第14話 ふたりの嘘なう
俺たちは、村長さんたちから離れて、馬車に戻っていた。
「ナターシャ、どういうことだ? なんで、俺のことを婚約者だって嘘ついたんだよ」
「だって~、年頃の男女が付き合ってもいないのに、ふたりで旅してるなんて、ただれた関係だって、疑われちゃうじゃないですか~」
「そうなんだけどさ、そうなんだけどさ~」
「だから、私たちの関係をわかりやすく、表現すると"婚約者"かなって?」
「なに、その発想の飛躍。天才すぎるだろ」
「へへへへ~」
「いや、褒めてないからっ」
ナターシャは抜群の頭脳で、俺のことを煙に巻いてしまう。いや駄目だ。今日こそは、はっきり言ってやらないといけない。
「だいたい、俺たちは再会してから、まだ3日だぞ」
「違いますよ、先輩? 馬鹿言わないでください」
「はぁ?」
「もう、8年経っているんですよ?」
「……」
くそ、何も言えない。
「私が、あなたのことを好きになってから、もう8年も経っているんですよ」
「でも、会えない時間の方が長かったじゃないか」
「その期間に、私があなたのことを考えなかった日が何日あるか、教えてあげますよ。0日です」
「ナターシャ――」
「バル攻防戦に、先輩が参加すると聞いて、大けがしちゃったらどうしよう。死んじゃったらどうしようってずっと心配だったんです。だから、先輩がS級になるまでは会わないっていう約束を破って後方支援要員になったんです。3日前の再会の時だって、先輩がたまたま、近くにいるって知って、嬉しくて、我慢できなくて、来ちゃったんです。そしたら、先輩はすごく傷ついていて、私も悲しかった。でも、大好きな人が大変な時に寄り添えたのが、本当に、本当に幸せだったんです」
「……」
「わかってます。先輩がどうして、冒険者になろうとしたのかも―― どうして、レジェンド級になりたいのかも、みんな知ってます。でも、嫌なんですよ。私は――私の気持ちが――私の大好きな人が――何も知らない野次馬のひとに、貶められるなんて、嫌、なんですよ」
ナターシャは基本的に優しい。優しすぎて、自分のことは簡単に我慢できてしまうほど、優しい。
「だから、先輩とただれた関係だと、思われるのが嫌なんです。私たちは、そんな汚れた関係じゃない。むしろ――」
「ごめん、ナターシャ。お前には、いつも我慢させすぎていたよ。俺のワガママばかり押し付けて、ナターシャには我慢ばかりさせてきた」
ナターシャは少しだけうつむく。俺に涙を見せないためだ。
「違います。先輩の夢は、私の夢でもあるんです。自分の夢を、先輩のワガママなんて思うわけ、ないじゃないですか?」
「ありがとう、ナターシャ。本当にいい女だよ、おまえは」
「やっと、気がついたんですか? 私は、先輩にもったいないくらい、イイ女ですよ?」
俺たちは少しだけ抱き合った。
その様子をアイラがこっそり見ていたことを知ったのは、それからすぐのことだった――
明日はお休みなので、今日は少しだけ夜更かしして更新する予定です(^^)/




