天津神と国津神(1)
神様達の勢力図と中司本家の思惑。中司優介と相馬優子。それぞれが、絡みあってきます。優介は、どう動くのか?
中司本家から戻り、2日が過ぎた。
中司優介と相馬優子の2人は、優介の事務所兼自宅に居る。
この2日間、優介は、調べ、悩んでいた。
白澤から力を借りる様に言われた神が、武甕槌神である事に起因している。
日本の神の勢力は、2つの勢力から成っている。
いわゆる 天孫族と出雲族である。
天孫族は、天照大神を主とする天津神。
出雲族は、大国主命を主とする国津神である。
問題は、この勢力派閥にあった。
本家は、天孫族、出雲族の両方から中立で、そのどちら側からも知恵、知識、力を借りる事を要請出来る立場である。実際、本家は、双方に平等に接している。しかし、本家はともかく優介自身が、仲良くしているのは、国津神であって天津神とは、殆ど交流をした事が無かった。
今回、本社から依頼されたと言う事は、すなわち、国津神が中心となって行うと言う事に他ならない。
ましてや相手は、玉藻前の孫である玉賽破である。
そんな強大な敵と一戦交えるのにわざわざ優介に振る理由は、そこしかない。
交友関係を知り、本家の意図を汲み取れる人間、本家から見て中司優介以外に対応しきれる者は、いなかったのである。
武甕槌神は、確かに強大な武神である。
しかし、属しているのは、天津神の方であり、しかも、【国譲り】の事件の際に天津神側から見ると英雄であり、一番の貢献者である。【国譲り】の事件は、天津神と国津神の武力抗争のなれの果てで、抗争終局の最終形でもあった。
こんな背景の中、国津神側と仲の良い優介が、折衝に向かうと中司本家の立場にも影響を及ぼしかねないのである。
そんな訳で 中司優介は、悩み、考えている。
「コーヒー、煎れたよ~、難しい顔してたら貧乏神が寄ってくるぞ~」
優子が、顔の横で掌をこちらにむけて指をにぎにぎと動かしている。
優子は、事件を優介に依頼してからずっとこの部屋で寝泊りしている。帰ったのは、大洗磯前神社に行く前に荷物を少し、取りに行っただけである。
「この向かいのマンション、空きがあるんだよ。優介もこの部屋、事務所だけにして一緒に住もうよ~」と完全に優介の彼女になったつもりでいる。
優介は、考え事をしながらだったので、何も考えず、「うん」と 答えてしまった。
「やった~、そう言うと思ったんだよ~。来週、引っ越し屋さんが来て、うちの実家の荷物はこんじゃうから、そのついでにここの荷物も御願いしちゃったよ~」
「やっほ~、引っ越しだー、引っ越しだー」と飛び跳ねている。
優介は、騒がしさに はっと我に返り、
「えっ、引っ越し?」
「うん、優介に今、了解貰ったし、GO掛けちゃったよ~、もう取り消せないのだ~」
こちらを向いて腕をのばし、軽くげんこつを握り、人差し指を立て、人差し指を左右に振りながら、片目をつぶって仁王立ちしている。
優介は、自分の失態に気づき、また、やられた。この策士め。と背もたれに体を投げ出した。
彼女が言うそのマンションは、オートロックになっており、一階のロビーは、ガラス貼りになっており、コンシェルジュが常駐、応接SETが、4SETならんでいる。部屋の間取りは、10階は5LDK
11階は、6LDKと5LDK12階は、8LDK2部屋の12階建てで屋上には、ドッグランの設備が付いて湯は、地下から汲み上げた天然温泉、すべての部屋が分譲になっている高級マンションだ。
頭金は、今、振り込んだし~、ローンも大丈V、と言いながらスマホを左右に振っている。
この2日、外出したりしてたのは、これをやっていたのか と思い当たり、
完全に手の平で踊らされている。気分を変える為、優介は気分を一新させたくなり、外に出ないかっと言うと、「うん、散歩に行こう」と軽く乗って来た。
優子が優介の二の腕を両手で挟んでいる。俺は、もう慣れ始めたのか諦めたのかと少し、戸惑っていると、優子が、
「まだ、緊張する?」いたずらっ子な目で微笑んでいる。
優子は、そのまま道を渡り、今、話題にしたマンションの前に着くと
