う。とりあえずを下町あたりを灰にしてくる」


「落ち着けファフニール! 街を灰にしてもバアルは帰って来ねぇから! もうちょっとで帰って来るって!」


「バアル様バアル様バアル様……」


「た、助けてカルニウェアンちゃん~~~!! さっきからアナトーさんの影がうねって私に絡み付いてこようとするの~~! このままではアナトーさんの影で私が触手プレイでイヤンな状況に!!」


「この非常事態に息を荒げて興奮してるんじゃないわよ! そう言いながらアナトーに近寄って行くんじゃない!!」


「あ、エミリーしばらくカミラ抑えてて、私はアナトーをどうにかするから。スコットさんはアナトーの影を見て猫じゃらしを前にしてうずうずしてる猫みたいなイルフィンさんを抑えて下さい」


「はい。イルフィン、ちょっと向こう行こうか」


「ああ!? 何をするスコット! こんな珍しいモノ滅多に見れんのだから、も、もうちょっとだけ~~!」


「ああ…、もう金貨十枚とかどうでもいいから逃げてぇ……」



 バタンッ



 目の前の阿鼻叫喚の地獄からしばし逃避する為にバアルは扉を閉めた。


 一迅の風が吹き、バアルのマントをはためかせる。


「じゃあ私はこれで」


「逃げるなマキシマ。せめて事態の収拾を手伝え」


 踵を返したマキシマの襟をバアルはしっかりと掴まえる。半ば諦めていたのか、マキシマはそれ以上の抵抗はしなかった。


「あの…、アナトーさん達に袋叩きにされそうになったら、助けて下さいね…?」


 バアルはぞんざいに手を振って了承すると、覚悟を決めて扉のノブに手を掛け、そっと扉を開いた。




 出迎えたのは血走った瞳だった。




「バアルざまーーーーー!!!」


「おわああああああああ!?」


 泣きはらした目で飛び掛ってきたアナトーをバアルは受け止め、急いで宥めようとアナトーの背を撫でる。


心配じんばいじだんでずよ、何で急にいなぐなるんでずが~~~…」


「悪かった悪かった、ちょっと油断してしまった。次からは気を付けるから、落ち着け、な? 濁点ばっかりだと分かり辛いから泣き止んでくれ」


 バアルの胸でぐすぐすと涙を零すアナトーを見て、マキシマの胸はチクチクと痛んでいた。


 アナトーに続いてファフニール、マグナダイン、カルニウェアン達が姿を現す。更にその後ろにはエミリーやカミラ、スコットの姿もあった。


「お帰りなさいませ、バアル様。ご無事でなによりです」


「もちょっと早く帰って来いよ。こいつら宥めるの大変だったんだからな」


「誘拐されるとかどこのお姫様ですか。ところでお土産は?」


「お前らもう少し上司を労ってもいいんじゃないか…?」


 バアルは主にマグナダインとカルニウェアンを半眼で見ながらぼやいた。二人はどこ吹く風と聞き流していたが、カルニウェアンがバアルに襟首を掴まれているマキシマに気づいた。


