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「通信制高校ですから。自宅での学習がメインですよね? 自宅でレポートを仕上げると聞いたことがあります。授業のレベルが高くないことは想像できますけど」
私の質問には答えなかったかわりに、先生はバッグのなかからなにかを取り出そうとした。
「実は、そのレポートを入手済みなのだ」
「手際がいいですね。どうやって入手したのですか?」
「ゴミ捨て場を調査したのだ」
「ゴミ捨て場を調査?」
「そうだ。三波学園は全国に展開している。ほとんどが雑居ビルのワンフロアを間借りしているだけだがな。そのうちの複数を調査したのだ。雑居ビルから捨てられた山と積まれたゴミ袋をひとつひとつ開いて、目当てのレポートや書類などを調査した。さすがにすべての校のゴミ捨て場を調査するのは無理だったがな。そのかいがあって、重要な証拠を入手できた」
「もしかして、その上下赤ジャージ姿でゴミ捨て場を漁った、じゃない、調査したのですか?」
「そうだ」
「怪しまれなかったのですか?」
「怪しまれたぞ。警察官に職務質問されたくらいだ」
「大変でしたね」
「大変だったぞ。警察の職務質問に対して、俺は正直に受け答えしたんだ。私は芝武彦。職業は高校教師。既婚で、子供がふたりいる。いま、私が受け持っている教え子の中学時代の同級生が殺人事件に遭って、教え子の心痛の種になっているため、解決のために調査を依頼されて行動しているのだが、なかなか難儀な事件のようで、事件に遭った同級生の家庭は経済的には裕福だが、極めて複雑な家庭環境らしく、なんでも事件に遭った同級生はその家庭の実の子供ではなく、主人の愛人が産み落として捨てていった子供で、家庭内では不遇な立場に置かれ続け、中学時代にイジメに遭って不登校になって、家庭はこれ幸いとその同級生を変な民間施設に追いやったのだが、その施設でトラブルが発生して、解決はしたものの、紆余曲折の結果、その同級生とその家庭は絶縁になったのだが、ひとり暮しをすることになったその同級生は最低でも高校くらいは卒業しようと思っていたようで一年遅れで私立通信制高校に入学したのだが、その通信制高校でもトラブルが発生していたようで、不祥事を起こした前科がある掛布グループが名称を変更した長尾グループが運営している、沖縄サンフラワー高等学校という高校なのだが、どうやら同グループが運営している掛布予備校が前身である民間教育施設の三波学園高等部とやらに学校業務を丸投げしているらしく、校舎が雑居ビルのワンフロアであったり、不正に発行してもらった教員免許で不正に教員になった人物が教員をやっているなど、不適切な実態が散見され、その実態調査のため、証拠となりそうなレポートや書類を見つけようと思って、三波学園が借りている複数の雑居ビルのゴミ捨て場のゴミ袋を調べ回っており、いままで複数のゴミ捨て場を調べてきたし、いまもその真っ最中であり、これからも複数の雑居ビルのゴミ捨て場を回ってゴミ袋を開封して調査するつもりであって、社会正義かつ教え子のことを思っての行動であって、私は決して怪しい行動をしているわけではないし、私は決して怪しい人物ではないと答えたのだが、警察官はなかなか信じてくれなくて、署で話をする事態に陥ったぞ」
先生は、紙――クシャクシャになったのを無理に平らに戻したうえに、ところどころ汚れている――の束を、私――いささか返答に困っている――に手渡した。
受け取った紙の束を調べてみた。そのレポートは、私の想像以下の内容だった。
「先生、これがレポートなんですよね?」
「そうだ」
「でもこのレポートは、問題集からのコピーですよ」
「コピーだな。本来ならば、学校が自前で制作すべきなのだがな」
「しかも、内容も中学生レベルですよ」私はレポートを精査した。レポートの隅には、私の意見の正しさの証明があった。「って、本当に中学一年生と書いてありますよ」
「授業レベルの低さもある。だが、それ以上に重要な部分がある。あちこちで拾い集めたレポートのすべてを見ると、ある事実が判明する」
「この分量はすぐには読めませんよ」
「すでに俺が読んでおいた」
「どんな事実ですか?」
「レポートの統一性が皆無なのだ。笠原校や、○○校、××校などで出されたレポートは、すべて内容が違っている。つまり、校ごとに独自に学校業務を行っていて、校ごとで学校業務が完結してしまっているのだ。本来ならば、沖縄サンフラワー高等学校しか行うことが出来ない学校業務を、協力校である三波学園が行ってしまっているのだ」
「違法ですよね」
「うむ。レポートを廃棄している点にも注目してくれ。レポートの添削指導なども三波学園が行っており、協力校内で学校業務が完結してしまっている証拠だ。沖縄サンフラワー高等学校に活動の実態がない証拠でもある」
「完全に丸投げですね」
「授業内容も酷い内容だ。さきほどお前が指摘したとおり、中学生の問題集のコピーをレポートとしている」
「そのレポートを自宅で行うのですよね?」
「いいや」と先生は否定した。
「違うのですか?」
「違う」
「なにが違うのですか? 別のレポートがあるという意味ですか?」
「違うのは、レポートを自宅で行うという部分だ」
「レポートを自宅で行うという部分が違うのですか?」
「そうだ」
「自宅以外で学習するのですか?」
「部分的には正解だ」
「遠回しな言い方ではなく、要点を説明して欲しいのですが」
「では、単刀直入に言おう。沖縄サンフラワー高等学校および、学校業務を丸投げされている三波学園高等部には、自宅で行うレポートなど、一切合切存在しないのだ」




