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58.悪党再び

前回のあらすじ:お風呂に行ったら『いくさ丸ブリジット』を盗まれたバアル達。風呂屋の店員をボコボコにして窃盗団との繋がりを示す証拠を手に入れ何とか『いくさ丸ブリジット』の場所も分かった。だが窃盗団との対決は不可避の状況、どうなるバアル達?

バ「絶対誰かが仕組んでると思う」

作「何の事だか分かりませんね」

 バアル達が宿に戻る頃には既に十一時を回っており、既にエミリー達は風呂から上がっていた。アナトー、カルニウェアン、カミラは一緒にロビーでバアル達の帰還を待っていたが、エミリーは居ない。疲労の為就寝したのだろう。


 アナトーは帰ってきたバアルを見るとロビーのソファーから立ち上がり、即座にバアルの下まで近寄って来た。


「お帰りなさいませ、バアル様。随分お時間がかかりましたね、何か問題が御座いましたか?」


 アナトーはバアルの後方にマグナダインが居ない事に気づくと、眉を寄せて訝しげな表情を作る。バアルはアナトーを促してカルニウェアンとカミラが一緒に囲んでお茶を飲んでいるテーブルまで近づいた。カルニウェアンは眠そうな目でバアルを見上げると、手をひらひらと振りながら挨拶をする。


「お帰りなさい、バアル。…マグナダインはどうかしましたか?」


「ありゃ、本当に居ないですね。どうしたんですか?」


 カルニウェアンに続き、カミラも不思議そうな顔でバアルを見る。アナトーも説明を求めるようにじっとバアルを見つめる。バアルは受付の青年に聞かれないように声を潜めながら喋りだした。


「少々問題が発生した、一旦俺の部屋に全員集まるぞ。マグナダインは後から来る。エミリーは寝たのか?」


「ええ、大分疲れてましたから」


 カルニウェアンが首肯するとバアルも了解したと頷いた。


「ならばいい、寝かせておけ。明日別途説明しよう。では行くぞ」


 そしてバアルは率先して歩き出す。それに首を捻りつつ女性陣、そしてドラゴン組が続いた。



 ……


 バアルの部屋に着いた一行は、アナトーが『光球ライト』の魔術を使って明かりを灯すと、周りを囲めるようにテーブルを移動させてバアルがそこに公衆浴場から持ってきた書類を載せた。

 ベッドに座って眠そうに目を擦っていたカルニウェアンが真っ先に嫌そうな顔をする。


「……何ですか、その書類」


「この街に居る窃盗団が警備隊の一部と癒着関係にあるという証拠書類だ」


「おやすみなさい」


 バアルの台詞を聞き終わった瞬間、カルニウェアンは全てを投げ出してベッドに潜り込んだ。


「待て待て、お前も知恵を貸してくれ」


「もういやー! お風呂に行っただけで厄介事を引っ張ってくる上司はイヤー!」


 枕で頭を隠して何も聞かなかった事にしようとするカルニウェアンだったが、バアルに後ろ襟を掴まれベッドから引きずり出される。


「仕方無かったのだ。ブリジットが窃盗団に連れ去られ……いやおそらく窃盗団のアジトを突き止める為に付いていったのだと思うが…、風呂場で居なくなってしまったのだ」


「なんでブリジットがそんな事するんですか!?」


「風呂場に行く途中、冒険者ギルドの前で窃盗団の首領の懸賞金を見てな。ブリジットなりに財政に貢献しようとしたのかも知れん」


 バアルが襟を離すと、カルニウェアンは服を整えて、諦めた様にベッドに座りなおす。ふくれっ面のままだったが、話をちゃんと聞く気にはなったようだ。


「ブリジットの事だからほっといても帰ってくるでしょうに…。ああ、マグナダインが居ないのは迎えに行ったからですか」


「そうだ。探すフリ…もといある程度探した、と言う事実が無いと怒られそうだったからな」


 カルニウェアンは溜息を吐きながら前髪を玩び始める。


「むしろ勝手に出ていったブリジットを怒るべきでしょうけどね。どうやって連絡を取ったんですか?」


「いや、書置きなどは一切無かった。勘で行動しただけだ」


 プチ


「……痛い……」


 バアルの適当一直線な行動に、思わず手を滑らせたカルニウェアンは弄っていた髪の一部を抜いてしまう。バアルは痛ましそうにそれを見ていたが、取り敢えず文句が飛んでこない内に先を続ける。


