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落ちこぼれ魔法剣士の大逆転~精霊に愛された双剣使いが王国最強の騎士になるまで~  作者: スギタジュン
終章 王都動乱

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第31話 失踪

多くの応援ありがとうございます。ブックマークを入れてくれた方、評価いただけた方、感謝いたします。

ここから終章。最後までお付き合いいただければ幸いです。


【登場人物紹介】

◆ライナー・ライバック

 本作主人公。王の盾を夢見る魔法剣士の少年。双剣使い。剣技は天才的と讃えられるが、風魔法の扱いが当初あまりうまくなかった。

◆シル

 本作ヒロイン。天真爛漫な風精霊。王都外れの風の森に住む。

◆エリス

 ライバック家のメイド。世話焼きの才媛。勘と臭覚が鋭い。

◆タリア・アーマコスト

 主人公の元婚約者。アーマコスト伯爵令嬢。なぜか主人公の前によく現れ、つっかかる。

◆アルマン・ナウリッツ

 主人公の宿敵。ナウリッツ辺境伯家の嫡男。火炎の魔法剣士。粗暴

◆オーエン

 主人公の友人、よき理解者。騎士訓練校の同期

◆ラインハート・ライバック卿

 主人公の父。騎士爵。近衛騎士団北部方面隊司令。豪胆。

◆アンバー

 主人公の愛馬。陽気で人懐っこい。オレンジがかった茶色の美しい毛並みをもつ。

◆トリスタン

 近衛騎士団第一警邏小隊の指揮官

 精霊石を巡る風の森(グリーン・ブリーズ)の騒動から数週間後。

 騒動の主犯と思われるナウリッツ辺境伯嫡男アルマンは、依然として行方知らず。

 その足取りはつかめていない。


 あれから、シルはライバック家の屋敷に居候している。


「よかったな、シル。うまく根付いたようだ」

「うん。ライナーのいうとおりにしてみてよかったわ。この場所は自然の気がうまく溶け合っている」


 庭で花の世話をしているシルが微笑む。

 焼けた花園から救出した白精蘭の球根はふたたび芽吹くか心配されたが、いまのところ問題なく育っている。


「それから、これをお前に……」

「なあに? あれぇ、なにか気配があると思ってたけど、これだったのね」

「そうだ。まえにお前がくれただろう? 粉々になった精霊石の欠片を」


 風の森の騒動のあと、俺たちは花園を隈なく歩いた。

 そのとき精霊石の破片がわりとたくさん集まった。


 シルはそれらを俺に譲ってくれた。

 細かいので売ってもおそらく買い叩かれる。

 シルからは、剣の柄の装飾にでもどうかと勧められた。

 だが、あいにく俺は剣を華美なものにはしたくない。


 使い道に困ったが、せっかくなので、俺は知り合いの宝飾店にそれらを持ち込んだ。


「精霊石のペンダント。お前に似合うと思ってな。さっき出来上がって屋敷に届いたところだ」

「えっ、いいの?」

「ああ、もちろんだ。お前はいつも白精蘭の世話に一生懸命だからな。たまには贅沢をしてもいいだろう?」

「ほんとう? わぁ、うれしいわ」


 そう言ってシルはクルクルと空を舞った。


 と、そこへメイドのエリスが姿を現わす。


「ライナー様、少しお耳に入れておきたいことが……」


 当初、反目するかもしれないと心配された二人だが、表面上は仲良くしてくれている。

 シルがにこやかにいう。


「エリスさん、わたしは外しましょうか?」

「いいえ、その必要はありません。泥棒ねこ――じゃなかった、シルさんもどうぞ聞いてください」


 挑発的なエリスの言葉にシルの眉がぴくっとつりあがる。


「あら、ごめんなさい、悪いわね。ライナーはいつもわたしと一緒なので、たまには外そうと思ったんだけど。クスクス」

「まぁ、お構いなく、あなたは護衛対象の方ですもの。ライナー様にとってはお仕事だから仕方ありませんわね。ふふふ」


 訂正。やはり、この二人が「仲良く」というのは間違いだ。

 両者とも隙あらば、互いに言い負かそうとしている。

 刺々しくてかなわない。困ったものだ。


「あーあのな、エリス。確かに近衛騎士団からは風精霊を保護するよう指示されているがな……」


 俺は別に「仕方ない」とか思っていない。

 王国での保護対象となったシルを護衛する担当となって光栄だと考えている。

 まあ、しかし、そんなことを言えば余計にこじれそうなのでやめておく。


「ところで、その、エリス、話というのは?」

「ええ、例の件です。関係者から情報が入りました」


 以前、俺は、エリスに辺境伯家の内部事情を探ってくれと頼んでいた。

 エリスはきっちりと内偵を進めていてくれたようだ。ありがたい。

 関係者というのは、たぶんナウリッツ辺境伯の屋敷に勤めるエリスの姉のことだろう。


「何かわかったのか?」

「はい、辺境伯家が奇妙な物を大量に発注しているそうです」

「奇妙な物?」

「宝石用の小箱です」


 小箱が奇妙な物なのか?

