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「次に選んだのが私立通信制高校というわけですね」
「そうだ。公立ではなく、私立を選んだのだ」
「なぜ彼女は、沖縄サンフラワー高等学校を選んだのでしょうか?」
「それは俺にもわからん。泉さんが死んでしまったいまとなっては、永遠にわからないだろうな」
「迷宮入りですね」
「だが、ある程度予想はできる」
「予想?」
「ここからの話は推測の域を出ないと、あらかじめ言っておこう。それでも、おそらく、大略は合っているはずだ。細かい部分は事実とは違うかもしれんが」
「はい」
「泉さんは、最初から沖縄サンフラワー高等学校を選んだわけではないと思われる」
「高校を選ばなかったのですか?」
「選ばなかったというかは、間違えたと言ったほうが正解だ。彼女が最初に選んだのは、サポート校である三波学園高等部だ。私立通信制高校やサポート校は大量にあるが、なぜ泉さんが三波学園高等部を選んだかに関しては不明だ。インターネットで調べたか、チラシなどを見たのかはわからない。いずれにしても、彼女は三波学園高等部を正式な高校と勘違いしてしまったのだ」
「なんの知識もない人からすれば、三波学園高等部を正式な高校と勘違いしてもおかしくはありませんね。三波学園高等部という校名は紛らわしいですし、ホームページにも堂々と高校卒業とか書かれていますし、灰谷さんも「ここで高校が卒業できる」と堂々といいましたし」
「彼女は三波学園へ入学するまえに、見学をしていた可能性がある。公立のずさんさを身を以て知っていたはずだ。私立もずさんかもしれないと予想しても変ではない」
「志望先の学校は見学しますね」ここで私は、三波学園の宣伝を思い出した。「三波学園の人も宣伝熱心で、「見学にきてほしいと毎日電話がかかってくる」と古田さんも言っていました」
「このような経緯で、泉さんは三波学園高等部笠原校へ足を運んだのだ。当初は、あくまでも見学の予定でな。入学する意思を持たずにな。そこで、事件が起きたわけだ。あそこでなにがあったかは、あそこでなにが起きたかは、お前も知っているはずだ。直接見学して、直接宣伝を聞いたはずだ」
先生の言うとおり、私は直接見たのだ。あの異常な宣伝を、あの嘘で塗り固められた美辞麗句を。
泉ケイも、あの宣伝攻勢に見舞われたのだ。
「泉さんは、あの宣伝を信じたのでしょうか? あの宣伝はあまりにも飾りすぎていて、だれが聞いても胡散臭いと思いますよ。先生が教えてくれた宣伝トリックを知らなくても、なんらかの嘘が混じっていると感づきますよ」
「それが、なかなか気づけないのだ。窮地に陥ったり、苦境に立たされた人は判断力が鈍り、突発的な行動に出やすいのだ」
私の脳裏に、泉ケイを殴り飛ばしたことが浮かんだが、即座に無視した。私は即座に無視したのだ、自分の意思とは無関係に。これも突発的なのだろうか?
「でも先生、その場で決めてしまうなんて」と私は言いかけたが、あの灰谷という男の行動を思い出した。あの男は、勝手に入学願書を埋めたくらいだ。あそこではなにがなんでもありなのだ。「あり得るかもしれませんね」
「宣伝ばかりだけでは終わらなかったはずだ。不安を煽るような言い方もしただろう?」
たしかに、あの男は中卒や、ニートといった単語を持ち出して不安を煽っていた。
「先生の言うとおりでした。不安を煽っていました」
「そんな宣伝をして、断りづらい雰囲気を作っていたはずだ」
「断りづらい雰囲気がありました。断りづらかったです。断ったら危険がありそうなくらいでした。そうです、古田さんは危険な目に遭ってしまいました」本当は、遭ってしまったではなく、遭わせてしまったと言うべきだったが。
「これらの宣伝、煽り、ムードに流されて、泉さんは入学を決めてしまったのだ」
「ですけど、学費がネックになりそうですよ。沖縄サンフラワー高等学校と三波学園高等部の学費は、入学するだけで一括して百五十万円もかかりますよ。泉さんは、支払いに追われるような選択を、みずから選んだのですか? そもそもですよ、彼女は三波学園高等部の学費を見学前に調べていたと思いますよ。ホームページやパンフレットを見れば、学費が書いてあると思います。自分で学費を支払えないような学校なんて選びませんよ」
「泉さんが見学前に学費を調べていたのは事実だろう。ここで重要な事実が見落とされているのだ」
「重要な事実?」
「ホームページをよく見て欲しい」
私はスマホで三波学園のホームページを見た。観た。
先生の言った重要な事実に気づけた。