「だがマグナダインが聞き込みをしたところ、公衆浴場の店員達がどうも窃盗団と通じているのでは無いかと言う予想に至った。そしてマグナダインがカマを掛けてみたら大当たりというわけだ」


「そして乱闘、情報収集、いや情報略奪して帰ってきたわけですね、分かりました」


 目に涙を浮かべたカルニウェアンはバアルの言葉を引き継いで結論を言う。バアルもそれに頷いて肯定する。

 その間、カミラとアナトーは書類の中身を精査していた。


「定期的に東大門の衛士詰所への賄賂が送られている以外に、小門の衛士詰所への送金についての記録もありますわね」


「……知らない人名ばかり書いてありますねぇ~。街のお偉いさんかな? 明日ベネットさんに聞いてみますか」



 カルニウェアンも二人が見終わった書類を見始める。そうやって三人が書類を見ていると、部屋のドアがノックされた。


「誰だ?」


 誰何の声に対し、くぐもった声が返ってきた。


「俺だよ、マグナダインだ」


「鍵は開いている。入れ」


 バアルの許可が飛び、ドアの近くにいたスコットが気を利かせてマグナダインに先んじて扉を開ける。扉の先には『いくさ丸ブリジット』を担いだマグナダインと、…フードを被って顔を隠した男が居た。


「マグナダイン、後ろの男は何者だ?」


「説明するから中に入れてやってくれ」


 スコットがチラリとバアルを見る。バアルが軽く頷くと、スコットは脇にどいて二人を通し、扉を静かに閉めた。マグナダインに付いて入ってきた男は居心地悪そうにバアル達を見ている。


「まずはおかえり、マグナダイン、ブリジット。ブリジット、今度からは一言言ってから移動してくれ」


「申し訳ありませんでした、バアル様」


いくさ丸ブリジット』から殊勝な謝罪の言葉が発せられる。それにマグナダインはフォローを入れた。


「保管場所から盗まれる時にブリジットも抵抗しようとはしたんだが、どうやっても悪目立ちする事になりそうだからと人目が無くなるまでは大人しくしようとしたんだと。だけど盗人が堂々と色街の中を抜けて行くし、路地裏には浮浪者とかが居て中々タイミングが掴めない内に保管場所に着いてしまったらしい。こりゃ色街の人間は窃盗団とかなり密接な関係かもな」


「目撃者を黙らせる事が可能な位か。これは厄介かもな。…で、その男は?」


 バアルが促すと、マグナダインは男の前からずれて男を前に出させる。そして頭に被っていたフードを取ると、そこには疲れた顔をした中年男性の顔があった。


「……誰だ?」


「……名乗ってはいなかったが、顔は覚えていると思ったんだがな。お前さん達に潰された盗賊団の元頭のフィリップだよ」



 男は二度に渡ってバアル達に苦しめられた不幸な盗賊団の頭領だった。



 ……



「あ、私に向かってニンニク玉ぶつけてきた人じゃないですか~~!! ココデアッタガ百年目!」


 ギラリと牙を剥き出し目を赤く光らせ始めたカミラを、マグナダインが頭にチョップを当てて止める。


「痛~~い!? 何するんですか」


「話が進まないからちょっと黙っててな。後で血でも何でも吸えばいいから」


「勘弁してくれ。録に食べてないのに血まで吸われたら死んじまう」


 フィリップは警戒心も顕にカミラから距離を取る。バアルは静かにするようカミラに注意するとフィリップに向き直った。


「森で遭遇した盗賊団の者か。ここで何をしているんだ?」


「その前に一つ聞かせてくれ。俺の手下達はどうなった?」


 一応という感じで感情をなるべく排除した声音でフィリップはバアルに尋ねた。それにアナトーが不快気に眉を顰めるが、バアルは手の平をアナトーに向けてまあまあと落ち着かせる。


