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第117話 オルタネイト伯と、特許と、ラジオ

「タイト君、今回も素晴らしい発明だね」


 オルタネイト伯爵と、王都の屋敷で商談の真っ最中。

 オルタネイト伯爵の口調から敬語が抜けている。

 身内扱いになったという事だろう。


「いや、発明はマイラが」

「そうなのか。マイラ、君も素晴らしい。暗殺の技術だけでなく、こういう事も出来たんだね。これはタイト君の第2夫人は決まりかな」

「私が第1夫人。譲れない」

「はははっ、そうなるかも知れないな。この発明の功績はそれぐらいはある」


「早速なんだけど、魔法陣の形を色々と研究したい。それで、流民にやらせたいと思うんだ」

「ふむ、絵の具の製法は秘匿した方がいいな。絵の具の研究はこちらでやろう。問題は絵の具の肝である魔石の存在をどうやって隠すかという事だな」


「それは無理だと思うな。魔道具と似たような動作をするから、魔石の存在は真っ先に疑う」

「うーん、それはよろしくないな」


「でも、草の種類は分からないかもな」


 絵の具は染料、魔石、ログアナ草の汁、そしてモンスターの歯、爪、骨、血などだ。

 染料は魔法陣には関係ない。

 関係するのは魔石と、ログアナ草の汁と、モンスター素材だ


「だが、採取依頼を出せば、ばれるだろう」

「人を隠すなら人の中。関係ない依頼を出せばいい。余分な草は薬を作れば問題ないと思う」


 マイラがそうアイデアを出した。


「薬師を大量に抱えるのは大ごとだが、何とかなるだろう。薬師ギルドに睨まれそうだがね」

「薬は安く卸せば、スラムのみんなが喜ぶ」


「そうだね。独占して暴利をむさぼったら、薬師ギルドだけでなく色々な所を敵に回しそうだ」


「絵の具はそれで良いとして、新しい図形を発見した流民には懸賞金を出したい」


 俺が提案した。


「それなら、懸賞金も出すが、図形の特許みたいなのを作って使用する毎にいくばくか払おう」


 オルタネイト伯爵はこういう所に好感が持てる。


 そして、色々な魔法陣が発見された。

 その中のいくつかを組み合わせたら、ラジオになった。


 色んな種類の分析機器を作らなかったら実現はしなかったろう。

 最初のは1石ラジオみたいに部品数が少ない奴だったが、試行錯誤でかなり良い物が出来た。


 電波発信機も出来て、放送する土台が揃った事になる。

 出力が物凄く弱いけど。


「ログアナ草を魔法で濃縮したらどうかな」


 マイラがそんな事を言った。


「それはオルタネイト伯爵もやったと言ってたよ」

「余分な物が入っているからだと思う」

「有効成分だけ、抽出するんだな。でもどうやって?」


 現代の日本なら分析機とか、抽出する方法も多数あるんだろうけど、ここは異世界だ。

 魔法はあるが【有効成分を抽出しろ】なんて呪文では発動しない。

 有効成分がどういうものか分かってないからだ。

 プログラム的魔法でも駄目だろうな。


「魔石水とたぶん仲良しなんだと思うの。魔石水と混ぜてから煮る。そして、魔石の成分を取り出せばいいんじゃない」

「そんな事で上手くいくかな。魔石の成分を取り出すのは、前に作った事があるから改良してと」


 やってみた。

 出来た絵の具で光の魔法陣を描く。

 ぼんやりした光のはずが、眩い光を放った。


 マイラ、有能だな。


「どんな所から発想したんだ」

「料理の灰汁取りから、思いついたの」

「麦のふすまとか入れて煮る料理もあるな」


 料理は錬金術というか化学というのをどこかで見た事がある。

 なるほどね。


 ラジオが完成して、魔法陣の魔道具は物凄く流行った。

 作るのが簡単なのもいい。

 簡単な印刷技術で量産できるからな。


 魔石に呪文を刻み込む魔道具だと、こうはいかない。

 その代わり、作り手のイメージで、特殊な物を作るといった事は出来ない。

 新しい図形が発見されない限りは、発展もない。


 魔法陣の発見者であるマイラの名声は、ランシェが晩餐に招くまでに高まった。


「タイトどうしよう。着ていくドレスがない」


 成長期だから、前に作ったのは着られない。


「魔法学園の制服で良いと思うよ」

「何かお土産を持って行かないとだめかな」

「そんなの要らないよ。近所の人に呼ばれたんじゃないから」


 マイラは今からガチガチに緊張している。

 討ち入りは緊張しないのにディナーは緊張するんだ。

 相手が未来の義母だからというのも、あるんだろうな。


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