「りっぱだね~、ここに住むんだよ~」嬉しそうに笑っている。
その前を通過し、次の筋を曲がって右の緑と赤のストライプに彩られたテントの店を指刺して ここ、一回、入ってみたいんだ~と言いながら返事も聞かず、扉を開けた。
扉のすぐ横のテーブルに着くとメニューを広げ、
「どれにする?」と聞きながら返事も待たず、
「すいません、注文、御願いします」と言っる。
「まだ、決めてないぞ」と優介が言うと、
「大丈夫、任せて」 顔の前でVサインを作る。
「アペリティーヴォは、スプマンテ、アンティパストに生ハムとチーズ盛り合わせ、プリモ・ピアットは、うーんと、このポレンタとこっちのリゾット、コントルノは、要らないからドルチェにフルーツの盛り合わせ、カッフェにエスプレッソで以上、エスプレッソ以外は、各1つづつ、取り皿を2つ、御願いします」と店員に告げた。
優介は、唖然として全くわからない言葉の連続に彼女は、馬鹿なのか、賢いのかと訳が分からなくなっていた。
「あれで解るんだから、此の店、きっと本格的だよ」と中腰になって俺の耳に口を近づけて囁いた。
「俺には、さっぱりわからなかった」と言うと、
「優介は、良いんだよ」嬉しそうにクスクス笑う。
料理が運ばれてきた。
優子が、
「アペリティーヴォ、一般に言う食前酒。スプマンテは、発砲ワイン、スパークリングワインとも言うよね~、か・ん・ぱーーい」と説明しながら言う。
優介は あわててグラスを取り、乾杯とグラスを合わせた。
「アンティパストは、前菜。見てわかるよね、ハムとチーズだよ。このハムでどんな店かわかる人には、解るんだよね~」と言いながらフォークで器用にハムを丸めて突き刺すとフォークの端を親指と人差し指で軽く持って優介に差し出す。フォークを受取り、それを口にはこんで咀嚼すると、
「美味い、スーパーのハムと全然、違う」
優子は、にっこり笑いながら自分の口へとハムを運んで食べ始める。
「うん、美味しいね」と自分のチョイスに満足下にしてる。
二人ともにこにこしながらワインと前菜を平らげると店員が、
「プリモ・ピアットになります」と2つの皿と取り皿を運んで来た。
「プリモ・ピアットは、主菜って事になっているけど、こうやってスープや、ミニサラダも付いてくるのが、日本じゃ主流になりつつあるんだよ」と解説を入れながら取り皿にポレンタとリゾットを混ざらない様に器用に盛り付けして取り皿を一つ優介の前に置いた。
それらも美味かった。トウモロコシのミール状の物に浸かったソーセージもリゾットの味も中々の物だった。皿が、下げられ、最後にコーヒーとフルーツの盛り合わせを堪能しながら手持ち無沙汰にしていると 優子が、
「すいませーん、灰皿頂けますか」と聞いてくれた。
「この席だけが、喫煙なんだよ。店に入った時に表示されてた。気づいた?」
「そうなんだ、全然、見てなかった」
「優介、私の事しか見てないもんねー」と、今度は、ケラケラと笑いだす。
完全におちょくっている。
タバコに火を点けると
「難しい顔して何を考えてたの?」と聞いてくるので
「神達の派閥をね」
「派閥なんかあるんだー、初めて聞いたよ」と座り直して乗り出してきた。
「大きく分けて天孫族、いわゆる天津神と出雲族いわゆる国津神の2大勢力がある。天津神の代表は、天照大神で国津神の代表は大国主命なんだ」と言うと
「この間の神様、うーんと大洗磯前神社の少彦名命だ。どっち?」
「国津神になる」
「なんで悩む訳?」
「俺の懇意にしてるのは、国津神側になるけど、白澤様から聞いたのは、武甕槌神こっちは、天津神になる。」
「ふむふむ」
「本家からも依頼を受けた訳だけど 依頼された理由は、この事件、国津神側で処理せよって事になってる訳だよ」
「そっちもややこしいんだね。ガンバだね。気分転換になった?」
優介の行動を見抜いている
「そ、そうだな、ありがとう。帰るとしますか?」
「初めて御礼を言われた~、やったね~」
「初めてじゃないだろ
「だって、有難うって具体的な御礼初めてじゃん」と言いながらレジに行き、お愛想っと大きな声で店員を呼んだ。