「宣告した通り、改心してなければ悲惨な目に合っているはずだが。どうなのかな、アナトー?」


「は、少々お待ちを」


 アナトーは自らの影に一声かけると、影から一匹の鼠が出てきた。『呪鼠カーズ・ラット』の長である。

 アナトーはしばし『呪鼠』の長と見つめ合った後、顔を上げる。


「フィリップの部下は改心する素振りも見せなかったので、全員に呪いをかけて放置したそうです。あと盗賊団が貯蔵していた木の実が美味しかったと申しております」


 *注:『呪鼠』の食欲は余り多くありません。人間大のお肉×沢山とか『呪鼠』が総出で食べても胃に優しくない量になります。


「……それは生きていると解釈していいのか?」


「運が良ければ。呪いによって衰弱死する可能性はありますが、それは私の知るところではありません」


 フィリップの質問にアナトーは素っ気なく答えると、そのまま余所を向いて黙る。『呪鼠』の長もフィリップに向かってちょっと威嚇すると、アナトーの影に戻っていった。


 フィリップは心にあった感情の残滓を取り去るように一息吐くと、バアルに顔を向ける。バアルは何を思ったのかフィリップを手で制すと、マグナダインに顔を向ける。


「待て、マグナダインから一応状況を聞こう。どういう経緯で合流した?」


 声をかけられたマグナダインは、『いくさ丸ブリジット』に「盗人の手で柄を触られましたから、マグナダイン様の手で拭いて下さいな」と言われ、はいはいと応えながらタオルで『いくさ丸ブリジット』を拭こうとしていたところだった。


 マグナダインは急に話が自分に戻ってきた事に不意を突かれた様だったが、『いくさ丸ブリジット』を拭き始めながら答えた。


「別に大した事じゃねぇよ。『いくさ丸ブリジット』が連れて行かれた一時保管庫とやらの地下に檻があってな、そこに捕まってたんだ。まあ見捨てても良かったんだが窃盗団について色々知ってるらしいんで一応連れてきた」


いくさ丸ブリジット』を拭く手を休めず淡々と答えるマグナダイン。『いくさ丸ブリジット』は嬉しそうに柄の宝石を瞬かせ、スコットの腰に下がっていた『魔人剣アイン』はその様子を見て唸り声を上げる。


「くう…、いいなぁ…。我もあんな風に拭いてもらいたい…」


 その声にフィリップはギョッとしてスコットの腰を見る。そしてスコットが佩いている『魔人剣アイン』から茨がほんの少し出てうねっている様を見て目を丸くする。


「……なんて言うか、相当な規格外品だな、あんたら」


 呆然と呟くフィリップは薄気味悪そうにバアル達を見て、バアルの顔で視線を止めて顔を顰める。バアルの顔に浮かんでいるのが妙に楽しそうなニヤニヤ笑いだったからだ。


「なんだ、ご機嫌だな」


「うむ、先ほどお前が見せた仰天の表情が中々に面白かったのでな。久しぶりにイタズラ心が疼いたぞ」


「だからって地震とか起こさないで下さいね。あれ後片付けが面倒なんですから」


 カルニウェアンがジト目でバアルを見る。過去の行き過ぎたイタズラを責められたバアルはそっと目を逸した。そして場の空気を戻すように咳払いをすると、フィリップに問いかけ始める。


「んんっ…。で、フィリップは何故一時保管庫に捕らえらていたのだ? 高値で売れるのか」


「俺の首にかかった賞金は安くは無いと思うが、泥棒がわざわざ賞金稼ぎに転職する程の額でもねぇよ」


 バアルの冗談に頭痛を催したのかフィリップは手の平で自らの額を支えながら下を向く。


「お前さん達に真っ当に働けと脅されてからな、俺の勘がしばらくは大人しくしておけって囁いてたからタナリンの町に潜伏するつもりだったんだ。そしたら思いっきりお前達が町に入るところ見ちまって慌ててアイウーズ市まで来たんだよ」


