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第3章
令和4年12月上旬。
良作は・・・
意を決して、理沙のいまの実家に電話をした。
「・・・はい。」
電話口に出たのは、若い男だった。
どうやら、理沙が手紙の中で書いていた、例の従業員と思われる。
「こんにちは。突然のお電話で申し訳ありません。私、栃木県矢板市に住む、高田良作という者です。あのぅ・・・田中理沙さんは、ご在宅でしょうか・・・?」
「ええ、社長なら、奥の部屋にいらっしゃいますよ。いま、呼んでまいりますので、少々、お待ち下さい。」
男が告げ、受話器を保留すると、なつかしいメロディが、良作の耳に飛び込んできた。
(これは・・・聖子さんのヒット曲じゃないか。)
かつて、理沙と手をつないで下校したときに、二人が好んで歌っていた、あのなつかしい、松本聖子のヒット曲。
理沙がまだ、あのころの良作との想い出を大切にし、電話の保留曲にまで、その「想い」というものを残す・・・
あの素直で優しく、誠実な理沙らしい、いじらしい選曲だった。




