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 ある日さ、あのオッサンに関する怪しい噂が流れ始めたのよ。

 あのオッサンの金策は非合法で、警察沙汰だって噂でさ、被害届がどうのこうのとか、警察の捜査が行われているって話が、どこからともなく沸いてきたのよ。

 実際、オッサンも狼狽していたのよ。ヤバイ、ヤバイって右往左往していて、追い詰められていた感じだったわねえ。オッサンは、自分が警察に捕まるのは時間の問題って認識があったみたいだったし。

 これも物事が終わったいまだから、アタシも冷静に事態を正視できるんだけどさ、あのオッサンはいろんなことを自覚していたんじゃなかったのかしらねえ?

 いままで自分はだれかの役に立ったこともないし、将来もないし、年齢的にも厳しいし、現状を変えるための能力もない。犯罪をしでかしてまで、不遇な女の子の学費を工面すること。これが、あの男なりの最後の良心だったのかもねえ。最後にはいびつに歪んで、最悪の行為に出ちゃったけどさ。ケイちゃんとか、オッサンとか、その周囲の人間も含めてさ、悲惨な人々の、まさしくバンドよねえ。

 まあ、とにかくさ、破れかぶれになったオッサンは、ケイちゃんへのストーカーが酷くなったのよ。店のパソコンを弄ってケイちゃんの個人情報を盗み見しようとしたり、ケイちゃんのあとをつけ回したりして、お店の人でも対応できないような状態になっちゃったのよ。

 お店としても、オッサンはお得意様だったから、結構大目に見てあげていたんだけどさ、これ以上のトラブルは勘弁願いたかったみたいで、オッサンを入店禁止にしたのよ。

 同時にケイちゃんにも自宅待機を命じたわけ。お店は、体面上は店員を守らないとマズいからね。

 ケイちゃんは必要最低限度の外出しかできなくなったわけ。つまり、あの安アパートに籠もって、ときどき学校へ行くだけ。まあ、お店に言われなくとも、そうしただろうけど。

 こんな風に一応対応はしたんだけどさ、オッサンは引き下がらなかったのよ。だいぶケイちゃんに入れ込んいたし、そのうち警察に逮捕されるという確信があったみたいだし。警察に逮捕される=社会的な死だもの。ホントに死にものぐるいって感じ。

 あのオッサンの様相を見て、アタシも危機感がでてきて、ここまでくると警察に相談したほうがいいって判断したのよ。ケイちゃん家に電話して、警察に行こうって提案したのよ。

 だけどさ、ケイちゃん曰く、警察は無意味、なにもしてくれないってさ。

 まあ、ケイちゃんの言いたかったことは、わからなくもなかったのよ。アタシたちも仕事が仕事だけに、警察のお世話にはなりたくないもの。違う意味でお世話になっちゃうかもしれないもの。

 だからさ、アタシひとりで警察署に相談しにいったのよ。

 そこでなにがあったと思う? アンタたちにも想像付くわよね。だって、あのとき警察が対処してくれれば、殺人にまで発展しなかったんだもの。

 警察は、民事不介入の一言で済ませたのよ。酷いと思わない? 民事不介入ってなによ、民事不介入って。バカのひとつ覚えみたいにミンジフカイニュー、ミンジフカイニュー、ミンジフカイニューしか言わないのよ。

「被害が出るまえに対応してください」って食い下がってお願いしたんだけどさ、ミンジフカイニューミンジフカイニューミンジフカイニューばっかりでさ、おまけに自業自得だと言わんばかりだったわねえ。

 ホント、警察って変な組織よねえ。いざ実際に事件が起きたら、上を下への大騒ぎして、責任からいかにして逃げられるかに腐心しているし。アタシに呼び出しするしさ。

 とにかくさ、警察はなににもしてくれなかったのよ。ケイちゃんの指摘通りってわけ。こうなるって、ケイちゃんは知っていたってわけ。もしかしたら、アタシが相談する前に、ケイちゃんは警察に相談していたのかもねえ。学校のこととか、仕事のこととかをね。

 アタシたちが解決策を講じてるあいだも、オッサンはとまらなかったのよ。むしろ、もっと酷くなってたのよ。店員に因縁を付けたり、ケイちゃんの居場所を探ろうとあちこち徘徊したりしてさ、最後の悪あがきって感じだったわねえ。

 そしてさ、ついにオッサンの金策が判明したのよ。この情報がどこから流れたのかいまでも知らないけどさ、そうよねえ、お店も警察の動向には逐一注意していたから、その方面からリークがあったのかしら?

 あのオッサンの金策ってさ、横領だったのよ。オッサンが以前に勤めていた会社とか職場から、勝手にお金を引き出していたみたいなのよ。小切手や領収書を偽造したり、金庫から直接お金を引き抜いていたみたいなのよ。これって、れっきとした犯罪だったのよ。

 おまけにさ、横領だけとどまらなかったみたいなのよ。オレオレ詐欺とか、振り込め詐欺にまで手を染めていたみたいなのよ。

 これだけじゃないのよ。さらにやっていたのよ。ひったくりとか、強盗までやっていたらしくてさ、殺人以外ぜんぶやったといっても過言じゃないみたいだったの。

 いやさあ、女の子にハマるっていってもさあ、ちょっと度を超しちゃっているわよねえ。これも、愛のなせる技なのかしら?

 これだけ犯罪をやらかしていると、能天気な警察も捜査せざるを得ないようでさ、色々と動いていたってわけ。オッサンの逮捕に向けて、証拠集めなどをしていて、その警察の動きがお店に伝わってきた。いいえ、お店が掴んだってわけ。

 終わりが感じられたわねえ。

 実際、終わりになったのよ。

 お店が閉店になったのよ。

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