「ほう、見られていたのか。こっちは気づかなかったがな」


「そりゃ遠目だったし、見た瞬間細心の注意を払ってこっそり逃げ出したからな」


「遠目でよく私達に気付きましたね?」


 カルニウェアンが横から小首を傾げながら聞くと、フィリップは馬鹿にされたと感じたのか、口の端を歪める。


「人間があんな大荷物が入った荷車引いてんだぞ? この界隈じゃ二人とおらんわ、そんな奴」


 すっかりその光景が見慣れていたバアル達は、また一つ自分達の悪目立ち要素を発見したのだった。


「どうしよう…、もういっそファフニールを馬の姿に変えるしか…」


「やだぞ、そんなの」


 頭を抱えたカルニウェアンがぼそりと呟くと、ファフニールがすかさず異議を唱えた。

 額に一粒の汗を浮かべたバアルは、話を進める為に一旦新事実を棚に上げてフィリップに先を促す。


「ま、まあいい、先を続けろ」


「アイウーズ市に入ってからは色街の馴染みの店に隠れてたんだ。んで少々現金が足りなくなって来たから、以前から懇意にしていたゲイル窃盗団の連中に金を貰いにいったんだ。以前俺らが流した略奪品の支払いがまだだったんでな」


「ああ…、踏み倒されたか」


 マグナダインは拭き終わった『いくさ丸ブリジット』を背に直しながら感情の篭ってない調子で呟く。それにフィリップは特に気にせず頷いた。


「そうだ。手下を一人も連れずに来た、って事が連中に違和感を覚えさせたらしいな。金は支払われず、あっという間に俺の盗賊団が壊滅した事がバレて、牢屋の中に放り込まれた。明後日ぐらいには俺の死体がカラド湖に浮かんでたかもな」


「盗賊の世界も色々大変だな」


 バアルは興味深気にフィリップの話を聞いて、ふむふむと頷いていた。するとフィリップの方がバアルに質問を返してきた。


「ところで、あんたらもゲイル窃盗団と事を構えたようじゃないか」


「む? そうだな」


「ゲイルの野郎はこの街で商売始めて長い。街のお偉いさん方とも細くない繋がりがある。下手をすれば衛士隊に働きかけて、何らかの罪をあんたらに被せに来るかも知れないから気をつけた方がいいぞ」


「……そんな風に助言をくれるという事は、何が望みだ?」


 バアルは表情を消して、フィリップを静かに見つめながら聞き返す。それにフィリップは始めて笑みを浮かべる。


「あんたらが俺にかけた呪い? かなんかを解いてくれ。それと金を金貨十枚ばかり融通してくれ。見返りにあんたらの手が後ろに回らない様に知恵を貸す」


「貸すのは知恵だけか」


「悪いが金もコネも腕力もねぇ。だが悪知恵はある。ついでに言うとゲイルや窃盗団についての知識もな」


 バアルは腕を組み、人差し指で二の腕をトントンと叩きつつ、しばし黙る。その間バアルはじっとフィリップの目を見ていた。そして未だ表情を変えずに淡々とフィリップに語りかける。


「呪いを盾に無理矢理働かされるとは思わないのか?」


「そうなる可能性は十分あるな。だがな、バアル。あんたは一度俺との交渉に乗った事がある。言ってみて損は無いと判断したんだよ、俺の勘がな」


 フィリップが無表情そう返すと、バアルは愉快そうに頬を歪めた。


「呪いについては解いてやろう。というより森から出た時点でお前に呪いをかける鼠は居なかったんだがな。金も言い値で払ってやろう。その代わり、俺達の事を邪魔しない、口外しないように魔術で縛らせてもらう」