「お土産は天使様ですか。マグナダイン手羽先が来ましたよ、早速捌いて夜食にして下さい」


「結構食いでがありそうだな。羽毟るのが大変そうだ」


「…僕も手伝おう。面倒くさいからまず羽を根元から千切っていいか?」


「いかん、神竜王国大使館は既に悪魔に占拠されていた!! バアルさん、離して! 私を空に解き放って!」


 ジタバタ暴れるマキシマを落ち着かせる為、バアルはカルニウェアン達の前に立ってマキシマを背に隠した。


「悪ふざけはそこまでにしろ。とにかく事情を説明するから中に入れてくれ。俺が消えてからのそっちの状況も聞きたいしな」


 バアルに諌められた四天王三人は口を閉ざすと体をずらし、バアルの為に道を作る。カルニウェアンは手を中に向け、バアルを中に誘った。


「どうぞバアル。ああそれと、おかえりなさい」


「普段からそれ位素直で居てくれ」


 バアルは苦笑しながら片手にマキシマを掴まえ、もう片方の腕でアナトーを支えながら大使館の中に入っていった。



 ……



 バアル達は応接室を借りて互いに情報交換を行った。


 カルニウェアン達はバアルの転移後、カミラがゲイルを確保している間に四天王は大使館に急いで集合し、対策を練っていた。(ゲイルは冒険者ギルドに引き渡したが、早期合流の為報酬は未受領)だが、カルニウェアンの魔術が妨害されてバアルの位置が掴めない事からまずアナトーが発狂もとい失調し、その結果比較的まともな思考力を残していたカルニウェアンとマグナダインが宥めに入ったが落ち着かず、その内ファフニールも焦れてきたので更に手間が増えてしまった。また落ち着いていたエミリー、スコット、フィリップはカミラ、イルフィンのお守りに忙殺されていた。そうこうしている内にバアルが戻ってきた、という状況が報告された。


「私が言うのも何ですが、メンタル弱すぎません?」


「よくよく思い出してみれば、アナトーとはほぼ常に一緒に行動していたし、ファフニールは離れて行動してても連絡は取れる状態を維持していたからな……、こんな状態になるのは初めてだったな」


 マキシマから本気で心配されたので内省していたバアルは衝撃の真実に気付いてしまった。


「私の魔術を妨害するなんてね…、一体どんな方法を使ったのかじっくり聞きたいですね。あとその羽の色についても」


 カルニウェアンは椅子に腰掛けているマキシマの全身を舐め回すようにじっくり観察していた。マキシマはその視線に寒気を感じながらも、それを表に出さないよう努めながら説明をする。


「『障魔マジック・ジャマー』は私達天使の中でも極一部しか使えない術ですからね。魔術では無く特殊能力の類ですし。私達以外で使えるのは高位の悪魔とかですかね」


「へえ、天使と悪魔の能力って似てるんですねぇ?」


「……」


 カルニウェアンはカマを掛けてみるも、マキシマは無表情にお茶を飲むだけで何の反応も示さなかった。少しの間マキシマを見ていたが、反応が変わらないと判断すると姿勢を戻した。

 そこに遠慮がちにエミリーが声を上げた。


「あの、天使様の羽の色が真っ黒に変わっている件についてのお話が凄く気になるんだけど」


 バアルはざっとした経緯を皆に話す。するとバアルがマキシマに血を与えた、というくだりでエミリーが悲鳴を上げた。


「て、天使様に魔王の血を混ぜたですってええええええ!?」


「あ、あんまりその事を突っ込まないで下さい。自分でも結構ショックな事なんで」


 マキシマが切なそうに涙をちょちょぎれさせるのを見て、エミリーは慌てて口を押さえた。そしてバアルを睨み付けると控えめに抗議した。


「その、もうちょっとどうにか出来なかったの? 説得するなり、別の処置をするなり」


「無茶を言うな。問答無用・不惜身命の状態だったマキシマを相手に、この状況に持ってこれたのだけでも奇跡だ」


 エミリーもそこは理解しているのか、まだ何か言いたげだったが、抗議の言葉は飲み込んだ。代わりに出たのは今後の方針の確認だった。


「ゲイルは捕まえて冒険者ギルドに引渡したから、明日にでも報酬を貰いに行きましょう。で、その後はどうするの? 私の用事はもう済んだし、これ以上アイウーズ市に積極的に残る理由は無いけど」


 皆の視線がバアルに向かう。バアルは厳かに今後の目標を示した。






「マキシマの知人を手伝い、探索者の国『エグリゴリ』の『最奥図書館』を目指す」





 バアル達の旅の第三幕が上がろうとしていた。



遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。でも二月の末くらいまではこんな感じになるのでご容赦下さい。


これからの予定では二、三話+幕間一話位を使ってアイウーズ市日常編を書いて、ドワーフの国編を書き始める予定です。

またグダグダにならないよう気をつけます。次の投稿は来週水曜くらいに上げられたらいいな、という程度です。遅れる場合はまた告知します。

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