表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/98

57

「ですけど、年間百万円以上という金額的に考えて、高校生のアルバイトで支払える学費ではないですよね?」

「公立の通信制だったならば、支払えた可能性がある。公立は事実上無料だ。自分の生活費だけを支払えば済む。家賃や光熱費、食費を限界まで切り詰めればなんとかなったはずだ」

「私立となりますと無理ですよね? 入学するだけで百五十万円を一括納入ですし、その後も請求され続けていたみたいですし」

「まず無理だろうな。高校生のアルバイトで支払える金額ではない」

「支払えなかったら退学になっていたのでしょうか?」

「なっていたかもな」

「私立は卒業率を重視するようですが、退学させたら数字が下がりますよ」

「ヒヒヒヒ。学費を支払えずに退学するのは、自主退学扱いです。自主退学は生徒の卒業率に含めません」

「なるほど」

「泉さんが学校に通い続けていたということは、学費を支払っていたという事実でもある。実際、今年分の授業料を三月末期にに一括納入していた。三波学園と沖縄サンフラワー高等学校の二校分の学費である百万円近い金額を振り込んでいた形跡があった。時系列的に考えると、事件に遭う直前だ」

「百万円くらいあれば、自分の身の安全は確保できたと思えてきますよ。どんな事件やトラブルがあったかは知りませんけど、遠くに逃げられたはずです。泉さんはそこまで支払ってまで、高校の卒業証書が欲しかったのでしょうか?」と私は疑問を口にした。

「欲しかったのだ。中卒だとアルバイトすら困難な時代だ。お前もアルバイトの求人情報を見たことがあるだろう。最低でも高校卒業以上と書かれているだろう」

「たしかに、書かれていますね」

「相手の立場になって物事を考えろと言われるが、その相手がどれだけ苦しいかは、その当人しか理解し得ないものだ。どんな人間であれ、他人とまったく同じ人生を歩むことは不可能だ。似たような人生はあるかもしれんが、あくまでも似たような人生であって、同一ではない。相手の気持ちを知るためには、最終的には自分の想像力を働かせるしかないのだ。自分が高校を中退したと仮定してくれ。どうする?」

「高校を中退して終わりにはしません。定時制でも、通信制でも、とにかく高校を卒業をして、大学へ行きます」

「そうなるはずだ」

「そういえば」と私はひらめいた。「高卒認定がありましたよね? 高卒認定に受かって、大学へ行きます」

「高卒認定といった手段もあるな。泉さんのような一年遅れや、二年遅れのケースの場合は非常に有効かつ、リスクが高い手段でもある」

「リスクが高い?」

「高卒認定は、高校の卒業とは違うものだ。高等学校卒業者と同等以上の学力がある者として認定でしかない。高校の卒業が必要条件となっている大学や専門学校、資格試験等にも使える。だが、なんだかんだで高卒とは違うものだ」

「高校卒業と同程度の認定ですよ」

「場合によっては、高校の卒業と認めてくれるかも知れん。だが、認めてくれない可能性もあるのだ。進学しない限り、中卒と思われてしまう場合もあるのだ」

「進学が前提ですか」

「そうだ。ここでリスクがある。大学を中退する可能性がある。大学に受からない可能性もある。そもそも、高卒認定に受からない可能性もある」

「便利そうですけど、ハイリスクなのですね」

「ハイリスクなのだ。なので、確実に高校を卒業するために、通信制や定時制などが選ばれるわけだ。とくに、高卒を売っているような私立通信制高校がな。ちなみに、私立通信制高校は高卒認定という手段を推奨しないはずだ」

「なぜですか?」

「儲からないからだ」

「ビジネスですね」

「そう、ビジネスだ。泉さんは莫大な学費を払ったかいはあって、単位は取れていた」

「あのような実態が認められるのですか?」

「少なからず、行政側が本格的に審査を行えば、あのような授業は高校の授業とは認められないはずだ。教員免許も怪しいし、授業内容も怪しい。授業無効だろうな」

「しかし、行政が本格的に調査したりはしないのですね。メンツ、メンツと」

「その通り。メンツ、メンツ。高卒ビジネスを野放し。数字が大事」

「泉さんは、具体的にどのような金策を取っていたのでしょうか?」

「俺もわからん。非常に申し訳ないのだが、俺の調査はここまでなのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