「……金を値切らないのは何でだ?」


 フィリップとしては値切られる事を前提で吹っかけたつもりだったので少し困惑していた。バアルはその表情を見て、イタズラが成功したとほくそ笑む。


「何、俺達の手が後ろに回らなくなるだけでなく、どうせならゲイルを捕まえてギルドに突き出そう。そうすれば金貨七十枚の釣りが来る」


 いつの間にか契約内容が変更されていたが、異議を唱えるには周りが怖いフィリップは顔を引き攣らせて絶句するしかなかった。


 その表情にバアルは愉快そうに笑うのだった。



 ……



「……はい、施術終了です。いいですか、私達に害が及ぶような事をしたら……、ボンッ!ですからね」


「どこが…、いややっぱりいい……」


 カルニウェアンによって『強制ギアス』と『懲罰パニッシュ』の魔術を施されたフィリップはげんなりした表情で壁にもたれかかる。だが我らが魔王バアルは気にしない。


「さあ、早速知恵を貸して貰おうか。まずは現状説明をしよう」


 そしてバアルは疲れた様子のフィリップに公衆浴場に入ってからこれまでの事を手短に伝えた。それを聞いていたフィリップの顔色はどんどん悪くなっていった。


「もうちょっと頭が回る奴だと思ったら飛んだ脳筋じゃねぇか…。えーと、マグナダインだったか、その情報を吐かせた店員に口止めとかしといたか?」


「様を付けなさいな、この盗人!」「様を付けんか、この中年!」


「止めてくれ、呼び捨てでいい!」


いくさ丸ブリジット』と『魔人剣アイン』から同時にフィリップに対して物言いが入ったが、心底嫌そうな顔をしたマグナダインが否定したので押し黙る。

 フィリップは微妙な表情で黙ったまま無精髭を撫でつつ、マグナダインの返事を待つ。


「あー、面倒だったんで当身で気絶させてそのまま放置した」


「分かった…。どいつもこいつも考え無しってのがな」


「あら、随分生意気な言い方をしますわね? カミラけしかけんぞこの野郎」


 アナトーは手で鞭を弄りながらドスの効いた声でフィリップに脅しをかける。


「ぎゃおおおおお! 食べちゃうぞー! ……ってのせないで下さいよ、アナトーさん。流石の私でも中年オヤジは……、あれ? 有りかも。…ジュル」


 巫山戯ていたカミラは、ふと真剣な表情でフィリップを暫く見つめ、涎を啜る。それを見たフィリップは慌てて両手を上げて降参する。


「悪かった、無礼な言い方をして失礼した。だが商売のパートナーとしての忠告って意味も含んでることは理解してくれ。もうちょっと落ち着いた対応を望むぞ」


 バアルもちょっと反省して頬を掻きつつ呻き声だけで肯定した。アナトーは苛立ちを含んだ表情を変えなかったが、それ以上は何も言わなかった。


 そんな中、スコットが前に出て公衆浴場で得た書類をフィリップに渡す。


「ゲイル窃盗団と一部の衛士隊との癒着の証拠書類です。他にも何名か度々名前が書かれている者も居ます。街の重要人物かも知れないので確認して下さい」


 スコットの解説を聞いて、ああそれなりに手回しはしてたんだな、とほっとしながらフィリップは書類を受け取り、中身をチェックしていく。

 手馴れた様子で書類を精査するフィリップは、盗賊と言うより中堅事務員を連想させた。


「ふんふん、これは取引している連中全体の一部に過ぎないな。ゲイルと取引している奴の名前が幾つか抜けてる。俺が知らん奴の名前もあるがな。おっとこいつは……」


 フィリップはあるページで書類をめくる手を止めた。バアル達は何があったのかと視線をフィリップに集中させる。


「何が書いてあったんだ?」


「大物、いやある意味小物か? とある市議会議員の名前が書いてある」


 そこでピタッとバアル達の動きが止まり、カミラ以外の面々の視線がカミラに集中する。視線の集中砲火を受けたカミラの額からスゥっと汗が一粒流れ落ちた。


「へ、へ~~、さっき見た時は気づかなかったなぁ~~。なんて名前ですか~?」


 カミラが震える声でフィリップに尋ねる。フィリップは異様な空気になった理由が分からず困惑していたが、書類を皆に見えるように裏返すと、一人の人名が書かれている箇所を指差した。





「アンジェロ・カンビオーネ。大物市議デニーロ・アルベールの腰巾着って言われてる奴だ」





「セーーーーーーーフ!!」





 カミラの心底安心した声が部屋に響いた。






現在ある程度のとこまで先を書いてるんですが……、何かまた長くなりそうです。こんなチンタラしてたら他の国に行くのは何ヶ月先になるやら。でも手は抜きたくないので、もうしばらくエロハイム共和国編にお付き合い下さい。


追伸:12月から来年2月まで相当忙しくなりますので、更新頻度がガクンと落ちます。更に不定期になると思いますが、どうかご容赦下さい。

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