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第118話 ディナーと、赤外線と、魔力発振

「お招き頂き、ありがとうございます」


 招待されたディナーでマイラがランシェにぎこちなく挨拶する。

 テーブルマナーは教えたけどどこまで身についたか。


「見たように身内だけの席である。もっと砕けても構わん」

「お気遣い感謝します」


 俺はマイラの席を引いてやった。

 マイラが座る。

 まだ緊張しているな。


 俺も座り、食事が始まる。

 前菜が運ばれてきた。

 通信魔法でマイラに細かく指示を出す。

 ミスなく食べている。


 もっとも粗相したところで、ランシェが罰するような人だとは思えない。

 スープが運ばれてきた。

 マイラが音を立てて飲む。


 ランシェは笑っていて、咎めたりはしない。


「ところで、魔法陣の技術は教えてくれないのであるか?」

「オルタネイト伯爵と交渉してくれ。伯爵にもろもろの権利を譲った」

「であるか。貴族が持っている権利を侵害すると外野がうるさいであろうな」

「そうだね。手ぶらなのも何だから、今日は赤外線の魔道具を持ってきた」

「赤外線とな。初めて聞く言葉であるな。詳しく説明致せ」


 料理は魚料理に移っていた。

 マイラは骨と格闘している。

 指を使い始めたな。

 仕方ない奴だ。

 マイラに通信魔法を送り、ナプキンで指を拭いてやった。


「見えない光があるんだよ。それを見る。暗闇でも見えないから、隠密行動にぴったりだ」

「後で存分に試すと致そう」


 それから話はバリアブルの話になった。

 タンタルは相変わらず、召喚には応じていないらしい。

 バリアブル領の閉鎖は今も続いている。


 ソルベが運ばれてきて、マイラが一口で平らげる。

 落ち着いて食えよと言いそうになった。


 肉料理、デザートと続いてお茶が運ばれてきて、ディナーは終わった。


「マイラと言ったか、そちは戦闘が得意と聞いておる。どうだ、暗部の指揮をとってみないか」

「まだ若輩者なので手に余ります」


「タイト、そちが言わせておるのだろう」

「ばれましたか。戦闘能力はともかくマイラには無理だと思う」

「そうであるか。タイトが言うのであればそうであろう」


「やらせるなら、レクティの方が適任だと思うな」

「オルタネイト伯の息女であるか。政治的にはちとな」


「そんなに人材が不足しているの?」

「ひも付きでない優秀な人材がおらんのだ。滅多な者には任せられんのである」

「分かったよ。今後、候補がいたら、連れて来る」

「頼んだのである」


 王宮を後にして学園の寮に馬車で帰る。


「緊張したぁ。食事の味がしなかった」

「いい経験になっただろ」

「うん。むっ、閃いた」


 マイラは紙と絵の具と筆を収納魔法から取り出すと、魔法陣を描き始めた。


「出来た」

「機能しているかな」


 簡単な測定の魔道具で色々と計測する。

 魔力が出てるな。

 一定の波長だ。


 もっと詳しく調べないと分からないが、前世で似たような物があったな。

 そうだ、水晶発振だ。

 これは凄いぞ。


 デジタル機器が作れる。

 水晶発振なくしてコンピューターは語れない。

 前世で死んだ時はセラミック発振を使っていたらしいが、とにかく応用が広い。


 簡単なのを作るとしたらデジタル時計だな。

 他の魔法陣と組み合わせれば出来るだろうが、今はパーツが足りない。

 それは追々でいいだろう。


「マイラ、凄い物を作ったな」

「えへへ」


 本当にマイラは侮れない。

 奇想天外な事をやらかす。

 天才とはマイラみたいな人を言うんだろうな。


 いや鬼才か。

 どっちでいいや。


 カウントする魔法陣はないので、それを待つ事にする。

 オルタネイト伯爵の研究班が見事、一緒に使うとカウントする魔法陣を発見。

 表示する魔法陣と合わせて、時計が出来た。


 腕時計が銅貨10枚ほどで生産できるようになったのだ。

 腕時計は爆発的に売れた。


 魔法陣を描く絵の具の副産物である安い薬も好評だ。

 オルタネイト伯爵の名声も高まる事に。


 だが、嫌なニュースも入って暗雲が立ち込めて来た。

 地雷を街道に埋めた奴がいるらしい。

 たぶん、盗賊の仕業だと思う。


 売った奴がいるはずだ。

 国には対処してもらいたい。

 俺も出来る限りの事はするけど。


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