 いや、まて……


 泉の花園の争いのとき、あのローブの男は、精霊石を小箱にしまっていた。

 大規模魔法が発動する直前まで、シルさえもその存在に気が付かなかった。

 あの小箱は特殊なつくりで、魔力の漏れを防ぐ役割があるのかもしれない。

 小箱を使う目的は、おそらく、魔力が込められた精霊石を秘匿することと考えていいだろう。


「エリス、その小箱はいくつくらい発注されたか、分かるか?」

「姉の話では、ざっと一千」

「そ、そんなに?」


 なんてこと……この上なくやっかいだ。


 花園の戦闘で使われた精霊石は、せいぜい三、四個。

 たったそれだけでもあれほどの威力。

 やつらが触媒に使える精霊石を一千個も持っているなら、大きな脅威だ。


 王軍は……近衛騎士団は……王都を守りきることができるだろうか……。


「ライナー様? どうされました? なにやら深刻な顔をなされてますが?」

「あ、ああ、大丈夫だ。それで、アルマンの所在は?」

「申し訳ありません。いまのところ行方は分かりません。少なくとも辺境伯邸には戻っていないようです」


 だとすると、ヤツは、あの領地にはいないのかもしれない。


「わかった、ありがとう。調査の方は引き続き頼む。俺はこれから、近衛騎士団に出向く」

「そういえば、本日は、公開訓練の日でしたね。ライナー様、頑張ってきてください」

「ああ、ありがとう。行ってくる」


❖*✽*❖*✽*❖*✽*❖


 昼下がり。

 近衛騎士団の訓練場。


 訓練参加者が一同に集まっている。

 そして、なぜかアーマコスト伯爵家の令嬢タリアも観覧に来ていた。


「ライナーさん、あなたの最初の対戦相手はオーエンさんと聞きましたけど……」

「ええ、まずは年の近い者同士が実戦形式で仕合います」

「私はオーエンさんを応援してもよろしいかしら?」

「ええ、タリア様の声援、あいつも喜ぶと思いますよ」

「はぁ、ライナーさんは……」


 俺は思ったとおりのことを口にしただけなのに、タリアは残念そうにため息を吐いた。


「……ほんとうにダメですわね。まるでわかっていらっしゃらないようです……もういいですわ、負けてしまいなさい」

「なっ……」


 いったい俺が何をしたというのだ?

 わけがわからない。


 追い打ちをかけるように、シルもタリアの言葉に同調する。


「その点は同感ね。ライナーはほんとにダメだわ。一回くらい痛い目を見ればいいのよ」


 しかし、シルとタリアの希望はかなわない。


 オーエンと対峙した俺は、間合いを詰めて、上段から一閃。

 審判から勝負ありの声が掛かる。


 剣戦はほとんど一瞬で終わった。

 二戦目、三戦目もあっけなく片が付く。


「どうした、オーエン? 騎士の矜持きょうじを見せてみろ」

「ま、まいった……降参だ」


 周囲からどよめきがあがる。

 オーエンは決して弱くない。

 が、力量の差は明らかだった。


 俺の剣技はかつてないほど冴えている。

 今日の試合では魔法は使っていないが、剣と魔法もすでに高い水準で合一ごういつに至っている。


 これもシルと訓練を続けたおかげだな……。


 その後、何人かと仕合って勝利を重ねた。

 久しぶりの対人戦だったが、悪くない感触だ。


「オーエン、近衛騎士に昇格したいなら、もっと精進したほうがいいぞ。いつまでも見習いでは恰好がつかないだろう?」

「あ、あのなぁ、おれは騎士見習いの同期のなかでも剣技は上の方だ。お前がおかしいんだよ! しかし、ライライ、踏み込みがずいぶん早いな」

「そっちの斬り返しもなかなかだぞ。ただ、一方向ばかり集中するな。よそがお留守になっている。集団戦になれば不覚をとりかねない」

「そうだな……肝に銘じておくとするよ」


 オーエンとともにさきほどの立合いについて振り返っていると、タリアたちが近づいてきた。


「はぁーオーエンさん、期待しましたのに……なんという体たらく……」

「め、面目ありません、タリア様……」

「そうよ、そうよ! ライナーをとっちめるとこ見たかったのに」

「シルちゃん、無茶言うなよ……」


 シルとオーエンはこれまで何度も言葉を交わしている。

 この頃はずいぶんと互いに打ち解けているようだ。


 苦笑する俺をよそに、女二人はオーエンの負けっぷりを責め続ける。

 遠慮というものがない。困ったものだ。

 オーエンを負かしたのは俺なのだが、さすがに友人のことが気の毒になった。

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