第41話 観光
「あー、バレちゃった!」
ボリスは、ついに覚悟を固めたのか、自分が王子だと認めた。
王子様って、もう少し優男っていうイメージがあるのに――
こんな筋骨隆々の立派な体の王子様でいいのか!?
「どうして、教えてくれなかったんだよ、ボリス!」
「悪い。さすがに、いろいろと面倒ごとになっちまうからさ。それに、色眼鏡で見られたくなかったんだよ」
「だからって、隠すことないだろ!」
「ごめん」
ボリスはなぜか里帰りしたくないような雰囲気がビンビンだった。
「それでは、ボリス様、行きますよ?」
「爺、やっぱり俺も行かなくちゃダメ?」
「当たり前です。王もボリス様と久しぶりに会えるのを楽しみにしているんですよ」
「見逃してはくれないよな?」
「そんなことしたら、私の首が飛びます」
「わかったよ、行けばいいんだろう。宮廷世界は、ドロドロしててめんどくさいんだよ。王位継承権って、返上できないのか?」
「滅相もないことを、言わんでください。爺の心臓が止まっちゃいます」
「悪かったよ」
こうして、ボリスの祝賀会参加も決定した。
ルーシー王国が用意してくれていた馬車で、俺たちは港町・聖ペテルブルグを観光する。有名な海の近くの大聖堂も簡単に許可が下りて、ナターシャとマリアさんは興奮していた。
「先輩、すごいですね!この大聖堂、なかなか見学許可下りないことで有名なんですよ!!」
「そうなのか」
「はい、珍しい美術品がたくさんありますし、この構造も美しくて有名なんですよ。先輩とここをデートできるなんて最高ですね。すごい!ああ、ステンドグラスもオシャレで、綺麗!!」
「神官がそんな俗物みたいなこと言っていいのかよ?」
「いいじゃないですか!死にそうな冒険をして、頑張ったんですから!!」
「まあ、今回はナターシャの功績が一番大きいしな」
「そうですよ、少しくらいはしゃいでも罰は当たりません。まぁ、ずっと行きたかった場所を見ることができて、興奮しすぎて、我を失っているのは認めますが!」
「やっぱり、神官だからな。こういう場所を見ることができたら、それは興奮するよな」
「はい!でも、それだけじゃ、ないですよ?」
「えっ?」
「好きな人と、自分が見たい場所を一緒に歩けるなんて、幸せなんですよ?だって、私だって女の子ですからね!」
「ナターシャ……」
「あの時、先輩の手を握ることができて、本当に幸せでした。痛みなんて、どこかに吹っ飛んじゃうくらいで!あの時間が永遠に続けばいいのにって、不謹慎ですけど、そう思ってましたよ!」
「……」
「だから、先輩ありがとうございます!私にもっと、あなたと一緒にいられるチャンスを作ってくれて、本当に嬉しいですよ?もしかしたら、本当にあれが最後だと思っていたんですから――先輩だって、そうだといいんですけどね!私とおんなじ気持ちだといいのになぁ」
いつになく、しおらしいナターシャが見られた。
「それは、俺のセリフだよ。あの時、おれを助けてくれてありがとうな、ナターシャ!お前がいなかったら、たぶん、俺はずっと腐ってた。こんな素敵な場所に一緒に来ることはできなかったよ。やっぱり、お前は最高の相棒だよ」
再会した日の夜から今までのことを思いだす。
※
「だいたい、ニコライさんもニコライさんですよ。先輩が一番献身的にパーティーを支えてきてくれたのに、それに感謝するどころか罵声を浴びせて追放するなんて、筋が通りませんよ。そんな人だとは思わなかった。恋愛が絡むとひとってそんなに変わっちゃうんですかねっ!? こうなったら、私が闇討ちに行ってやる」
「先輩は、伝説級の冒険者になるべき人です」
「あんたなんかには、笑わせない。先輩の夢を――私の夢を――私たちの夢を、あんたたちみたいなゲスには笑わせない。先輩、いつまで遊んでるんですか? 私たちの夢の前では、世界ランク1位なんて通過点でしょ。私にもっと夢を、見せてくださいよ」
※
このナターシャの言葉にどれだけ救われたのか。俺は、きちんと感謝を伝えなければいけないと思い、彼女の手を握った。みんなからは距離があるから、大丈夫だ。
「えっ?」
「本当にありがとう。ナターシャ!」
「急に約束破らないでくださいよ、先輩のバーカ」
ナターシャはそう言いつつも、嬉しそうな顔で手を強く握り返してくれる。
外は夕日によって、オレンジに色づいていた。
今日はお昼の更新は難しいので、その分を夜に回したいと思いますm(__)m
楽しんでもらえると嬉しいです!




