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三波学園のホームページに書かれていた学費は、一校分の学費だけで、合計約五十万円としか書かれていなかった。
沖縄サンフラワー高等学校の学費は含まれていなかったのだ。
「泉さんは、先生が指摘した「入学直前になって、サポート校と通信制高校の関係を伝えられ、急に二校分の高額な学費が必要と言われて困ってます」という事態に陥ったのですね」
「そうだ。現実には入学するだけで一括して百五十万円という、三倍にまで学費が膨れあがっていたのだ。その後、さらにナントカ費などを、追加で請求されていたのだ」
「泉さんは支払いを拒否しなかったのでしょうか?」
「ヒヒヒヒ」と先生はニヤニヤ顔になった。「アンタ、ここ、サインしたでしょ。ヒヒヒヒ。自分の意志でサインしたでしょ。ヒヒヒヒ。支払ってもらわなきゃ困りますねえ。ヒヒヒヒ」
「支払いません」と私はキッパリと言い切った。
「では、法的措置を執らせていただきます。学費だけではなく、違約金や裁判費用なども請求させていただきます。契約違反には、断固たる措置を執ります」
「こ、困りますよ」
「期限である○月○日までに、学費を納付するように。と、こんな出来事があったのだろう」先生は口調を緩めた。「泉さんは学費を渋々支払ったのだ」
「いくら契約といっても、契約そのものが無効ではないでしょうか? 宣伝と実態が違いすぎますから、むしろ相手のほうが契約違反ではないでしょうか? 学校業務の丸投げや、教員免許状の不正発行を行っていますし。そもそも三波学園では高校卒業できないのに、高校卒業と堂々と宣伝していたから詐欺ですよ」
「契約そのものが無効であっただろうな。契約といっても、あくまでも現行法の範疇でしか作れない。法律に引っかかっている部分がある」
「契約が無効と言います」
「ヒヒヒヒ」
「私は支払いません」
「ヒヒヒヒ」
「学費の返還を要求します」
「ヒヒヒヒ」
「学費を返してください」
「え? 違法? 知らんがな」
「訴えますよ」
「勝手にしてください」
「先生、これじゃ、埒があきませんよ」
「そうだな。どうすればいいと思う? 自分で考えてくれ」
黙考した。いくつかの手段を思いついた。
「まずは家族に相談します。と、普通はこうなりますけど、泉さんは独り身でしたね。泉家とは絶縁関係でしたね。頼れる親族などいませんね」
「そう、彼女は独り身だ。独りでいるときのほうが強くなれる人間もいるが、そういう人間は自分以外のすべてが敵であると認めた人間だけだ」
「警察に相談します。詐欺事件ですからね」
「民事不介入です」と先生は警官の口調を真似た。
「これは明らかに詐欺ですよ」
「民事不介入です」
「教員免許状の不正発行は、れっきとした犯罪です」
「民事不介入です」
「民事ではなく刑事事件です」
「民事不介入です」
「そんな対応ありえないですよ」
と、ここで私は、捜査の最初である、村田警察署でのやり取りを思い出した。対応してくれた刑事は「我々が普段から仕事をしていれば、事件は未然に防げていたのだ」と悔やんでいた。これは、泉ケイが警察へ相談していたことを意味するのではないだろうか? 警察に相談したが対応してもらえなかったという過去があったのではないか?
「先生、私は、事件を管轄する警察署で話を伺いました。そうですね。泉さんは警察に民事不介入と言われ、対応してもらえなかったのかも知れませんね」
「警察が駄目となれば、次はどうすればいい?」




